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戦いを止めよ。北京「パラ」アスリートを侮辱するプーチンの蛮行

3月4日、北京で開幕した第13回冬季パラリンピック。しかしそのおよそ1週間前に開始されたロシアによる軍事侵攻で、障がい者スポーツ世界最高峰の大会のさなかにも、270万のウクライナ人障がい者が命の危険に晒されています。この事態を憂い批判するのは、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」を運営する引地達也さん。引地さんはメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』で今回、パラリンピックを否定するプーチン大統領の蛮行を糾弾するとともに、即時の停戦を強く求めています。

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北京パラリンピック開幕とウクライナ人障がい者と戦争

北京パラリンピックが戦火激しい同じ大陸で行われている。

パラリンピックが戦争で傷ついた人々の社会復帰から発展した歴史からすると、ロシアがウクライナに侵攻した事実はその存在そのものを否定することにもつながり、開催に向けて苦難を乗り越え、努力を積み重ねたパラアスリートたちのその過程を侮辱することにもなり、悔しさは悲しみに変わっていく。

とりわけ、ウクライナのパラアスリートたちは複雑な思いで北京にいると思われる。

記者会見でウクライナ・パラリンピック委員会のワレリー・スシュケビッチ会長は「来られたのは奇跡だ」と述べた。

障がい者コミュニティにとって戦争とは、銃弾が来る来ないに関わらず、支援が途絶えることで生命の危険に直面する、深刻な被害を真っ先に受ける人たちである。

障がい者の存在は社会を強くするはずなのに、攻撃はその存在を否定するもので、浅知恵に侵された愚行としか言いようがない。

欧州障害フォーラム(European Disability Forum)によると、ウクライナには270万人の障がい者が登録されているという。

同フォーラムは侵攻を受けて声明を発表し、ウクライナの障がい者への安全確保を求めている。

声明では障がい者の状況を「同国にいる私たちの仲間は障がい者の状況が恐ろしいことを確認しました。例えば、キエフの避難所はバリアフリーではなく、障がい者は安全に行ける場所が分からず、家にいる以外ないのです」と説明する。

この声明は、欧州機関長、欧州・ロシア・ウクライナの各元首、北大西洋条約機構(NATO)へのオープンレターとして出された。

そこには「そもそも地域社会から切り離され、施設に住む障がい者は、放棄され、忘れられる危険性があります。ウクライナだけでも、少なくとも82,000人の子供たちが社会から隔離され、無数の成人障がい者が永久に施設にいるのです」との現実を示し、以下の確保を求めた。

それは「すべての人道支援への完全なアクセス」「暴力、虐待、虐待からの保護」「安全および支援の手順、避難に関するアクセシブルな情報提供」「水と衛生、社会支援、教育、医療、交通、情報などの基本的なサービスへのフルアクセス」である。

しかしながら居住地への攻撃は一般市民の犠牲も伝えられる中で、「人道回廊」も機能しないところを見ると、障がい者の生存への危機を危惧せずにはいられない。

声明では「きちんとした扱いを受け、放棄されないこと。施設や孤児院で暮らす人々も十分に考慮した対策を講じることが不可欠です」と強調しているが、これはあくまでも最低限で精いっぱいの要求のように思えてならない。

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ロシア軍の攻撃、一つひとつが大きな音や凄惨な結果の中で、あらゆる「障がい者を生んでいく」のである。

戦争は、これまでの身体や心を破壊していく行為なのだ。

それはパラオリンピックの否定でもある。

パラリンピックは1948年、ロンドン郊外の病院内を会場にした第二次世界大戦で損傷した兵士のアーチェリー競技会が発祥だ。

提唱者はルードウィッヒ・グッドマン医師。

その目的は心身のリハビリである。

社会参加、そして生きる希望。

これがあるからパラリンピックが「人々に希望を与える」のである。

1952年に国際大会になったが、1988年のソウル五輪以降は五輪開催地と同じ場所で行われる。

2014年にはロシアでソチパラリンピックが開催されたが、この前後でロシアの障がい者政策は進展する様相を見せたとされる。

2012年にロシアは障害者権利条約を批准し、2015年にはプーチン大統領のもとで「障害児童支援法」が制定された。

旧ソ連時代のモスクワ五輪ではパラリンピックを開催しなかった国が国際社会の一員として福祉政策を導入しはじめた大統領が、今他国の障がい者の生命を脅かしている。

戦火の障がい者を思うと、胸が痛い。

どうか、どうか、戦いをやめてほしい。

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image by: Rokas Tenys / Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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