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24世帯に1世帯が抱える引きこもり。大規模調査で明らかになった衝撃の実態

東京都江戸川区が区民を対象にした大規模な引きこもり調査を実施しました。一定数はいると思われていましたが、想像以上の数だったことが判明。その結果から見えることをメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さんが分析しています。

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江戸川区の実態調査から浮上した「わが町」の引きこもりの衝撃

東京都江戸川区が2021年度に区民を対象にした大規模な引きこもり調査を実施し、その結果が公表された。

人口約70万人の約35万世帯のうち18万世帯を調査し、7919人(7604世帯)のひきこもり当事者がいるとの結果だった。

調査対象の24世帯に1世帯の割合にあたる。区が把握している当事者と合わせると約8000人となり、さらに調査対象の4割強が未回答であり、実数はさらに多いとみてよいだろう。

この江戸川区は私の居住地であり、どこの土地でも住めば都ではあるものの、やはり私もいいところだと思って住んでいる。その町内の隣人たちのうち何人かの引きこもりがいることを想像すると、支援者の私でも地域で何かできないかを考えてしまう。

私の立場では「改善したい」と考えている当事者と家族への対応に限定されるが、支援活動から遠い方々もわが町の隣人として、引きこもりに何らかの取組のイメージが広がるきっかけになり、次の一手が共有できればと思う。

海があって川も豊富で、実は東京都の区内では唯一動物園も水族館もある。ビルがひしめく都心に比べれば断然、空が広いのが江戸川区。インド人が多く、インド料理店も豊富で好みによってインド料理レストランも選び放題だ。

ここまでは個人の好みであるが、公的サービスで言えば住宅や子供も増えていることで小学校も新築されるものも多く、きれいな教育環境も提供できている。

そんな江戸川区のわが町内の回覧板を回す程度の規模のコミュニティに1人以上はいる、ということになる。

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報道では「都会では人間関係が希薄だから」などとのコメントもあったが、私自身は引きこもりに地方と都会等の居住地とは関係はないし、土地の良し悪しは主観的だから、判断基準にはならないと思っている。

風光明媚な地方の居住者も雑然とした繁華街の生活者でも引きこもりはいる。私が相談として自宅を訪問した中でも、大きな海を一望できる雄大な景色を前にして引きこもっていた人はいたから、やはり土地との関連性はうすい。

注目すべきはこの調査で浮かび上がったきっかけと年代別の統計である。

今回の調査は昨年7月から今年2月にかけて郵送と訪問で実施し、対象の57.2%にあたる10万3196世帯から回答を得た。年代別を見ると、40代が17.1%で最多で、20歳未満10.6%、20代11.7%、30代13.9%、50代16.6%、60代9.6%。

つまり20歳から上昇し40代でピークになり、50代から下降するのだが、それが「なくなる」のか、「あきらめるのか」は不明である。

また引きこもり状態の期間は6か月未満7.5%、6か月-1年未満8.7%、1-3年未満が28.7%、3-5年未満12.5%、5-7年未満8.4%、7-10年未満8.4%、10年以上25.7%。

1-3年が最も多いものの10年以上の長期化した方とは僅差である。きっかけは「長期に療養を要する病気」「職場になじめなかった」等。「健康」「収入・生活資金」「家族の健康」が当事者の現在の困りごととして示された。

調査後は当然、対策の立案と実行に移行するステップかと思うが、調査では、行政などへの相談を当事者の62%と家族の45%が「したことはない」と回答していたことから抜本的にこれまでの対策を見直す必要があることも突き付けられている。

社会課題の解決の道筋を描くにあたって、今回の調査で輪郭がおぼろげでも見えたのは心強いが、解決には公的機関だけでは難しく社会全体での取組が必須だ。

区は「回答した当事者らへの追加調査と、未回答の世帯への再調査を実施する方針」(東京新聞)とのことだが、量的調査をした上で再調査では質的分析も交えて、より有効な対策を取れるデータを集積してほしいと思う。

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全国的に注目されたこの調査を受けての江戸川区の取組は良くも悪くも期待されることになった。私も区民として他人事ではないと思いつつ、やはり多くの区民と抜本的に対応を考えていくことを提言したいと思う。

image by: Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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