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台湾人が大谷翔平に熱狂する理由。知られざる日本と台湾「絆の歴史」

投手と打者の二刀流で八面六臂の活躍ぶりを見せ、アメリカ全土を熱狂させている大谷翔平選手ですが、台湾でも大人気となっているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、まさに大谷選手の一挙手一投足に大きく報道する台湾メディアと、台湾の人々の反応を紹介。さらに台湾野球の発展に大きく貢献したとある日本人の功績を記すとともに、「台湾野球は日本野球の弟であり、日本野球の至宝である大谷選手は台湾にとっても至宝」と結んでいます。

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※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年7月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

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【日台】日本の至宝・大谷翔平はなぜ台湾の至宝でもあるのか

MLB明星賽》大谷翔平二刀流奪勝投史上第一 美聯退國聯摘8連勝(大谷翔平の二刀流での勝利は史上初。アメリカンリーグがナショナルリーグを退け8連勝)

7月14日はアメリカでオールスター・ゲームが開催され、史上初、投打の二刀流で出場した大谷翔平選手が勝利投手となりました。日本では連日、大谷翔平選手の活躍が報じられていますが、野球人気が高い台湾では、日本のプロ野球がケーブルテレビで見られることもあって、以前から大谷選手の存在を知る人も多く、日本同様に大谷フィーバーが起こっています。「自由時報」では、オールスターの様子を写真と映像で詳細に報じていますが、そこでも、注目選手として大きく取り上げられたのは大谷選手でした。

このメルマガでも3年ほど前に、アメリカでの大谷翔平フィーバーと、日本のみならず台湾、韓国での熱狂ぶりを報じましたが、さらにそこから歴史に名を残すほどの選手になったことは、非常に喜ばしいことです。

黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」バックナンバーリスト 2018年04月

以前のメルマガでは、大谷選手の所属するエンジェルスの本拠地ロスアンゼルスについて、韓国ロビーによって慰安婦像が建てられ、日本人子弟への偏見やいじめが報告されているなかで、大谷選手の活躍は、現地の日本人に非常に大きな勇気を与え、誤った日本人像を正す機会にもなるだろうと論じました。

昨年から武漢発コロナウイルスが大流行して死者が多発したアメリカでは、アジア人襲撃事件が頻発しました。そんななか、大谷選手の偉業は、アジア人の名誉を回復し、偏見を打ち砕くことにも大いに役立っていると思います。そういう意味では、アジア人の救世主だとも言えるのではないでしょうか。

大リーグのインデアンスには、張育成という台湾人選手がいます。5月にエンジェルスと対戦した際、一塁手の張選手が、出塁した大谷選手から「陽岱鋼選手を知っていますか?」と、日本で一緒にプレーした台湾人選手の名前を挙げて声をかけられ、2人で談笑したというエピソードが、台湾で大きな話題となりました。

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7月5日は大谷選手の誕生日だそうですが、この日、大谷選手を打ち取った相手チームの選手が、「誕生日おめでとう、クソ野郎!」と罵ったというニュースが流れましたが、これに対してなぜか日本よりも台湾で炎上し、批判的な声が次々と上がったということが、わざわざ報じられるほどでした。それほど台湾では大谷選手の好感度が高いのです。

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加えて、台湾は新型コロナの感染拡大で、野球の東京五輪最終予選への出場を断念しました。五輪の野球に台湾チームは不参加となったことで、より日本野球への関心が高まったともいえるかもしれません。

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中国語で野球は「棒球」といいますが、台湾では日本語での「野球」という言葉が流通しています。1969年から1980年までに、台湾のリトルリーグは9回も世界チャンピオンに輝いたこともあります。1989年にプロ野球が発足し、1990年からリーグ戦が始まりました。少年野球のほうは肩を壊す選手が出たことから批判が高まり、その一方で、次第にプロの人気が高まっていきました。

台湾に野球を根付かせたのは、言うまでもなく日本です。1895年、日清戦争の勝利で台湾が日本の領土となったことで、野球が日本から持ち込まれました。

1906年には、台湾総督府国語学校中学校が、台湾ではじめての野球チームを組織されます。1923年には先住民のアミ族による「能高団」が結成され、また、同年に全国中等学校優勝野球大会の台湾地区予選が開催されるようになりました。同年、甲子園に出場したのは台北一中。その後、台北商業学校、台北工業学校と、台北の学校が甲子園の常連となりました。とはいえ、これらのチームは日本人のみで構成されており、台湾人は含まれていませんでした。

そこに風穴をあけたのが、嘉義農林学校でした。日本人、台湾人、高砂族の3つの民族で構成された同校は、台湾でライバル校を次々と撃破、1931年、ついに甲子園初出場を果たします。甲子園でも快進撃は止まらず、順調に勝ち進み、ついに初出場にして決勝戦までたどりつきます。決勝では惜しくも敗れたものの、準優勝という栄冠を手にしたのでした。その実話を映像化したのが『KANO 1931海の向こうの甲子園』という映画であり、永瀬正敏氏や大沢たかお氏などの日本人俳優も出演、台湾で大ヒットしました。

学生を率いたのは、愛媛の松山商業を初の全国出場に導いた経歴のある近藤兵太郎。嘉義農林学校の野球部は野球経験のない教師が監督を務めており、試合で大敗したことで、部員たちがどうしたら強くなれるかを話し合い、嘉義商工学校に赴任していた近藤に監督をお願いしようということになったのです。そして校長が近藤に直談判、近藤は放課後にコーチをすることを引き受けました。

近藤は日本人のみならず、台湾人や先住民族の混成チームをつくります。当時、日本人以外の民族がいるチームは見下されていましたが、近藤は気にせず、身体能力に優れた選手をチームに入れていきます。そして、近藤の熱血指導で嘉義農林学校の野球部は強豪チームへと変貌。そして甲子園出場、準優勝にまで導いたのです。

映画『KANO』には、最初、嘉義農林学校を「蛮族」のいるチームとしてバカにしていた日本人新聞記者が、決勝に進む頃にはすっかり嘉義農林の大ファンになっていた様子が描かれています。実際、当時の「嘉農」フィーバーはすごかったようです。そして、嘉義農林学校の活躍は、台湾人に大きな勇気と自信を与えたのです。どこか、アメリカ人を熱狂させる大谷選手に重なるところがあります。

この嘉義農林のチームからは、その後、日本のプロ野球へ進んだ者や、台湾野球界のために尽力した者など、多士済々が輩出されています。とくに呉昌征という選手は、巨人や阪神、毎日オリオンズでプレーしましたが、首位打者に輝く一方、投手として戦後初のノーヒットノーランを達成するなど、大谷選手と同様の二刀流で大活躍しました。日本と台湾の両方で野球殿堂入りしており、これは王貞治に次ぐ2人目だそうです。

こうした野球の歴史は、日台の絆の歴史でもあります。台湾人が大谷翔平選手に熱狂するのも、日台野球の絆があるからです。台湾野球は日本野球の弟であり、日本野球の至宝である大谷選手は、台湾にとっても至宝なのです。

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image by: Moto “Club4AG” Miwa from USA , CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

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