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西村大臣はハメられた?異常な「飲食店脅迫」裏に二階・小池の影

酒類の提供停止養成に応じない飲食店に対し、金融機関を通じた「締め付け」を示唆した西村経済再生担当相。批判噴出によりすぐさま撤回されましたが、この発言がさまざまな憶測を呼んでいます。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、次期衆院選を巡り、永田町の水面下において「かなりのレベルの暗闘」が繰り広げられていると推測。その結果として西村大臣は「罠にはめられた」と見ることが一番自然であるとしています。

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どうにも不自然な飲食店脅迫事件

西村康稔経済財政・再生大臣(何とも奇妙な肩書きですが)は7月8日夜の記者会見で、「休業要請に応じない飲食店の情報を金融機関に提供する」という考えを明らかにしました。要するに、政府が飲食業界に対して法的な根拠もなければ、世論の支持もない「脅迫行為」を行なったということです。

つまり、緊急事態宣言下でも、酒類を出すにもかかわらず休業しない店については、銀行から融資ストップなどの圧力を加えて欲しいということのようです。しかしながら、そもそも宣言を無視して酒類を提供する店というのは、ボロ儲けをしようというのではなく、休業したら家賃や人件費などで潰れてしまうので、仕方なしに営業するという店が多いと考えられます。

ということは、銀行としたら「あの店は違反しているから融資を止める」などという行動に出た場合には、最悪の場合にその店は倒産してしまいます。店が倒産したら、融資は回収できないので「事故」つまり銀行としては損失になります。ですから、銀行としては苦境に立っている店について、最後に首を絞めるようなことをしたら、自分の首が締まってしまいます。

いやいや、東京の場合は、大手銀行が多いから大丈夫、そんな発想を西村大臣がしていたとしたら大間違いです。零細な飲食店の場合は、都内でも地銀や第二地銀、信金、信組といった金融機関が取引先です。西村大臣は、要するに彼らに飲食店を追い詰めよと言っているのです。その無謀性、非人道性以前の問題として、経済ということを全く知らない発想として言いようがありません。

これに加えて、西村大臣は酒類を販売する事業者にも要請に応じない飲食店と取引しないよう求めたようです。と言いますか「ようです」などというレベルではなく、ちゃんと酒税徴収の監督官庁である国税庁から「圧力文書」が公式に発せられているのですから驚愕(現時点では取り下げたようですが)です。

こちらも酒屋、酒問屋の苦境を理解しないで、横暴な権力を振りかざしているのですから始末が悪いと言えます。

この2つの「事件」ですが、どうにも不自然です。

とにかく、冷酷なイメージの西村氏にしては余りに稚拙だからです。ですから、「うがった」見方をするのであれば、経産省出身の西村氏を「罠にはめる」ための金融庁系のアクションという説明は可能です。想像を逞しくするのであれば、ポスト菅に向けて、「2F派による小池マジック」戦略というのは、もしかすると清和会潰しであって、具体的には安倍潰しであり、まずは安倍直系の西村大臣が狙われたという可能性があるかもしれません。

もっと言えば、自公の衆院議員の多くは「このままで選挙が戦えない」という理由から、「総選挙は小池で」という計算を始めているかもしれないのです。菅総理は、基本的には自分で解散して続投する構えですが、場合によってはフルの総裁選を9月にやって結果として小池に禅譲するという可能性もあるのではないでしょうか。

一方で、そんな「西村潰しから安倍潰しへ」などという複雑な話ではなく、内閣官房も絡んだ「統治アマチュア」を露呈した壮大なオウンゴールというように、素直に見ておく必要もあるかもしれません。ただ、これも常識的に考えて、かなり無理筋です。いくら「宣言の実効性を担保」できるかどう「かしら?」と小池百合子にチャレンジされたからといって、ここまでの自爆行為に追い詰められるというのは、非常に不自然だからです。

やはり、清和会と2F派の暗闘、10月総選挙への党内の異常な危機感、そしてもしかして菅総理の続投意欲が「枯れてきている可能性」などを勘案すると、水面下における暗闘はかなりのレベルになっており、その結果として西村氏は「罠にはまった」という見方が一番自然であるように思います。

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FAXは高セキュリティというお花畑

河野太郎行政改革担当大臣が6月に、霞が関の全ての省庁に対して、FAX廃止を要請したわけですが、これに対して「できない」との反論が数百件寄せられたそうです。その結果として、政府としてはFAX全廃を事実上断念したと報じられています。

1番の理由は情報漏えいの懸念であるそうで、民事裁判手続き、警察関係、医療関係など機密性の高い情報を扱う省庁でFAXは多用されてきた、これが「全廃は無理」という結論の根拠となっているようです。

これは驚きとしか言いようがありません。

FAXには顕著な脆弱性があるからです。それは暗号が全くかかっていないということです。

FAXを使用していた時代を思い起こしていただくと判るように、FAX送信の際には地上線での通常の電話回線を接続します。接続されると、公衆回線を通じて2台のFAXマシンが繋がります。そうすると、まず電話回線モデムのような「ピーヒョロロ」という音と「ピー音」が交錯します。

この2種類の音を相互のマシンが確認することで、規格と伝送速度が決定されます。そうすると自動でFAX画像が送信されます。ある時代以降の標準的なFAXの場合は、画像送信の際にはスピーカから「ピーヒョロ」は流れないようにされていますが、回線には同じような音声信号が流れています。

この音声信号は高感度な盗聴器であれば、捕捉が可能です。以前は、リアルタイムでその「ピーヒョロロ」を特殊な周波数で送信するタイプの盗聴器が横行しており、周波数帯で網を仕掛けて駆除するということが行われていたのですが、最近はどうなっているかわかったものではありません。

盗聴した音声信号を一旦メモリに入れて、それに暗号をかけ、そのデータを時間差で飛ばすとか、メモリ付きのFAXマシンであれば、そのマシンをハックして、メモリの内容を複製した上で、暗号化したパケットをその回線に乗せて堂々と飛ばすといった仕掛けも理論的には可能です。

悪意と資金があれば、狙った番号のFAXマシンに繋がった公衆回線の電磁波を全て捕捉した上で、そのデータを解析して狙った文書を再現するといった仕掛けも可能です。

とにかく、FAXのピーヒョロロ音というのは、非常に原始的であって「1と0」だけで構成されており、これを盗聴してコピーしてしまえば、文書のイメージは再現可能です。全くもって、危険極まりないということが言えます。

とにかく、2021年の現在、警察にしても病院にしても、最高のセキュリティを確保したいのであれば、仮想のイントラネットを構築して、ハード、ソフト、運用の3方向から徹底した対策を施し、それを常時アップデートするのが最善です。メールはハックされるが、FAXは大丈夫というのは、どこからそういった発想が出てくるのか良くわかりません。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

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image by: 西村康稔 - Home | Facebook

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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