MAG2 NEWS MENU

第2次大戦前夜のドイツと酷似。世界はプーチンを阻止できるのか?

現実となってしまったロシアによるウクライナ侵攻。侵攻開始までのプーチン大統領の動きと、第2次大戦前夜のナチス・ドイツによるチェコスロバキア解体の動きの酷似を指摘するのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。ヒトラーの行動を熟知するプーチンが、意識的に同様の動きをしていると見る小川さんは、ヒトラーの横暴を許してしまったNATO諸国も、その教訓を生かし、不退転の覚悟を示すべきと訴えています。

軍事の最新情報から危機管理問題までを鋭く斬り込む、軍事アナリスト・小川和久さん主宰のメルマガ『NEWSを疑え!』の詳細はコチラから

 

第2次大戦前夜と酷似したウクライナ情勢

現在のウクライナをめぐるロシアの動きは、第2次世界大戦前夜のドイツの動きと驚くほど重なっており、2014年2月のクリミア併合が「ナチス・ドイツによるズデーデン併合を思い起こさせる」としたドイツのショイブレ財務相の警告よりもなお、リアリティを伴っていると言ってよいと思います。

今回はウィキペディアから関係の記述を引用し、浅学非才の私が誤った情報を提供しないようにしたいと思います。 (以下引用は2月26日現在のウィキペディアより)

「ナチス・ドイツによるチェコスロバキア解体は、第二次世界大戦直前の戦間期に国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)政権下のドイツ(ナチス・ドイツ)が主導して中欧のチェコスロバキアを分割・消滅させた一連の過程を指す。特に、過程の一部として行われたドイツに対するズデーデン地方の割譲は、ズデーデン割譲またはズデーデン併合と呼ばれている」

「チェコスロバキア解体は、ドイツ、ハンガリー、ポーランドに領土を分割させられる1938年の第1段階と、独立運動を激化させるドイツの策動でスロバキア・カルパト・ウクライナとベーメン・メーレン保護領に分裂して消滅させられる1939年の第2段階からなる」

なんと今回のウクライナ情勢と酷似していることでしょう。そして、以下を読むと、プーチン大統領のロシアが戦争への道へと突き進むかに見えるのです。

「1938年3月、念願のオーストリア併合を達成したヒトラーは、次の領土的野心をチェコスロバキアに向けた。そして4月には対チェコ作戦(コードネーム”緑の件”)が立案され、次のように軍に指示した。

 

1.どんな原因もなく、また正当化の余地もないような青天の霹靂的奇襲は拒否。 2.一時的に外交交渉を行い、徐々に事態を先鋭化しつつ戦争に導く。 3.戦闘は陸軍と空軍の同時攻撃の必要あり。最初の4日間の軍事行動が政治的にも決定的。もしこの間に軍事上の決定的な成功がなければ、全欧危機に突入するのは確実。

 

上のような公文書を出した後、ヒトラーは行動を開始した。彼は、チェコ国内のドイツとの国境沿いの地域に多数のドイツ系住民(ズデーデン・ドイツ人)がいることを対チェコスロバキア戦略の重要な駒とした。まずオーストリア併合によって勢いづいているズデーデン・ドイツ人にドイツ本国から大々的な支援を送り、自治運動を展開させた。さらに宣伝機関によって「圧迫されているズデーデンのドイツ人」という宣伝を国内に流し、ドイツ世論をも勢いづけた」

軍事の最新情報から危機管理問題までを鋭く斬り込む、軍事アナリスト・小川和久さん主宰のメルマガ『NEWSを疑え!』の詳細はコチラから

 

これに続く、「ドイツ国防軍の見通しも慎重であったため、ヒトラーは一旦侵攻を見送った」というくだりも、これまでプーチン大統領を支持してきたロシアの退役将校団によるプーチン批判と重ねると、今回は欧米諸国との首脳会談などによって兵を引くことになったとしても、決して油断することはできないことを教えてくれます。

KGB(国家保安委員会)の将校として東ドイツ駐在歴があり、ドイツ語に堪能なプーチン大統領は、おそらく第2次大戦前夜のドイツの行動を熟知しており、同様な行動をとることによって生まれる欧米諸国の危機感を逆手にとって、NATOの東方拡大を阻止するカードにしようとしているのではないか、と思われます。

チェコスロバキア解体に出たドイツに対して、英国のチェンバレン首相は最大級の非難を浴びせたものの、阻止する動きに出ることはなく、ドイツのなすがままになってしまいました。

今回、NATO諸国もまたズデーデン併合の教訓に学んでいるはずですから、軍事力によって現状を変更しようとするロシアを阻止するために、思い切った経済制裁などで不退転の覚悟を示すべきだと思います。日本もまた、中国の軍事力による現状変更を阻止するためにも、ウクライナ情勢への積極的関与は避けられません。(小川和久)

軍事の最新情報から危機管理問題までを鋭く斬り込む、軍事アナリスト・小川和久さん主宰のメルマガ『NEWSを疑え!』の詳細はコチラから

 

image by:Harold Escalona/Shutterstock.com

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け