大手スーパーやコンビニが地方に進出し、もともとその場所にあったスーパーは危機に瀕しています。しかし、今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、大手に勝ち続けている地方密着型のスーパーの戦略を紹介。簡単ではないけれど、勝つ答えは“ごく単純”な答えのようです。
大手に勝つ!地域密着型スーパーの「高くても売れる!」戦略とは?
いま、「イオン」や「セブンイレブン」が、日本の隅々まで、勢力を拡大しています。失礼ながら、“ド田舎”と言われる場所にまで、お店が存在します。地方の人間にとっては、夢のような出来事。テレビや雑誌で紹介されたものが手に入るのですから。
そこで困るのが、地方のスーパー。同じようなものを売っていても、大手の方が安くなっています。しかも、地方のスーパーには無いものもたくさん売られているので、お客さまには魅力的です。
現状のやり方を続けていれば、近い将来、確実に潰れてしまいます。
では、どうすれば、大手に潰されずに済むのでしょうか。いや、どうすれば勝てるのでしょうか。簡単ではありません。しかし、答えは単純です。
「大手にはない魅力を作る」。
これができれば、どんなに巨大な相手でも、倒すことは可能です。それを実践して、大成功しているスーパーが、神奈川県にあります。
逗子・葉山・鎌倉などに12店舗を展開する、「スズキヤ」。明治35年創業。120年に渡って、地元の人に愛され続けてきたお店です。このお店の特徴は、お客さまの声を聞けば、わかります。
「ここにしかない、美味しいものがある」
「新しいものがいっぱいあって、期待を裏切らない」
「新鮮で安心。良いものがある。何を買っても、間違いない」
このお店には、他にはない独自商品が多く、店内を見てまわるだけでも楽しくなります。
では、このお店の一番人気をご紹介します。“スズキヤと言えば、これ!”という商品です。
「鮭と彩り野菜の茶々のり弁 626円」。
ご飯に昆布茶とかつお節、揚げ玉、昆布の佃煮、白ごまをまぜ込み、丸い容器に入れ、千切った焼き海苔を全面にかぶせています。その上に、骨抜きした焼き鮭、高野豆腐、がんもどきと野菜の煮しめ、白身魚と豆腐のふんわり天、きんぴらごぼう、竹輪の磯辺揚げ2種、金時豆、玉子焼き、大根の甘酢づけをのせています。おかずはすべてひと口大にしてあり、海苔を千切ってあるのも、食べやすさのためです。
また、お吸い物の素が添付されており、半分ほど食べた時点で、お茶漬けができるようになっています。
のり弁にしては豪華で、価格も高めになっています。しかし、販売開始1年半で、20万食が売れています。いまも連日、完売状態が続いている、大ヒット商品です。全国3,000店のスーパーが参加する、「お弁当・お惣菜大賞2020 のり弁部門」で、「最優秀賞」を獲得しています。
他にも大ヒット商品はたくさんあります。
「自家製国産鰻 うな重上 2,786円」。
毎朝、活きたうなぎを手で捌き、蒸し上げ、タレに漬け、焼き上げます。このうなぎは、スーパーでは珍しく、専属の職人が調理しています。スーパーにしては高いかもしれませんが、こだわりを持った専門店と同じならば、安いのではないでしょうか。
もうひとつ、興味深い商品があります。
「フォアグラときのこの春巻き 486円」。
この商品は、地元にある無国籍料理店が考えた料理です。「スズキヤ」では、地元の飲食店や企業とのコラボ商品を開発することで、自店だけではなく、地域全体が活性化するように努めています。この春巻きも「お弁当・お惣菜大賞2021 中華点心部門」で、優秀賞を獲得しています。
高級食材のフォアグラと舞茸、エリンギ、しめじ、マデラ酒(ポルトガルの酒)、生クリームを合わせて、クリーム煮にして、皮で巻き、揚げています。1本486円は高いのですが、1日に540本売れたことがあるほどの大ヒット商品なのです。
これらはほんの一部で、独自商品を中心に、300種類以上のお弁当・お惣菜が並んでいます。これほど魅力ある商品が並んでいれば、大手に負けることはありません。
私が推察するには、このお店はそこそこのものを売るスーパーではなく、優れた個人商店の集まりなのではないでしょうか。
人気のお弁当を開発したのは、勤続30年のベテランパート女性。うな重は、専属の職人。春巻は、地元の料理店。すべてプロ中のプロが開発した商品です。多くの独自商品をそれぞれのプロが、競い合うように生み出しています。魅力的な商品が並んでいるのも納得できます。
ライバルたちは、商品を仕入れて売る、言わば流通させているだけですが、「スズキヤ」は常に独自商品を店頭に並べているのです。この差は大きく、たとえ小さなスーパーであっても、大手に勝つことができる戦略なのです。
image by: Shutterstock.com