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病床の講義で完成した“お父さんの味”。亡き夫の洋食店を守る妻と子

老舗洋食店から独立し、多くの常連客をようやく掴むことのできた矢先に亡くなってしまった店主。その跡を継ぐのは妻と娘でした。今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、一軒の洋食店で紡がれ続ける、まるで映画のようなエピソードを紹介しています。

母娘が受け継ぐ、亡き主人から病床で聞き書きした、洋食レシピ

ハンバーグ、ビーフシチュー、ポークソテー、ロールキャベツ……。

東京都板橋区に、正統派の洋食が食べられるお店「AIDA(あいだ)」があります。

テーブル席には、ギンガムチェックの赤いテーブルクロスが掛かっている、これぞ洋食屋という雰囲気。老舗洋食店「つばめグリル」から独立した店主が営んでいました。

そう、過去形なのです。昨年、店主の間宮透さんが亡くなってしまったのです。

58歳。まだまだこれからという時の悲劇です。

2011年にオープンし、苦労しながらも、何とか軌道にのせることができ、多くの常連さんを掴んでいました。ところが3年前、病魔に襲われ、厨房に立つことができなくなりました。胃ガンでした。

妻ゆみ子さんとの間には、4人の子どもがおり、末娘がまだ高校生だったこともあり、金銭的にもお店を閉めることはできませんでした。

そこで、妻のゆみ子さんが一年発起。夫とは、つばめグリルでの上司と部下。つまり、ゆみ子さんも料理人だったのです。結婚と子育てで20年以上のブランクがありましたが、やらない選択肢はありませんでした。

その手伝いを名乗り出たのが、末娘の来未(くるみ)さんです。将来はお店を継ぐと決意したのです。

高校卒業後は調理士学校に通いながら、お店を手伝い、師匠である母から厳しく指導されています。母と娘の二人三脚が始まったのです。

しかし、ゆみ子さんにはブランクがあるため、夫と同じようにはできませんでした。そこで、わからないことはすべて夫に聞くことに。病室の夫の横に座り、メモを取りながら、レシピを習得していきました。病室が講義の会場となったのです。

不安がるゆみ子さんに、夫はこう言います。

「母さんの料理は美味しいから大丈夫だよ」。

この言葉に勇気づけられ、娘と一緒に頑張ることができたのです。

しかし、「夫と同じ味を出せなければ、お客さまが離れてしまう」という恐怖心もありました。自分の味ではダメ。夫の味でなければ、常連さんに認めてもらえない。夫にも褒めてもらいたい。そんな想いを胸に、さらなる努力を重ねます。

夫が入院してから、一時的に離れていたお客さまも徐々に戻って来てくれました。

お客さまは言います。

「ちゃんとお父さんの味です」
「他のハンバーグはイヤ」
「圧倒的に1位です」

夫の築いた洋食屋さんを潰すことなく、守ることができたのです。

夫が戻って来るまで頑張るつもりでしたが、夫は帰らぬ人となったので、これからは母と娘のお店として、お客さまに満足を提供し続けることでしょう。

創業10年の町の小さな洋食屋さんですが、そこには、老舗を守る人たちにも似た、物語があったのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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