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韓国大物議員「ミスター苦言」が語る、文在寅の後継者が落選した“真の理由”

3月9日に行われた韓国大統領選で、野党候補の尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏に僅差で破れた与党「民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補。なぜ文在寅大統領の後継者は落選の憂き目に遭うこととなってしまったのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、自党に対する辛辣な意見をいとわないベテラン議員による「敗因分析」を紹介。その与党にとって耳の痛い「正論」を堂々と語る姿勢を高く評価しています。

ミスター苦言・李相珉

民主党に1958年生まれ(64歳)の当選5回李相珉という議員がいる。自分の党に対しても辛口の言舌を吐くことで有名で「ミスター苦言」などと呼ばれている。車椅子を使う障害者でもある。大統領選挙期間にも党内の過度な「文在寅・李在明聖域化」を批判してメール爆弾に苦しんだりもした。

大統領選挙から2日後、民主党の敗北について、「ネーロナンブル」「偽善」「傲慢?独善」「徒党意識」などの修飾語を使い、「前代未聞の現職大統領を糾弾し、政権を直ちに明け渡すことになったことに対する切実な反省がなければならない」と語った。特に尹錫悦(ユン・ソンヨル)次期大統領と「国民の力」は「現在の勝利」に、民主党は「2年前の総選挙勝利」に埋没してはならないと言う。

尹次期大統領は民主化以降、最小票差(0.73%ポイント・24万7,077票)の「辛勝」で大統領府と行政府の権力を握ることになった。しかし172議席という強大な議会権力を持つ民主党が存在するわけだから、自分の立場を直視するようなガバナンスを行うしかないだろうと語る。朝鮮日報の記事を土台に、第20代の韓国大統領選の結果の総括をご紹介したい。

――民主党の敗北の最大の理由は何か

「民主党に対しては誰でも、ネーロナンブル(自分がやればロマンス、他人がやれば不倫という原義で、自分さえよければいいという破廉恥な態度)、偽善、傲慢、独善、盲従、徒党意識などがすぐに思い浮かぶ。パク・クネという当時の現職大統領を弾劾で追い出し、文在寅という人を立てたが、民主党はどのような行動をしたのか。我を張り、無理強いして、相手にはがまんしないと言ったり押し付けたりした。それでもだめだと最後は『李明博・朴槿恵の時よりはましではないか』と言っていた。国民は『民主党さんよ、あなたたちは違うだろう』という期待があったのに、それを満たしてあげられなかったばかりか完全に逆を行くようなことばかりしていたから失望感が大きいのは当然だ」

――選挙過程で最も残念な場面があるとしたら

「ネガティブ攻勢だ。なぜネガティブではなく人間的礼儀をもって紳士的に、政策アジェンダをより面白く解けなかったのかということだ。相手候補をゾンビや悪魔でもあるかのように追い詰めて、強引な主張をして食おうとした。寛容・配慮・許し・連帯・共存といった価値は見られなくなった。原則を最低限でも守った上での敗北だったらもっと良かったのに」

――最悪のネガティブキャンペーンは何だったのか

「(尹次期大統領の妻の)金ゴンヒ氏に対する攻撃は非常に卑劣で汚かった。キムさんの私生活関連のうわさを公の場で何気なく騒いだり、いくら表現の自由だとしても、いわゆる『ジュリー壁画(金ゴンヒ氏のことを飲み屋のママみたいなコンセプトで町の壁にでかでかと絵に描いた。飲み屋のママを愚弄するわけではなくて金ゴンヒ氏のことをありもしないまったくデタラメに表現した悪意ある壁画。これが問題)』に対する批判的認識もなかった。与党のある関係者は、『尹次期大統領がアッパーカットセレモニーをした時、お腹が出てワイシャツが出てる』と言って容貌を非難した。出身・容姿・背景で差別・嫌悪してはならないというのは、民主党の基本的な価値・志向点であり、国民が自負心を感じる部分だ。そのようなわが党(民主党)の伝統はもはやなくなったようだ。本当に残念だった」

――172議席の民主党はいわゆる“立法暴走”をしてきた

「双方とも今回の選挙について謙虚に省察すれば分かるだろう。現在は両方とも『過多代表』状態だ。2年前の選挙で180議席を獲得した民主党だが、今回の大統領選挙は半分も取れなかった。国民の力は半分足らずの得票で当選したものの、大統領という膨大な権力を得ることになった。両方とも泡立っている(バブル状態)。双方が縮小志向的に見てこそ、問題を解決することができる」

――交渉と取引をしなければならないということか

「米国では“ディール”という言葉をよく使うが、われわれは儒教的基盤のためか、ディール(取引)をしたくても言わない。相手の信念や利害関係を説得・屈服させることはできない。信念・体系・人生観をどう屈服させ譲歩しろと言えるのか。お互いに“ディール”するんだ。出すものは出して、もらうものはもらって。オール・オア・ナッシングは健康な戦いではない」

――現実的に172議席が武器になりそうだが

「172議席の巨大野党(民主党)がこうしたリーダーシップを見せてはどうか。民主党でなければ法案通過ができないと脅かすのではなく、積極的に協力するから持って来いと言うのだ。尹次期大統領が政府組織法を示せば、それをいっしょに『素焼き』し、民主党が尹錫悦政府の政府組織法を提出するのだ。タックルをかけ、キズをつけ、暴言を吐くのではなく、『ポジティブ』にこれまでの野党と違う姿を見せてほしい。そうすれば国民も民主党を見直すだろう」

「172議席という巨大野党としての『度量の大きいリーダーシップ』を見せなければならない。陽気に、太っ腹に、快刀乱麻のように、相手が口を大きく開けるようにしなければならない。足を引っ張り、キズをつけることをこれまで何度してきたか。自分はすっきりしていると思っているが実は自分の心も病んで暗くて陰湿になるのだ。そんな政党に良い気運が来るはずもない」

――李在明氏のこれからの役割は

「大統領選挙という厳しい過程を経たのだから、当分は自重して余裕を持って眺める時間を持つのがいいのではないか。『足りないのは私だった」と言った最近の姿勢はとてもよかったと思う。そうした姿勢を堅持することが、国民の信頼と好感を継承する方法だ。少し休んだほうがいい」

――選挙制改編など政治改革論議は続けられるか

「与野党いずれも半分を獲得できなかった今がチャンスだと思う。大きく5つを変えなければならない。分権型大統領制で大統領権限を大幅に減らさなければならない。連動型比例代表制であれ中大選挙区制であれ選挙制度を改編して国会法を改正し、交渉団体の基準を現在の20席から10席や5席に下げなければならない。2030世代の参加を高めるためには、政党法上、政党構成の進入障壁を下げなければならない。国の補助金も議席数別に配分するのではなく、少数党や新生政党にもっと多く行くようにしなければならない」

――尹次期大統領と国民の力に同意するか

「尹次期大統領が本当に韓国政治の発展に寄与したければ、政治改革を推進力を持って引っ張っていかなければならない。帝王的大統領制を廃止して分権型に変え、議会に相当な権限を移譲する改憲を推進しなければならない。民主党も公約したため、尹次期大統領さえ決心すれば十分に成果を出せるはずだ」

李相珉さんはときどきテレビにもコメンテーターとして出てきていろんな意見を言うが、彼の言うことは普通の民主党の連中とはいつも色合いがちがっている。民主党寄りのコメンテーターがテレビに出てきて言うのを聞いていると、反吐が出そうになって最後まで聞いてられないことが多いのだが、この李相珉さんだけは反吐が出そうにならない。きょうの内容も「正論」である。民主党にもこういう人間がいるのだから、韓国政治もまだまだお手上げ状態ではないと思う。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年3月15日号)

image by: 李相珉 - Home | Facebook

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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