メジャーリーグ4年目を迎えさらなる進化を遂げ、オールスター戦で史上初の投打の二刀流出場を果たし勝利投手となった大谷翔平選手。彼はなぜグラウンドに落ちているゴミを拾うのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、経営コンサルタントの梅本泰則さんがその答えを紹介。さらに大谷選手の「運」の捉え方に学ぶ商売繁盛のヒントをレクチャーしています。
運を引き寄せる
今回は「運」の話です。といっても、強く願えば運が拓けるといったスピリチュアルな話ではありません。
私たちの周りにも運の良い人がいます。彼らはどうして運が良いのでしょうか。そんなことを考えてみました。
大谷マンダラチャート
大谷翔平選手の活躍はスゴイですね。毎日メディアで取り上げられ、大騒ぎです。
その中に、大谷選手の「目標達成シート」を紹介した番組がありました。このシートのことは以前から有名で、「大谷マンダラチャート」とも言われています。これは、目標達成のために具体的に何をしたらいいかということを、自分で考えるためのシートです。大谷選手の母校である花巻東高校の佐々木監督が1年生部員に作らせています。大谷選手も同じように作りました。これが、実に見事な内容です。
マンダラチャートは9×9の81個のマスで出来ています。そして、その中心のマスに「達成したい目標」を書くのです。大谷選手は「ドラ1、8球団」と書きました。プロ野球8球団からドラフト1位指名を受けることを目標としたわけです。
高校1年の大谷選手にとって、かなり難しい目標といえるでしょう。いえ、それなりの自信があったのかもしれません。とはいえ、並大抵のことではこの目標は達成できません。目標達成のためには、何をしたらいいでしょうか。
「ドラ1、8球団」と書いたマスを取り囲む8つのマスに「そのために必要なこと」が書いてあります。「体づくり」「コントロール」「キレ」「スピード160km/h」「変化球」「メンタル」「人間性」「運」です。これが、8つの「大項目」となります。
そして、それぞれの大項目ごとに、8つの「そのために必要なこと」をあげなければなりません。
例えば、「コントロール」であれば、「インステップ改善」「体幹強化」「軸をぶらさない」「リリースポイントの改善」「下肢の強化」「体を開かない」「不安をなくす」「メンタルコントロールをする」とあります。主に、技術的なことです。
「コントロール」以外の7つの大項目にそれぞれ書かれた8つの「必要なこと」読んでいくと、よくも高校1年でこれだけのことが明確に出来たものだと感心します。そして、中でもスゴイと思うのは、目標達成に必要なことに「運」があげられていることです。
「運」とは?
「運」とは何でしょう。辞書によれば、「その人の意思や努力ではどうしようもない巡りあわせ」とあります。
ところが、大谷選手の「運」のとらえ方は、全く違っているといって良いでしょう。彼は、「運」にとって必要なことの要素を、「あいさつ」「ゴミ拾い」「部屋そうじ」「道具を大事に使う」「審判さんへの態度」「本を読む」「応援される人間になる」「プラス思考」としています。
つまり、「運」は努力によって引き寄せることができるものだと考えているのです。「運」は偶然ではなく、必然の産物だと言っています。素晴らしいとは思いませんか。
そして、彼は実際にそのように行動をしているのです。例えば、MLBでの試合が始まる前に、相手チームの日本選手に駆け寄って「あいさつ」をしています。また、グランドに落ちているゴミをポケットに入れる姿は日常です。審判に対する態度もリスペクトに満ちています。
その他の「要素」については、TVや報道からはうかがい知れませんが、きっと「道具を大切に」しているでしょうし、自分の部屋やロッカーは綺麗に「掃除」しているはずです。「本」もいっぱい読んでいることでしょう。
そして、とっくに「応援される人間に」なっています。また、あの笑顔をみれば、「プラス思考」であることは間違いありません。だからこそ、「運」に恵まれてきたのです。決して偶然ではありません。
それでは、ここであなたのお店のことを考えてみましょう。どんなことをすれば、「運」を引き寄せることができるでしょう。
お店と「運」
そこで、大谷選手の「運」を引き寄せるための行動を参考にしてあなたのお店に当てはめて考えてみます。
まず、「ゴミ拾い」からです。あなたのお店では、毎日従業員の皆さんがお店の周りばかりでなく、近くの道路まで掃除をしています。「ゴミ拾い」は合格です。
「部屋の掃除」は、店内や事務所をキレイに掃除することに当てはまるでしょう。この点では、まだまだ不十分なところがありますので、もう少し頑張ってください。
「道具を大切に使う」は、次のように置き換えてみてはいかがでしょう。「商品や陳列什器を大切に扱う」。商品を大切にしているかどうかは、陳列状態を見ればわかります。お店の姿勢を伝えるためにも、整理整頓することです。什器も、いつまでも新品に思えるほど、丁寧に扱いましょう。
そして、「あいさつ」は、お客様や従業員同士だけでなく、お店に来られる方全員にすることです。もちろん、メールや手紙でのあいさつも大切にしましょう。
「審判さんへの態度」とは、「メーカーさんや問屋さんへの態度」に置き換えられます。「お世話になっている」という感謝とリスペクトをおろそかにしてはいけません。
「本を読む」というのは、お店にとっては、セミナーへの積極的参加や従業員研修に当たるでしょう。
また、「応援される人間になる」というのは、「お客様や取引先から応援される店になる」ということです。そのために何をしたら良いか、よく考えましょう。
「プラス思考」も重要です。例えば、コロナ禍にあっても、大変だととらえずにチャンスだととらえ、新しい行動を起こしたり、何かの変革をすることが「プラス思考」です。
いかがでしょうか。これが、お店にとっての「運」を引き寄せる方法だと言えます。こうしてみると、「運」のつかみ方は、日常の基本的な行動にあるようです。決してむつかしいことではありません。そんなことを、大谷選手の目標達成シートは教えてくれています。
■今日のツボ■
- 大谷マンダラチャートの内容は素晴らしい
- 「運」は自ら引き寄せることができる
- そのための方法は、日常の行動の中にある
image by: Erik Drost , CC BY 2.0, via Wikimedia Commons