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「岩国基地」発「広島」経由。中国地方の感染拡大に見る地方医療の崩壊危機

オミクロン株の急激な感染拡大により、まん延防止等重点措置の適用を要請する自治体も増え続けています。重症化する人の割合が少ないことを根拠に過剰な規制だと批判する向きに、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは、「油断はできない」と釘を刺します。山崎さんは、無症状であれ軽症者であれ、数が増えることで医療逼迫は起こると説明。感染初期段階に効果がある投薬のタイミングを逸する危険性と、島根県の感染状況を例に元々脆弱な地方の医療体制に大きな不安が生じると、注意を喚起しています。

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第6波のこと

オミクロン株の拡大により新型コロナ感染もいよいよ第6波に突入した。ただこの大波は今までのものとは明らかに別物である。一般的にオミクロン株に関しては「感染力が高い」一方「重症化しにくい」の2つのキーワードで語られ「重症化しにくい」が故にデルタ株の時と比べると全体的な雰囲気としてはそれほど危機感がないような気もする。

しかしそもそもCOVID-19は感染症である。それを考えると「感染力が高い」感染症とはそれこそ鬼に金棒状態である。つまり決して油断はできないということである。

分かり易いように敢えて数字を単純化して言う。例えばデルタ株に比べて感染力が10倍、重症化率が1/10だとする。その場合の重症者は計算上同じなのである。

この時、問題となるのは重症者の数だけではない。重症者が同じ100人だとしても、デルタ株は総感染者数が1000人なのに対し、オミクロン株は10000人にもなってしまうことである。医療の逼迫は軽症、中等症、重症、どのフェイズがパンクしても起こってしまう。

しかも第5波までの日本の医療体制は(これは当然のことだが)中等症2以上を対象の中心に据えた構えであった。然るに今回の主戦場は主に無症状、軽症あたりである。この時期、つまり早期発見なら新しく認可された内服薬による早期治療が今ならできる。そうすれば医療資源や患者本人への負担も比較的小さくて済む筈であった。

ところが日本はPCR検査体制が十分整ってはいないためにこの早期発見が困難なのである。2年間、専門家等から指摘され続けていたにもかかわらず、である。せっかく創った薬も陽性と判明する頃には既に飲む時期を逸してしまっている…こんなことが起きないことを祈るばかりである。

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もう一つ心配なことがある。それは地方への感染拡大である。政府必死の水際対策も虚しく、今回のオミクロン株の感染拡大は既に懐中にあった米軍基地から起こった。沖縄、山口県岩国がそうである。勿論、全国すべてのオミクロン株が米軍由来とまでは言わないが、少なくとも沖縄全県、岩国→広島→島根ルートはほぼ確実であろう。特に後者は交流人口地図的にもそれがよく分かる。

実際、岩国・広島間は山陽新幹線、山陽自動車道、国道2号、どれを使っても非常に近い。対岸に見える厳島一島分ドライブすればすぐに着く。この中四国地方最大の都市広島が地方エピセンターとなりウィルスが広がったのであろう。

1月17日付で過去最多の感染者(118人)を出している隣接県島根も山陽自動車道→広島自動車道→中国自動車道→浜田自動車道と行けば1時間20分(カーナビ調べ)の距離だ。事実、島根県の当該日のデータを参照したところ(いずれも当該保健所管内のデータ)、

というふうに人口の多少に関係なく、広島とのアクセスのいい浜田市が県内で最も多くの感染者を出している。

この事実には注意しなければならない。島根と言えば人口は全県合わせても約663,000人、典型的な過疎の県である。通勤は車、乗降者の多い駅や巨大オフィス街もなく、人混みとはほぼ無縁の筈である。普通に生活していても十分なほどディスタンスが取れるし、マスク・手指消毒などの基本対策も徹底しているだろうから、これ以上どうしようもない。

さらに悪いことに、こういった地方では医療体制が極めて脆弱である。地方の医師不足はCOVID-19前から指摘されてきた通りである。現実問題として、このような市町村は日本中に数え切れないほどある。数え切れないほどある場所に数え切れないほどの感染者が出たらそれこそ地獄の沙汰である。

「小敵と見て侮らず」第6波にあって、このことをしっかり肝に銘じておきたい。

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image by: Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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