コロナ禍の「巣ごもり」のために訪れる人が増えた影響か、ホームセンターで見つけた商品のことがSNSなどで話題となることも増えています。中でも痒いところに手が届くようなアイデア商品を次々に生み出しているのが業界大手のカインズ。今回のメルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』で発行人の理央周さんは、カインズの気になるグッズを紹介しつつ、画期的な商品を生み出すための企業を挙げての取り組みに迫っています。
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新しい価値は企業文化で生み出される ~カインズのイノベーションの事例
今週は号外として、「新しい価値は企業文化で生み出される~カインズのイノベーションの事例」をテーマに解説をしていきます。
製品に決め手がない、いつも価格競争になってしまう、という売れない問題はついて回ります。画期的な商品は、そうそう生み出せるものではありません。新しい価値を生み出すためには、何をどうすればいいのかを、カインズの事例から深掘りしていきます。それでは最後まで読んでください。
ここのところ、カインズの便利グッズが、「便利すぎる!」と、SNSやネットニュースなどで話題になっています。先日も、バズフィードというニュースサイトに、「洗濯カゴがトランスフォームする」という記事が載っていました。
見てみると、洗濯物を入れるカゴの下のところに、折り畳んである脚(あし)がついているのです。普段は折りたたんでありますが、洗濯機から洗濯物を出してこのカゴに入れ、いざ干すときに、この足を伸ばすと、そのカゴから洗濯物をとりやすくなる、ちょうどいい高さまで上がるのです。
私も洗濯物を干す時に、いちいち屈まなければならないので、結構面倒だなと思っていたので、ちょうど取りやすい高さになる、エアコンの室外機の上にカゴを乗せて、干していました。これがあると、そういった面倒臭さも解消できます。
もう1つ面白いのが「洗濯物フック」。カゴを物干し竿にかけておくことができるフックなので、これも同じように、腰をかがめなくても洗濯物が干せますし、すぐ横にかけておけば、取る距離も近くなって便利です。
私は気が短くて、なんでも効率的にやりたいタイプなので、このようなちょっとした便利グッズがあると、買いたくなってしまいます。他にも、キッチン関連のアイディアグッズで面白いものが、ライフハッカーというネットニュースで取り上げられていました。
私も料理をやるので、便利そうで「欲しい」と思っているのが「まな板シート」です。この時期になると特に、菌が心配です。生の肉や魚を切るまな板と、それ以外を切るまな板を分けて使いたいのですが、それもいちいち面倒です。そこでこのシートが登場するのですが、サランラップのように、まな板のサイズに使う分だけ切って、まな板の上に乗せて使う、というものです。これは、切るときも他の食材と分けて使えるので便利なのですが、切った食材をそのままフライパンに持っていけるので、意外と便利です。
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もう1つ面白いのが、両面計量スプーンです。1つのスプーンに表面に大さじと、その反対側の裏面に小さじがついている、というものです。1回の料理でどちらも使うことが多いのですが、うちの場合、食べるためのスプーンと、計量スプーンを同じ場所に入れてしまってあるので、そのスプーンやフォークの中から、大さじと小さじをさがしだすのが、意外と大変だったりします。なので、このように1つのスプーンで、大さじ小さじが一体になっていると、探す手間も省けるし、置く場所もすこし削減できます。
こうやって見ていると、面白いものばかりなのですが、考えてみたらゼロからの発明品、というわけではなく、今まであったもの、例えば洗濯カゴとか大さじのスプーンに、やはり今までにある何か、たとえば下につける足とか、小さじをもう1つたして、アイディアグッズにしている、ということです。新製品の多くは、ゼロからの発明ではなく、今まであるものを合体させるとできるものだったりします。これも1つの新結合ですね。
カインズでは、DIYショップの中でも、特にこのようなアイディアグッズや便利な商品が多い、というイメージがありますが、製品開発のために、いろいろな取り組みを行っています。今も、第7回目になるカインズデザイン展を開催しています。これは、メーカー28社とコラボレーションした、限定デザインの商品をメインに、オリジナル商品を、全国のカインズ226店舗と、オンラインショップに販売するイベントです。
報道資料によると、ライオンと組んだ、「ルックバスタブクレンジング」では、ミストを浴そうに吹きかけ、60秒待ってから流すだけ。浴槽をこすらずに洗える新しい方式の洗剤です。パッケージもオリジナルで、音符のマークがあしらわれています。
カインズは、イノベーションハブ、と呼ばれるカフェとワークスペースを表参道に持っていて、ここで新しいアイディアを出したりしています。
よく会社では社長や責任者が、「イノベーションを起こせ!」「新しい発想を出せ」とはっぱをかけることがありますが、担当者は「そうは言われても、どうすればいいのかわからない」となってしまうことが大半です。
新しい事業は、会社として取り組んで、失敗と成功を重ねて初めてうまくいくものですが、カインズは、デザイン展といい、イノベーションハブといい、様々な取り組みを会社として、一丸になってやっています。こうなると、キッチングッズや生活雑貨で、何か買うならカインズだよね、と、お客様から選ばれるようになります。
普段から、このような差別化が上手なカインズのような、企業文化こそが独自性を生み出し、ひいては、価格競争、値引き合戦からの、脱却になるのです。
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image by: Mr.W, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons