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現代なら通報モノ。どす黒い心を植え付けた「スパルタ学習塾」の体罰

3月に入り、終わりを迎える受験シーズンですが、この季節になるとスパルタ学習塾での恐ろしい“体罰”の記憶がよみがえると告白するのは、メルマガ『公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ―』著者で公認心理師の永藤かおるさん。今では心理の専門家として多くの人の心に寄り添う永藤さんが、自身の心に「どす黒いもの」が宿った経験を伝えます。そして、いまでもその悪しき影響を感じると語り、すべての暴力や虐待に対し「ノー」を突きつけています。

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それってアドラー的にどうなのよ「受験まわり、塾まわりのおはなし」

受験シーズン最終コーナーです。受験生……はたぶん読んでないと思うけど、受験生が身の回りにいらっしゃるという皆さん、いろいろお疲れさまです。

半世紀強生きてる中で、いろいろな試験を受けてきたけれど、この時期で思い出すのは中学入試。私が通っていたのは、千葉県の最西端にあるごく普通の公立小学校だったのだけど、土地柄なのかとにかく中学受験をする子どもが多い小学校でした。

千葉の私立中学の受験日は1月下旬に集中し、そして都内は2月1日か2日がほとんど。受験日に学校を休んでも、欠席扱いにはならず、そのおかげで6年間皆勤賞を取った子もいたな。当時としては結構珍しかったのではないかと。

中学受験をするために、私は小学校4年生から、いわゆる進学塾に通い始めたのですが、ココが何とも曲者で。21世紀の今だったら、確実に通報モノの塾長が君臨していました。そう、今や絶滅しているであろう「スパルタ塾」。

毎回行われる100問テストで4問以上間違えると、「前に出てこい!」と言われ、空手有段者の30代男性塾長が、力加減せずに子どもの頬をバチンと張る。5問以上だったら往復ビンタ。10問以上なんてことが起きたら、何往復されるんだ、というありさま。私も鼻血出したことありました、そういえば。ダメだよね、大人がそんなことしちゃ。

私達子どもは、とにかくひっぱたかれたくないから勉強をする。いわゆる「恐怖のモチベーション」に突き動かされているわけです。 親は講師が子どもを叩くことを知っていたかって?もちろん知っていました。でもその塾は、入塾テストをして生徒を選抜するほど流行っていたし、親たちはこぞって子どもをその塾に入れたがっていたのです。

なぜか?合格率が、比類ないほど高かったから。そりゃそうだよね、だってとにかく怖いから、叩かれたくないからめちゃくちゃ勉強するもの。当時マスコミにも「驚異の合格率を誇る進学塾とカリスマ講師」なんて取り上げられていました。

さて、いくら頑張っても、4問以上間違えることなんてざらにあります。そんなときどうするか?子どもたちは結託してズルをし、結託してカンニングをするのです。100問テストの採点は、答案用紙を取り換えっこして子ども達同士がするのですが、そこはみんなお互いさま。

「ウ」を「ア」にちょろまかすことくらいお茶の子さいさい。そしてカンニングの手法と言えば、ケースで隠れる部分の消しゴムに年号を書くとか、長袖で隠れる腕の内側に地名を書くとか、お互い知恵を絞り合って、考えうる限りのばれない手法を編み出す。あの知恵を本来の勉強に当ててたら、もう1ランク上の学校を受験できたかもね、と思うほど。

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ときにこういうズルやカンニングがばれることがあります。その時はもう本当の地獄が始まります。恐怖をさらに植え付けるため、連帯責任と称して、教室にいる全員が大声で罵倒され、ひっぱたかれるというより、ぶん殴られる。小柄な子なんて、本当に吹っ飛んでいました。

そして帰り道、友達同士で誓いを立てるのです。
「受験終わったら絶対塾に火ぃつけてやる」
「絶対に復讐してやる」
まあ本当に実行する子はいませんでしたが。

数年前、あの当時同じ塾に通っていた何人かの友人と飲みながら話していた時のこと。私もですが、アラフィフになっても、みんな鮮明に覚えているのです、されたことを。

あの時勉強が楽しいなんて1ミリも思えなかった。自分が叩かれる順番を待っているときの恐ろしさや、自分と仲のいい子や好きな子が殴られることのいたたまれなさ。圧倒的な立場の違いを利用して、絶対に反撃されない相手に対して、「答えを間違えた」というだけの理由で暴力をふるう大人の狂気。10~12歳という、まだまだ人格形成期でもある時期にこんな仕打ちを受けるとどうなるか。「ロクな大人にならないよね」という結論に至りました。

うん、自分でもそう思う。中学受験で私立女子校に入学したワタシは、本当に嫌な生徒だったと思います。中学に入ってから、どんなに学校の先生に怒られようとも、怖くもなんともない。「どうせ殴んないでしょ?痛くもかゆくもないわ」と舐めた態度をとる。基本的に大人(教師)が大嫌い。

特に威圧的なものの言い方をする大人…それは直接の知り合いじゃなくて、政治家や芸能人なども含めて、激しい憎悪の対象になるくらい。そしてそれは大人になっても自分のどこかにしっかりと影響していて、偉そうな態度や支配的な物言いをする人間に対して、それを上回るような露骨な不快さをきっちりとお返しするようになっているのです。あの時の友人たちも、多かれ少なかれ、同じような思いをしっかりと握りしめているようで。大人げないよね、まったく。

現在、お受験そのものは激化していたとしても、私達の時代のようなスパルタ塾はたぶん(少なくとも)この日本には存在しないと思うけれど、スポーツの世界にはまだその残滓みたいなものがありそう。

そして、家庭内暴力や虐待の事件を目にするたびに、「大人に殴られることの恐怖」「自分が大人になったら絶対に復讐してやるんだ」とオノレに言い聞かせていた時の、あの12歳の心のどす黒さをちらりと思い出します。もう40年もたってるのにね。

暴力、ダメ、ゼッタイ。

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image by: Shutterstock.com

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有限会社ヒューマン・ギルド 取締役研修部長 公認心理師(登録番号: 29160号) 。日本アドラー・カウンセラー協会認定シニア・アドラー・カウンセラー。日本アンガーマネジメント協会認定 アンガーマネジメント・ファシリテーター 平成元年 三菱電機株式会社 入社。その後、ビジネス誌編集、語学専門学校専任教師など、20年以上にわたるビジネス経験を経て、自身が働く中で壁に当たった際に出会ったアドラー心理学を修得。 現在、日本におけるアドラー心理学の一大拠点であるヒューマン・ギルドにて、アドラー心理学研修講師(企業・自治体、教育機関、個人等)、カウンセリング、書籍執筆などを担当。

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【著者】 永藤かおる 【月額】 ¥440/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第2金曜日・第4金曜日

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