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あなたは大丈夫?親の言葉遣いが子供の成長に大きく影響するワケ

人間の成長は資質と環境で決定づけられ、中でも子供の成長過程で重要な影響を与えるのは“親の言葉遣い”なのだそうです。漫画『ドラゴン桜』の指南役として知られ、23年間の公立小学校勤務の経験を持つ親野智可等さんは自身の無料メルマガ『親力で決まる子供の将来』で、子供の成長を妨げる言い方や逆にプラスの思考形態を作ることのできる話し方について語っています。

親の言葉遣いで子どもは変わる

人間の成長を決定づけるものとして資質と環境の二つが考えられるが、成長過程における環境として最大のものが親の存在である。

なかでも大きな影響を与えるものが親の言葉遣いである。親の言葉はシャワーのように毎日、子どもに浴びせかけられ、それが子どもの発想や思考形態に多大な影響を与えている。

「環境=言葉遣い」と言っても過言ではないと思っている。

一時期、アダルトチルドレンという言葉が取りざたされたことがあった。日本でアダルトチルドレンが増えているというのだ。

アダルトチルドレンというのは、子ども時代に心理的外傷を受け、それがトラウマとなって、成人してもまともな人間関係を築けなかったり、うまく感情表現できずに過剰反応する傾向が強かったりする人を指す。

アダルトチルドレンの多くは子ども時代に暴力や言葉による親からの虐待を受けている。その心の傷を癒やしきれずに成人する。それほど親の言葉は子どもに影響を及ぼすのだ。

否定的な言い方は子どもを傷付ける

耳をふさぎたくなるような暴力的な言葉だけでなく、実は日ごろ、親たちが何気なく使っている言葉も子どもを傷付けている。親の言葉遣いは以下のように大きく四つに分類できる。

1.マイナスイメージの言い方

何か子どもに対して言うときに、「~しなくちゃダメでしょう」「また~していない」「なんで~できないの」などと否定的な言葉が入ると、子どもは自分がダメと言われたように感じる。

親は「片付けができていない」と物事についてただ話しているだけと思うが、特に小さい子は自分が否定されたように感じてしまう。

例えば、子どもが「片付けできたよ」と報告してきたときに、まず褒めてやらずいきなり「だけど、~がまだだよ」と答えてしまうと、子どもはせっかくやったのにまたダメかと思う。

2.人格否定

マイナスイメージの言い方よりもっと問題なのが「人格否定」を含めた言い方だ。例えば、「ダメなやつだな」「冷たい子ね」「だらしがないな」など、人格を丸ごと否定すると子どもを深く傷付ける。ときにはひと言が長く心に残り、トラウマになることさえある。

そこまで言わないまでも、「情けないな」とか「情けない子だな」、あるいは「がっかりだよ」も人格否定の言い方である。親は自分の気持ちを言っていると思うかもしれないが、子どもにとっては「親を悲しませる、がっかりさせるダメな子だ」と言っていることと同じだ。

3.プラスイメージの言い方

これに対して、肯定的な言い方は子どもにいい影響を与える。例えば、「~すると気持ちいいよ」「~するとうまくいくよ」と気持ちを前向きにさせる言葉を含めていう。「どうして片付けできないの」と叱るより、「片付けすると気持ちいいよ」という方が親の気持ちもよくなる。

そして、少ししか向上していなくても、場合によっては特に変化がなくても、褒めてやることが大切だ。

「片付けがうまくなったね」「うまくできたじゃないか」と、あたかも上達したように言うと、子どもは次第に自信を付ける。

何かが本当にできたり、上達したりしたら改めて褒めてやろうなどと思っていると、褒める機会がなくなってしまう。

仮に、いくら言っても片付けがうまくならない場合も、それは仕方のないことだ。整理整頓のヘタな子もおり、それは個性なので、思い切って目をつぶって、長所を見るようにしよう。できないことを責め立てて、自信を失わせることが一番いけない。

4.単純指示

とはいえ、プラスイメージだけで言うのは難しい場面もある。そのときは単純に指示する。

「~しなさい」「~すること」だけでいい。ついつい、余計に「~してないな」と付け加えたくなるが、ぐっとがまんして、「片付けなさい」だけでいい。

親の言葉遣いが子どもの思考形態を決める

人間は自己イメージにしたがって自分を作り上げていく。これは建物と一緒で、基本的に設計図にしたがって、建物が建つのだ。

自己イメージとは言葉である。自分はこんな人間だというイメージが肯定的であれば、「できる」「がんばる」という気持ちになるが、「ダメな人間だ」と思っていると、次第にダメになっていく。これは必然的といっていい。

この自己イメージを形成する上で、親の言葉や接する態度がとても影響を与える。いつも親がマイナスイメージや人格否定的なものの言い方をしていれば、子どもが否定的な思考形態になっていくことはまぬがれない。

かつて、わたしが受け持った小学1年生の女の子はわたしも驚くほどプラスイメージの言い方ができる子だった。

給食のときには「このホウレンソウ、すごくおいしいね」と言い、授業中の友だちの発表に対しては「いまのお話し、すごくよかった」と褒め、友だちの描いた絵を見ると「きれいだね」と話しかけ、昼休みから教室に戻ってくると「先生、ドッヂボールがすごく楽しかったよ」とニコニコ報告してくれた。

当然ながら、彼女はクラスの人気者で、だんだんほかの子も彼女の言い方を真似するようになった。クラス全体に彼女がとてもいい影響を与えてくれたのだ。

彼女のお父さんもお母さんも同じようにプラスイメージの言い方をする人たちで、お父さんはお母さんの作った食事を「おいしいね」といつも褒め、お母さんもお父さんが仕事から帰ってくると「暑い中、お疲れさまでした」とねぎらう。

そうした家庭だからこそ、子どもは何の努力もせず、自然にプラスイメージの言い方と、プラス思考を身につけたのだろう。

その子を思い出すにつけ、親の言葉遣いの影響の大きさを感じる。

わたしを主語に「アイ・メッセージ」

わたしがプラスイメージの言い方の重要性を感じたのは、20歳のころに読んだ本がきっかけだ。その本のタイトルは忘れてしまったが、プラス思考の大切さを説いた啓発書だった。

言葉遣いがその人の思考形態に影響を与えることを知って、それ以来、「~はダメ」というような否定的な言い方をしないと心に決めた。

言葉に出す前に、プラスイメージに翻訳してからしゃべるようにしていたら、いつの間にか自然にできるようになり、プラス思考の考え方になってしまった。

これは誰でもできることだ。否定的な言葉を相手に対してしゃべらないことを心がけると同時に、マイナスイメージの言い方を避けるうまい方法がある。

それが、「アイ・メッセージ」である。アイ・メッセージとはアイ(わたし)を主語にして相手に伝える話し方である。これに対して、ユー(あなた)を主語にする話し方を「ユー・メッセージ」という。

例えば、子どもが約束の時間に帰ってこなかったとき、ユー・メッセージでは「また(お前は)こんなに遅く帰ってきたの」と子どもを責める言い方になる。ところが、これをアイ・メッセージで伝えると「早く帰ってこないと(お母さんは)心配だわ」と非難の要素が消えて、自分の気持ちを伝えることになる。

兄弟げんかを止めるときも、「また(お前たち)はケンカしているのか」ではなく、「兄弟仲良くしていると(お父さんは)うれしいな」となる。

大人でも相手に非難されたら、心を閉ざして素直に話を聞かなくなる。理屈では相手の言い分が正しいと思っても、気持ちの上では拒絶してしまう。

しかし、素直に相手から気持ちを伝えられると、自然にその気持ちに共感するようになる。特に子どもたちにおいてそうした傾向が強い。

まずは自分から言い方を変える

このアイ・メッセージという考え方は米国の心理学者であるトーマス・ゴードン博士が『親業』という本の中で提唱した。

わたしはこれは素晴らしい方法だと思って、教師時代にいろいろと試し、実際、かなり有効であることが分かった。

子どもに対してアイ・メッセージで話すようになると、いつの間にかしゃがんで子どもと目線を合わせて話すようになり、子どもたちも素直に耳を傾けてくれるようになったのだ。

ただし、わたしを主語にすれば、何でもいいというわけではない。「偽りのアイ・メッセージ」というものがあり、非難や押しつけの気持ちが入っていると、効果がない。

例えば、「ちゃんとやらないから、(わたしは)嫌になるわ」とか「テストで100点取るのを(わたしは)待っているぞ」という言い方では子どもは心を閉ざすだろう。

もし、日ごろ、みなさんがマイナスイメージの言い方や、人格否定、ユー・メッセージで子どもと会話しているならば、是非、ここで紹介したプラスイメージの言い方や単純指示、あるいはアイ・メッセージを試していただきたい。

重要なことは、「それじゃ、妻(夫)にそうさせよう」ではなく、自分から始めること。思い切って、言い方を変えるだけで、きっと子どもとのコミュニケーションはぐっとよくなるはずだ。

初出「親力養成講座」日経BP 2008年1月11日

image by: Shutterstock.com

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5年連続でメルマガ大賞の「教育・研究」部門賞を受賞!家庭教育メルマガの最高峰。教師生活23年の現場経験を生かし、効果抜群の勉強法、子育て、しつけ、家庭教育について具体的に提案。効果のある楽勉グッズもたくさん紹介。「『親力』で決まる!」(宝島社)シリーズは30万部のベストセラー。

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【著者】 親野智可等 【発行周期】 不定期

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