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第3次大戦は不可避か。プーチンの判断力低下で現実味帯びる核使用

ウクライナの首都キーウを攻めあぐね、同国北部からの撤退を余儀なくされたロシア軍。プーチン大統領は侵攻後数日の圧倒的勝利を見込んでいたと言われるだけに、今後どのような行動を起こすのか予断を許さない状況となっています。そんな中、プーチン大統領の核使用の懸念を示すのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回の記事中にそう判断する理由を記すとともに、第3次世界大戦に発展した場合、日本も巻き込まれることは避けられないと警告しています。

プーチンの判断によっては第3次世界大戦か

ロシアによるウクライナ侵攻で緊張が続くなか、バイデン大統領は3月31日、プーチン大統領がウクライナ侵攻における軍事状況について軍幹部から正確な情報を知らされておらず、一部の顧問を解任したり、自宅軟禁下に置いたりするなど孤立している可能性があると指摘した。ロシアによる侵攻から1ヶ月が過ぎるが、当初米国などは首都キエフが数日以内に陥落するなど悲観的な見方を示していたが、欧米諸国からの大規模な軍事支援もあり、ウクライナ軍は善戦し、ロシア軍の劣勢が顕著になっている。ロシア軍の中には士気が低下する兵士が増加し、ウクライナ軍に投降したり、ロシア軍兵士がロシア軍を攻撃したりするケースも見られるという。

今ごろ、プーチン大統領はかなり怒っていることだろう。プーチン大統領は国家指導者になってから2度に渡るチェチェン紛争や2008年の南オセチア紛争で政治的かつ軍事的勝利を収めてきたことから、おそらく今回のウクライナ侵攻でもすぐにキエフを包囲し、ゼレンスキー政権を崩壊させ、親露政権を樹立できると予想していたに違いない。また、侵攻しても中国はロシアを非難することはなく、バイデン政権も非介入主義に走っている、欧州はロシアからのパイプラインに依存しているので大きな非難はできない、こういった認識がプーチン大統領にはあったはずだ。だが、いざ蓋を開けてみれば、プーチン大統領の予測は誤算だらけだった。ロシア軍の進軍が思うようにいかず、欧州は1つになってロシアを強く非難し、米国などは積極的にウクライナを支援している。おそらく経済制裁がここまで厳しく実施されることも想定していなかったのではなかろうか。

しかし、今後もロシア軍の劣勢が続けばプーチン大統領が自爆的行動に出ないかが懸念される。ウクライナ侵攻の中で、国際社会からはロシアが化学兵器や生物兵器を使うのではと懸念が拡がるだけでなく、プーチン大統領本人はロシアの存亡が脅かされた場合の核使用の可能性をちらつかせている。ウクライナのゼレンスキー大統領も3月下旬、ロシアのプーチン大統領と交渉する用意があるとの意思を示す一方、交渉が失敗に終われば2国間の戦争は第3次世界大戦に発展する恐れがあると警告した。

1945年以来の戦場地となる日本

プーチン大統領は国家指導者になってから、冷戦敗者からの脱皮と大国ロシアの復活を目標に掲げてきた。冷戦後ロシアに接近するNATOの東方拡大は徐々にプーチン大統領の不信感と苛立ちを強め、遂にはウクライナの西側接近によってプーチン大統領の沸点に達した。要は、以前からウクライナへの侵攻はプーチン大統領の計画にあり、今回これ以上は妥協できないという姿勢を内外に示しているのだ。

筆者の周辺でもプーチンの核使用によって欧米とロシアの間で戦争が始まり、第3次世界大戦になる恐れを指摘する専門家も少なくない。ある専門家は「ロシアに近い東欧諸国が甚大な被害を被ることになる」と指摘し、「米国とロシアの戦争に発展すれば舞台は欧州だけでなく、シベリアやアラスカ方面にも拡大する」などの見解も聞かれる。仮に、欧米とロシアの戦争になってシベリアやアラスカ方面も戦場になるのであれば、日本も間違いなく被害を被ることになろう。日本も米国と足並みを揃える形でロシア制裁に踏み切っているが、それによって北方4島の返還はさらに夢のまた夢になっている。だが、ロシアにとって北方領土は単なる日本との領土問題だけを意味せず、米国の軍事的勢力圏を北方で抑えるための要衝なのである。要は、第3次世界大戦となれば、ロシアが在日米軍基地を攻撃してくることが予想されるが、その最前基地を北方領土に置く可能性がある。そうなれば日本が第3次世界大戦に巻き込まれることは避けられず、1945年以来の戦場地になろう。

今日、プーチン大統領の判断力が鈍ってきているというが、ウクライナ侵攻という重大な決断を下した人間が核を使用する可能性は現実的に考えられよう。今はまさに第3次世界大戦になるかどうかの重要な時なのである。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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