今やロンドンやニューヨークと並ぶ金融都市に成長し、世界から富裕層が集まるシンガポール。東南アジアの小国がここまでの発展を遂げた秘訣は、一体どこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、シンガポールが存在感を増大させることができた要因を考察。さらに政治経済の両分野で東京を圧倒的に凌駕した同国から、日本が真摯に学ぶべき点は数多いとの見解を示しています。
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中国と合同軍事演習するシンガポールの政治力
シンガポールの存在感が増大しています。
例えば今、シンガポールで行われている国際会合「シャングリラ対話」です。「アジア安全保障会議」ともよばれています。英国国際戦略研究所(IISS)が主催しており、アジア太平洋地域の安全保障の枠組みについて協議しています。
シンガポールのシャングリラホテルで毎年行われるのでこの「シャングリラ・ダイアログ(対話)」という名前がつけられています。20年にわたり続いています。
ここには各国の国防、安全保障の担当閣僚にビジネス界のリーダーも参加します。政府間の公式な会合ではないのでフランクな意見交換がされるそうです。今年は日本から岸田首相が参加。基調講演をしてルールに基づく国際秩序などを訴えました。
こういった会議がシンガポールで開かれること自体がシンガポールの力を高めるでしょう。事務レベルで各国の国防、安全保障の事務担当官と密接な関係ができるでしょうから、それがいざというときに非公式なチャネルとして使えることは間違いありません。
シンガポールの安全保障のソフトパワーになっているでしょう。
このシャングリラ対話、主催者である英国国際戦略研究所(IISS)がアジアでの開催地として英連邦であるシンガポールを選ぶのは分かります。
しかしシンガポールは英国に唯々諾々としたがっているわけではないようです。
英国、そして米国とも密接な関係をもつシンガポールですが、その一方で中国とも密接な関係をもっています。驚いた事に中国との合同軍事演習を発表しているのです。
以下、6月9日サウスチャイナモーニングポストの記事です。
【中国とシンガポール、軍事演習を再開 防衛教育で協力へ】
中国とシンガポールの国防相はコロナの大流行時に中断していた合同軍事演習を再開すると述べ、2019年以降初の直接会談で防衛関係の深化を約束した。
この対話は、両大臣が2019年10月に署名した『防衛交流と安全保障協力に関する強化協定』の一部であった。
双方は両軍の共同活動を正式に行うことを約束し、防衛協力を「大幅に強化」することを求め、二国間演習に参加する部隊の訪問部隊協定、相互後方支援協定、二国間ホットラインの確立も盛り込んだ。
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解説
西側世界がロシアのウクライナ侵攻に憤慨して、次は中国の台湾侵攻かと神経をとがらせているタイミングでシンガポールは中国と合同軍事演習を発表しているのです。
どうみても、英国、米国の言いなりになっていません。
随分と前の話になりますが、英誌エコノミストでシンガポールに批判的な記事を読んだことがあります。リー・クワンユーは独裁者だとか、そういった記事です。
エコノミストは辛口に各国を批判していますから、その時は何とも思わなかったのですが、その後にその記事に対する訂正記事が発表されたのには心底驚きました。
英誌エコノミストにシンガポールからどのような圧力があったのでしょう。どういった形でどういった内容の圧力をかけたのか、そちらの方に強い興味を持ちました。それ以来、私のシンガポールに対する興味は続いています。
先日、シンガポール国立大学MBAの卒業生であるパキスタン人とランチをする機会があったのですが、彼によると、10年前、彼の同級生100人のうちの35人が中国人。30人がインド人だったそうです。残りが欧州、米国、日本、韓国などです。そして卒業生の9割がシンガポールで就職したそうです。
バブルの1990年ごろMITのビジネススクールで定員250名中50名が日本人留学生だった時期がありました。5人に1人が日本人と言うその数字に驚いたものです。日本の財力もあったのでしょうが、MITの「日本から学びたい、日本を取り込みたい」と言う強い意志を感じました。
シンガポール国立大学MBAが10年前に中国・インドの学生を大量にとっていた状況、意図的なのか、結果的になってしまったものなのかも含めて非常に興味深いです。
そういった事が関係するか否かわかりません。しかしいずれにしてもシンガポールはアジアのビジネス・政治の中心として東京を圧倒的に凌駕する存在になったのです。
経済的にシンガポールの一人当たりのGDPは日本の2倍以上にまでなっています。ここに記したように国際政治にも大きな存在感をもっています。
もちろん、シンガポールは都市国家ですから、日本と単純な比較はできません。しかし日本が真摯に学ぶべき点は多いです。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』6月12日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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