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なぜ、「スタジオアリス」の経営方法をコンサルが参考にするのか?

経営の基本である「経営計画」ですが、そもそも立てていないという企業も多く存在しているようです。無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』を発行し続けてきた経営コンサルタントの梅本泰則さんは、自身が講師として招かれた研修で多くの人たちが苦手だった「事業ドメイン」の設定方法について、「スタジオアリス」の例をあげて詳しく分析・解説し、経営計画のコツを伝授しています。

スタジオアリスの経営計画

業界が違っても、経営の根本は変わりません。ですから、他業界の事例は参考になります。特に、経営計画は基本中の基本です。

とはいえ、経営計画を立てていない企業も多いでしょう。計画を立てるツボが分からないからかも。

今回は、他業界の事例を引っ張ってきました。

事業ドメインの設定

経営計画書作成の研修講師をしてきました。10時から16時までです。その中で、参加者の皆さんに、ある会社の経営計画書を作るというワークをしていただきました。配られた用紙にそれぞれ、

・理念
・経営目標
・外部環境分析
・自社内部分析
・事業ドメイン
・商品戦略
・価格戦略
・流通戦略
・プロモーション戦略
・計数計画

を書き込んでいかなくてはなりません。もちろん、「ある会社」についての情報は別紙で配られています。とはいえ、限られた時間で仕上げるのは難しい作業です。

中でも、「事業ドメイン」を設定するのが、大変な様子。なかなか、うまく表現できません。何度もお伝えしていますように、ドメインは、

・誰をターゲットにするか
・そのターゲットに何を提供するか
・そして、どうやって提供するか

という3つの要素から成り立っています。また、「誰を」は出来るだけ具体的にすること、「何を」は、具体的な商品やサービスではなく、「顧客ニーズ」のこと、「どうやって」は、マーケティング手法のことです。

そのドメインを見事に決めて事業を成功させた事例が、日経ビジネス2021年10月11日号に紹介されています。それは、「スタジオアリス」という写真館です。

スタジオアリスのドメイン

スタジオアリスは、現在全国に475店舗を展開しています。2020年の売上は3,635億円(前年比-6.5%)で、経常利益は前年比1.5倍です。写真館としては、ナンバーワンの位置にあります。

では、写真業界の数字はどうなっているでしょう。東京商工リサーチによれば、写真業界410社の売上は、

・2017年:2,004億円
・2018年:1,907億円
・2019年:1,820億円

と、年々減少していっています。デジタルカメラやスマートフォンの普及の影響ですね。単純に考えたら、写真を現像する人が減っているのですから、業界の売上は落ちるでしょう。そうした状況の中で、スタジオアリスは検討しています。

さきほどスタジオアリスは「ドメインを決めた」ことがポイントだと言いました。日経ビジネスの記事から、その「ドメイン」が推測できます。

それは、「誰に」は、「小さい子供を持った、生活に余裕のある親」、「何を」は、「自分の子供に対する愛情を表すニーズ」です。「どうやって」は、いくつもあります。

・写真撮影の経験が少ない社員に撮影をさせる
・何十枚もの写真を撮って、1枚を選んでもらう
・1人の社員が、撮影、着付、ヘアセット、メークまでする
・カメラマンは子供の笑顔を引き出すことに集中する

といったことです。要するに「経験がないスタッフでも顧客に喜んでもらう方法を効率よく提供する」ということになります。

今ではこうした手法の写真館は、多くあるようです。しかし、スタジオアリスはこの手法を1992年に始めました。先駆者の方法の表面を真似は出来ても、長年積みあがったノウハウを真似することは難しいです。

そして、スタジオアリスは、ドメインだけでなく経営計画書に必要なことをいくつも決めています。

理念、ビジョン、目標、目的

まずは、「理念」です。今回の日経ビジネスで、スタジオアリスの経営者は、「会社の理念と社員が働く目的のベクトルを合わせる努力をしてきた」とあります。素晴らしい経営者ですね。経営者と従業員の方向性が合っていれば、経営はうまく行きます。

そして、ビジョンです。経営者は「日本一の写真館チェーンなる」ことを当初からの目標にしています。シンプルで分かりやすいビジョンです。

さらに、店のコンセプトも明確にしています。「お子様とご家族の記念を気軽に便利に撮影する写真館」です。考えに考えて、練りに練って考えたものでしょう。

加えて、社員には「何のために働くか」ということを考えてもらっていると言います。これも素晴らしいことです。「社会のため」にしろ、「家族のため」にしろ、「自分のため」にしろ、それぞれの社員が働く目的を考えさせる会社はそう多くはありません。

その上、スタジオアリスの計画は「ことがら」だけの計画ではありません。社員全員と数字を共有しています。アルバイトも含めて、月次決算を公開しているのです。

いかがでしょうか。このような事を行っている会社が成長するのは当たり前だと言えます。少なくとも、「事業ドメイン」をしっかりと決めておくことが大切です。今すぐ、あなたの経営計画書をめくってみましょう。

■今日のツボ■

・事業ドメインは「誰に、何を、どうやって」提供するかということ
・スタジオアリスの成功は、ドメインを決めたことにある
・理念、ビジョン、目標、目的も、事業成功の要因である

image by: Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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