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一大疑獄事件に発展か。自民党が繰り返す「ネット工作」の汚いやり口

先日掲載の「『Dappi』だけじゃない。ネトサポやカルト信者を使った自民党『野党攻撃』、総選挙前にも加速か? 中国の五毛党と変わらぬ日本の惨状」でもお伝えしたとおり、自民党と深い関わりのある法人が運営する可能性が指摘された、与党を擁護し野党への誹謗中傷を繰り返す「Dappi」なるツイッターアカウント。「しんぶん赤旗日曜版10/24号」の大スクープ「自民党本部事務総長の親戚名乗る 嘘情報で野党攻撃のツイート 『Dappi』運営企業の社長」により、もはや言い逃れができないところにまで追い詰められ始めている政権与党ですが、このような案件は今に始まったことではないようです。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自民党や内閣周辺で行われていたと思しき「ネット工作」の事例を提示。さらに与党が抱える公式ボランティア団体「自民党ネットサポーターズクラブ」の存在を挙げ、自民党によるネット支配の実態を白日の下に晒しています。

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自民党、恐るべきネット支配の実態

ツイッターやブログなどに投稿しているネット右翼、すなわちネトウヨと呼ばれる方々の一部は、自民党や官邸に雇われているのではないか。そんな疑念を抱いている人もいるだろう。

ネット上には、いたずらに敵対的で可燃性の強い意見があふれているが、その割にネトウヨの実数は少ないといわれる。だが、少ない人数でも、個々人が多くのアカウントを持って、投稿回数を増やせば、それらが拡散され、寄り集まって多数意見のように見えることもある。

たとえば、仕事として投稿にかかりっきりになる組織なり個人なりを、大政党が金にあかして大量にかかえることで、世論を操作する力さえ持ちうるかもしれない。

そんな文脈で、このところ名前が挙がっているのが「Dappi」というツイッターのアカウントだ。

Dappi氏によるウソのツイートで名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉の両参院議員が10月13日、東京都内のウェブ関連会社を相手取る訴訟を東京地裁に提起し、同じ日、同党の森ゆうこ議員が参議院本会議で、この件を取り上げた。

両議員が問題にしているのは、このアカウントで2020年10月25日に投稿されたツイートだという。

「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊(つ)るしあげた翌日に自殺」というような内容だったようだ。

むろん、公文書改ざんを命じられ自殺した近畿財務局の赤木俊夫さんのことだが、杉尾氏、小西氏は赤木さんに面会した事実はない。

つまりDappi氏は、赤木さんの自殺は、当時の佐川理財局長が安倍首相夫妻に忖度して決裁文書の改ざんを命じたこととは無関係で、野党議員に追及されたのが原因だというデマをでっち上げたわけである。

当然、杉尾氏、小西氏は怒りがおさまらない。Dappi氏の正体を突き止める作業に取りかかった。まずは、ツイッター社に対し、投稿に使われたネット回線のプロバイダーを開示するよう求める仮処分を昨年12月に東京地裁に申し立てた。

次に、その結果判明したプロバイダー「NTTコミュニケーションズ」に発信者情報を開示するよう求めて東京地裁に提訴し、地裁は今年9月、開示を命じる判決を下した。

回線の契約者は東京・世田谷区のウェブコンサルティング会社だった。従業員は15人で、取引先は自民党、大手出版社など。自民党東京都支部連合会や小渕優子・元経産相の資金管理団体からホームページ制作などを請け負った実績もある。杉尾氏、小西氏は10月6日、この会社に計880万円の支払いを求める訴訟を起こしている。

「Dappi」は、2019年6月に投稿を始めた。DHCテレビ「虎ノ門ニュース」などの動画を流して野党批判を繰り返し、官邸や自民党には飽くことなく賛辞を送ってきた。投稿はもっぱら平日のオフィスアワーで、土日にはほとんどないことから、個人ではなく企業がからんでいるという見方がかねてよりあった。

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もし官邸なり自民党なりが、政治資金を投入してこの会社に投稿業務を請け負わせ、意図的に歪めた情報で世論操作をしようとしているとすれば、由々しきことである。

自民党だったら自民党の名を出して、オープンに野党を批判するのなら、民間業者を使っても、さほど問題はないだろう。だが、Dappiの場合、野党議員による国会質疑の趣旨を意図的に捻じ曲げるケースがあまりにも多く、ステルス性が高い。

こういう類の問題が起きると、内閣情報調査室(内調)の関与を疑いたくなるのが世の常だ。実際に、一般市民が、Dappiに関する文書の有無の確認と開示を内調に請求し、拒否されている。

内調は、公安警察、公安調査庁などと並ぶ情報機関だが、ありていに言えば、官邸のスパイ組織だ。情報操作、世論工作の部門があり、新聞、出版、テレビ、ネットなどのメディアごとに分かれて特命班が存在するといわれる。

安倍首相の親友が経営する加計学園の獣医学部新設疑惑をめぐり、重要な証言者、前川喜平氏が出会い系バーに出入りしていたと報じた読売新聞のネタモトは、前川氏の行動を以前からチェックしていた内調のリークであったらしいこともわかっている。

職務の性質上、われわれ一般人がその活動内容を知ることはできず、すべては推測の域を出ないが、裏を返せば、内調が何をやっていても不思議ではないということになる。

「テラスプレス」というサイトが、内調とのからみで話題になったことがある。2019年夏、参院選前のことだ。このサイトに掲載されている記事をまとめた冊子が自民党本部から党所属国会議員の事務所に大量に配られた。

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冊子の標題は「フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識」。いわば選挙演説用の参考書としての利用を勧めているらしかった。

中身はというと、「トンデモ野党のご乱心」「フェイクこそが本流のメディア」「安倍政権の真実は?」の三章からなり、立憲民主党や共産党、朝日新聞と東京新聞をこっぴどく叩く一方で、当時の安倍政権のやることなすことすべてを持ち上げていた。安倍氏が毛嫌いする石破茂氏には敵対的であることも特徴的だ。

このサイトへの投稿が始まったのは2018年7月13日だが、同年8月6日の記事では、総裁選への出馬意向を固めた石破氏について、加計学園問題とからめ「獣医師の既得権益を守るために動いた」と批判している。総裁選を安倍氏が有利に戦えるように意図した記事であるのは明白だった。

運営主体をわからないようにし、当然、連絡もとれないようにしているが、総裁選で内調が安倍氏のために活動していたという噂が流れ、内調と「テラスプレス」との関係が疑われた。このアカウントの位置情報から、国会議事堂、首相官邸、霞ヶ関官庁街、自民党本部の周辺に発信源があることだけはわかっている。

万が一、政府機関である内調が、特定の政治家や政党の選挙対策に一役買っていたとすれば、大問題である。

自民党では、「ネット工作」が常態化しているフシがある。河井克行元法務大臣の疑惑は、2020年10月19日、妻、案里氏をめぐる公職選挙法違反事件の公判において検察側が朗読した供述調書で浮上した。

それによると、克行氏は、2019年の参院選で自民党二人目の公認候補として広島選挙区に出馬した案里氏を勝たせるべく、ネット業者に工作を依頼した。ネット業者は、架空の人物を名乗ったブログを運営、案里氏と争っていた自民党現職、溝手顕正氏のイメージを貶める投稿を繰り返した。克行氏が7選を果たした17年の衆院選でも、同様のネット工作が行われた。

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以上は、ネトウヨ的言論活動を続ける正体不明のサイトが、政権中枢や政党、政治家の関与する業者によって運営されているのではないかという疑念をもとに書いたものである。

だが、自民党には公式のボランティア組織として、約1万9,000人の会員を有するネット言論集団が存在することも忘れてはならない。

「自民党ネットサポーターズクラブ」、通称「ネトサポ」である。「インターネット等を活用した各種広報活動・情報収集活動・会員相互の交流活動」というのが設立趣旨だが、早い話、野党を批判し、自民党に有利な書き込みをする人々の集団といえるだろう。

自民党は2013年のネット選挙解禁に合わせてネット監視チームを立ち上げた。大手IT企業からソーシャルメディア投稿監視サービスを導入、党職員やIT関連企業のスタッフが24時間体制でネットを監視し、反自民的な書き込みを発見したら、プロバイダーに削除を要求している。しかも、監視チームの情報はネトサポの全会員に流れる仕組みだ。

つまり約1万9,000人もの会員が、自民党の監視チームから、反政府、反自民的な言論の情報を受け取っているのだ。彼らがSNSなどで大量の攻撃をかけているのを想像すれば、ネトウヨ的言説があふれかえるのもうなずける。

個別には、いわばプロフェッショナルである「Dappi」や「テラスプレス」が、ネット工作の世界で目立ってはいる。しかし、それらは氷山の一角にすぎない。「ネトサポ」のようなシロウトの言論集団を組織の一部として組み込み、育成しているのが自民党の恐ろしさだ。あらゆる手段を使い、着々とネット支配の領土を広げている。

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image by: 自民党ネットサポーターズクラブ - Home | Facebook

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