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ホンマでっか池田教授が木下元都議の「辞職拒否」に期待した真の理由

無免許運転を繰り返していた木下富美子元都議について、「辞職しないで頑張れば面白かったのにね」とツイートしたと告白する、CX系「ホンマでっか!?TV」でもおなじみの池田清彦教授。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、その真意を、木下元都議が辞めずにいることで、議会に出なくても報酬がもらえるという議員たちにとって都合のいい制度に手がつくことを期待したと説明。教授はさらに、辞職を拒む木下都議に対する国を挙げてのバッシングに関し、叩きやすいと見るや容赦なく叩く日本社会の悪癖として嘆いています。

※本記事は『池田清彦のやせ我慢日記』2021年12月10日号からの一部抜粋です、この続きをお読みになりたい方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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池に落ちた犬を棒で打つのが楽しい人たち

都議会議員当選直後に無免許運転が発覚し、大バッシングを受けた木下都議(元都議)が辞職したという。私は2021年11月26日に「木下都議、辞職しないで頑張れば面白かったのにね。もっと悪い奴はいっぱいいますが、辞職する気配もないな」とツイートしましたが、舌足らずだったせいか、あまりウケなかったな。

法的には辞職する義務はないわけだから、私としては、徹底的に辞職を拒否した結末を見たかったのである。どんなにバッシングされても辞職するそぶりも見せない元首相もいるわけだから、木下都議が辞職しなくとも、法的には何の問題もないのである。

こういうことを書くと、悪いことをしたのだから責任を取って辞職するのが当然だと、知ったようなことを言う人がいるのは承知しているが、私はどうにも辟易とする。

都議は相互扶助システムに守られていて、議会に出席しなくても報酬を貰えるし、禁固以上の実刑判決を受けなければ失職することはない。前者の不都合を解消するには、例えば議員報酬を議会に出席すべき日数で割って、出席した日数だけ報酬を支払うように法改正すればよく、無免許運転をした人が議員を続けるのが不都合ということであれば、無免許運転した人は即失職という法律を作ればよい。まあ後者に関しては、私自身はそういう法改定には反対だけれども、前者の法律はすぐにでも作って欲しいと思う。

なぜそういう法律ができないかというと、ほとんどの議員にとってはそういう法律は有難くないからだ。全く働かないで給料がもらえる会社はない。国会議員をはじめ、議員は全く働かなくとも報酬がもらえる場合がほとんどだ。

日本の国会議員や地方議員は国際基準と比べて高給であることは間違いないが(例えば日本の国会議員の年俸は約2000万円強、それ以外に文書費などで2000万円弱、計4000万円、他の国の国会議員の年棒はアメリカ1600万円、カナダ1300万円、ドイツ1100万円、フランス1000万円、イギリス1000万円、韓国800万円、日本の都道府県の議員年俸は平均1000万円、アメリカ州平均400万円、ドイツ州平均620万円、韓国広域自治体平均350万円、イギリス県平均70万円、フランス&スイス数10万円から無報酬)、一番大きな問題は高給自体にあるというよりも(確かにもう少し低くてもいいとは思うけどね)、全く働かなくとも報酬がもらえるところにあるのだ。

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なぜそういうことになるかというと、議員の報酬は議会が決めて、さらには議員の報酬の停止規定を作らないところが多いからだ。自分たちの報酬を自分たちで決めれば、高給になるのは当たり前だ。さらには、国会議員をはじめ、議会に出席しなくとも、満額支給される場合が普通で、日給制を採用している自治体は稀である。これも議員にとってはおいしい話なので、自分たちで決めている限りは、簡単には変わらない。

議員の身分保障と報酬に関しては、議会とは独立の委員会を作って、そこで審議するようにしないと、いつまでたってもこの悪弊はなくならないだろう。

合理的なシステムを作らないで、個別の議員の非をあげつらって、みんなでバッシングするのは、結果的にシステムの非合理性を隠蔽するのに役に立つだけだと思う。木下元都議が辞職せずに、議会を欠席したまま議員報酬をもらい続ければ、あるいは、議員報酬の日給制の議論も起こるかもしれないと期待したのだが、木下元都議は、私が思ったほどには根性がなくて残念だった。

私が、もう一つ辟易としたのは、木下都議の辞職を求めて、マスコミからSNSまですさまじいバッシングの嵐となったことだ。まさに「池に落ちた犬を棒で打つ」という諺に相応しい状態になったのだ。多くの下品な人は木下都議をどんなコトバで罵っても、自分に悪口が帰ってくることがないことが分かって、安心して、罵倒できるという快感に酔いしれていたとしか思われない。

例えば、木下元都議に比べれば巨悪の権化のような安倍元首相を罵倒すると、ネトウヨに絡まれることは間違いないので、ある程度根性がある人以外は元首相を罵倒しない。

完全安全地帯から、思い切って罵倒できる木下都議は、欲求不満が溜まり、将来の不安を払拭できない人にとって、格好の標的になったのであろう。孤立している人をバッシングするのは、孤立したくないという潜在的恐怖の表れなのだ。新型コロナが流行り始めたころ、地元のナンバーでない車が止まっていると石を投げたり、東京から里帰りしてきた人を病原体がやって来たかのように忌み嫌って嫌がらせをしたりした人がいたが、これらも、新型コロナウイルスに対する恐怖のなせる業なのだ。

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同調圧力が強い日本社会では、バッシングしてもOKという人に対してマウントを取って、自己の優位性を誇示して、自己満足する人が結構多い。実は誰も褒めてはくれないのだけれど、自分では正義の味方のような心持ちになれるので、結構気持ちがいいのかもしれないね。

昔も今と同じように、電車の中で、携帯でしゃべることはマナー違反であった。私が山梨大学に通っていた頃だから、もう20年近く前のことになる。ガラガラの車内で、携帯で楽しそうに喋っている女子高生がいた。すると、遠くの方に座っていたジイさん(きっと今の私よりも若かったのだろうけれどね)が、やおら立ち上がって女子高生の所にやってきて、「うるさいぞ。車内で、携帯で話してはいけないのは知っているだろう」と大声でくどくどと説教を始めた。

可哀そうな女子高生は「すみません」とぺこぺこしていたが、説教が終わると、隣の車両に移ってしまった。傍で、このやり取りを聞いていた私は「ジイさんの方が余程うるさいぞ」と思っていたが、めんどうくさいので黙っていた。反撃できない人を攻撃して、留飲を下げるほど下品な行動はない、と私は思うが、本人は社会の木鐸のつもりで、気持ちいいのかもしれないね。(『池田清彦のやせ我慢日記』2021年12月10日号より一部抜粋、この続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by : 都民ファーストの会 - Home | Facebook

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