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安倍晋三氏を自民の“最高顧問”に。岸田首相が元首相の「呪縛」を解く方法

2度に渡り政権を途中で投げ出すも、未だ党内最大派閥の会長を努め、現在も影響力を行使し続ける安倍晋三氏。今年に入ってからも、国のあり方や将来に対する自身の主張を公の場でたびたび口にしていますが、「放言」と言わざるを得ないレベルの発言が多いのも事実です。決して健全とは言い難い「安倍院政」とも呼ばれるこの状況を脱する方法はあるのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんがその解決手段として、安倍氏を1990年代なかばに廃止された自民党の最高顧問に就けるという妙案を提示。さらに安倍氏の防衛費に関する発言を取り上げるとともに、その額を5年以内に倍増させるという政府の指針の危うさを指摘しています。

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安倍さんを自民党の“最高顧問”にすればいいのではないか?:「デモくらジオ」(6月17日)から

これから政治関係が色々と忙しくなってくる時期になります。まあ、梅雨がどんなに辛くても先生方は走り回らなければならないでしょうし、その結果として参議院の勢力図がどうなるかというのは、その後の日本の政治にとって非常に大きなインパクトがあるだろうと思います。まあ、あまり今の段階で、個人的な感想で言うと、そう、ろくなインパクトがないのではないかという感じがしているのですが、このデモクラTV発足当初の心がけと言いますか、一番中心的な課題になっていたのは、一つは原発の問題だったのですが、もう一つが憲法改正という問題でした。

昨日、ご覧になった方もいらっしゃると思うのですが、「東京新聞・デモクラTV・エクストラ」という、私と東京新聞論説委員の富田光さんとで毎月1回やっている番組ですが、昨日はやはり論説委員の竹内さんという政治専門の記者さんに色々とお話を伺ったのですが、やっぱり今度の選挙もそうなんですけど、かなり気にしていた改憲勢力が3分の2云々という状況は、割と簡単にクリアされてしまっている。事実上そうなのではないかという感じがしてきています。いきなり9条がどうのこうのという話ではないにせよ、憲法に一太刀浴びせるという(私はよくそういう表現をしているのですが)、安倍さんの目指していたことが岸田内閣のもとでかなり大きく進められる可能性があるのではないかという危惧を、大勢の方が抱いているようです。私もそうです。

大変皮肉なことに、「安倍なき安倍態勢」というか、今、実質的に安倍さんの世の中という意味では完全に「安倍の世」ですね。自民党の安定した…とは言いたくないですが、自公政権のもとで、自民党の最大派閥であるところの清和研、その会長が安倍さんであって、実質上、安倍派、安倍さんの派閥のように機能していて、しかも安倍さんご自身は無役でいらっしゃいますけれど、総理大臣のもとで決定される「骨太の方針」、これのなかに何を書き込むかに関して非常に大きな力を行使されましたし、その他の非常に基本的なこと側に関して安倍さんの意向が反映されるような仕組みというか、そういう権力状況が生まれている。ということになると、総理大臣が最高権力者かどうかと言うのは一応疑問にしておいたほうが良いのではないかという状況に今、なっている。

ただ岸田さん、ある意味、人事だけはしっかり行使する人と見られていて、外務大臣の林さんというような人、安倍さんにとっては色々な意味で余り面白くない人だろうと思いますが、こういう人を重たい役に就けるとか、ということを含めて人事では譲っていないということがあるにせよ、総裁選を戦うに際して出された基本的な政策であるところの格差の是正、その具体的な表現であるところの金融資産課税、これはしっかりかなぐり捨てましたし、何より、派閥の伝統からいうと池田勇人さんから面々と続く、自民党内の比較的穏健な護憲派、同時に経済重視ということもありますが、そういう流れの中にある派閥なのですが、池田勇人さんの有名になった「所得倍増」に準えて、「令和の所得倍増」なんて言っていたのですが、それが「資産所得倍増」という、よく意味の分からないものに変わってしまっている。

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貯蓄から投資へという、もう手垢どころかどんな垢もみなくっついているような古くさい、なんというのか…。こういうのは簡単に言えばインチキと言って良いのだけれど、株価というのは全体としてはうまく支えることが出来る、日銀がカネを放り込み、あるいは年金からカネを放り込めば出来るんですけど、でも、個々の株が必ず上がり続けるとは限らないし、しばしば下落するわけですよね。そういうふうに儲からない、損をする可能性があるものについて国が、個々の家計が得をするということを政策として保証しようということでしょ。インチキじゃないですか。だって、失敗することだってあるんですよ。

日本でも90年くらいでしたか、401Kというアメリカの税法で税優遇を受ける年金類似貯蓄勧奨システムみたいな制度がアメリカにあって、日本にも導入されたのがニーサとかなんとかいうのがそれなんですが。ごく小額の話になっている。アメリカでは儲かるケースもあるのでしょうし、毎日自分の資産がいくらになっているかをチェックしたりして。とても楽しい仕掛けもあったりするのですが(笑)、それでアメリカ人の貯蓄がどうなったか、こうなったという話はトンと聞かないわけですが…。

失敗談などもたくさんあるはずです。そういうものを決め手のようにいうのはおかしな話で、おそらく投資が確実に儲かると言えるためには、投資額が1億円とか3億円とか、でないと相場を操縦するじゃないですが、相場、価格に影響を与えながら行う投資活動などというのは不可能だと思うんですよね。大きくなったらなったで、失敗したときの損害額もすごいことになる。過去、いくらでも失敗例がある話じゃないですか。株式投資なんて。そんなものにカツカツの暮らしをしている多くの国民の家計を委ねるなんて、絶対にやってはならないことだと思います。だから役に立たないだけでなく、有害なことになる可能性があると。それを日銀と年金基金が支えているという、これ以上なくいくらいに危なっかしい構図がいったん崩れたときには、ガラガラと色々なものが崩れ落ちる瞬間ですよね。是非、やめていただきたいと思っているのですが。

昨日の番組をご覧いただいた方には、そういえばそんな話があったなと思い当たるところがあると思うのですが、安倍さんの政治が強く残っていて、ということですよね。「安倍の世」なんて言い方を先ほどはしましたが。で、ちょっと冗談めかして、安倍さんを自民党の最高顧問にすればいいのではないかと言いました。半分冗談ですが、実は最高顧問の制度は80年代までで、その後無くなっているらしいですね。

で、1980年に自民党の総裁、副総裁、衆参両院の議長、こういうものの経験者を有資格者というグループに入れて、その中から自民党総裁が委嘱するかたちで就任した方が大勢いた。岸信介さんとか三木武夫、福田赳夫、二階堂進なども入っているんですね。そういう時代があったのですが、1990年代の中頃に廃止をされたということで、ただ、その最高顧問になるかないか、有資格者なら全員なるわけではない。自民党総裁がお願いしますといってなる形。そうなると「一上がり」感が出てくる。過去の人ですよという。まれにはその後に力を発揮するすごい人もいたわけですが。これ、例えばその制度を復活させて、岸田さんが安倍さんの事務所に行っても良いですし、呼びつけてもいいと思いますか、安倍先生是非最高顧問になってくださいと。最高顧問になっても過去の人にするわけではありませんといいつつ、最高顧問にしておく。

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ちょっと考えていただきたいのは、この間安倍さんが核シェアリングの議論をした方が良いのではないかとか、日銀は政府の子会社だとか、様々言いたい放題言ってますよね。防衛費は6兆円の後半だなんて言ったりもしている。そういうことをものすごく気軽に、かつ元気よく言えているのは、責任が伴っていないからではないのか。実際にはそれによって影響力を与えながら責任は伴わない形で言っているので。これを最高顧問である安倍さんが「防衛費は6兆円の後半だね」と言ったとすると、これは今回以上に大きなニュースになると思うんですね。で、安倍さんも言いにくくなるのではないかと思うんです。そのあたりは是非ご検討いただきたいと思うのですが。まあ、半分から7割くらい冗談ですが。もっと冗談だろ、という味方もあるかわかりませんが。

それから今、防衛費の話が出ましたけれど、例の2%とは何なのかについてはちゃんと認識しておいた方が良くて、昨日の竹内さんの説明で、これ、NATOの諸国は2%を要求されていると。NATOに入る以上、防衛費は2%以上でないと困ると。なぜならNATOは軍事同盟であり、どの国が攻撃された場合でも、すべての加盟国が連帯して対処するという、かなりがんじがらめの軍事同盟ですね。だからこそかつてはソビエト、今はロシアの脅威に対抗できるということなのだと思います。そういうところで言われている2%、といってもすべての国が2%以上になっているわけではないのですが、ドイツなんか1.5%くらいで。

今、ショルツさんという、存在感の若干薄いドイツの首相がおられますけれど、議会に対して2%に増額する提案をしている段階にある。で、軍事費を見ると、アメリカは世界で一番大きなGDPがあり、なおかつ、それに対する比率で3.6%も軍事に使っているとんでもない軍事国家だということですよね。韓国もでかくて2.8、イギリスが2.3、フランスが2.0、ドイツが1.5という、こんな感じなんですね。ドイツはロシアとの関係もNATOのなかでは一番大きくて、ドイツとロシアで合同演習などもやっていた間柄。それが、今度のウクライナの事態を受けて変わろうとしていることがニュースになっている。

それでは、日本はNATO並みになるために2%にしようということではなくて、これは違うんですよ。2%の根拠はそこではなく、トランプ政権の時代から言われていること。つまりアメリカの要求なんですよ、元々。元々アメリカの要求。2年前の9月。国防長官はエスパーさんという人でしたが、この方が日本を含む同盟国に対して国防費をGDP費で少なくとも2%に増やしてくれと、公式に表明している。その後も何度も言われていると思います。理由は中国やロシアに対抗するためで、相互の安全と共通の価値を守るためだということを訴えている。

これ、トランプ時代の内に籠もるというか、色々なものから、TPPから、パリ協定からも抜ける、イラン核合意もやめてしまうという挙にでたじゃないですか。その一環として、日本は「てめえの防衛はてめえでやれよ」ということですね。日米安保条約を結んでいながらよく言うよなという感じがしますが。その時代の話。そのことなんですね。ウクライナ侵攻という危機に際して、都合良く持ち出しているという感じ。だから2%に5年後にはするという話ですが、結局アメリカの兵器をまた買わされることになるという気がしないでもないですね。

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で、これ、とにかくすごい話。2%はそういう軍事的な緊張に対して何を備えていくかという具体的な思考から生まれたことではなくて、日米関係というやや抽象的な関係の中で防衛費を増やせという圧力とともに出てきたことが「2%」なんですね。これが日本にとっては5兆4,000億円が10兆8,000億円になるという話ですから。仮にそうなったら世界第3位の軍事大国になってしまいます。大変乱暴な議論だと思うんですね。アメリカに対して2%にしますということを自民党と政権は内々に納得している、あるいは約束でもしちゃっているのではないかという心配がありますね。トランプさんの時に決まった御商売でいうと、例のF35を100機でしたっけ。おんなじ飛行機を1兆円分も買うんですよ。馬鹿っぽくないですか。プラモデルではないんですよ。それに加えてイージスアショアでしたっけ。4,000億円が2カ所。ロフテッド軌道という、北朝鮮が既に獲得した技術、野球で言えば「変化球」ですよね。これには対応できない古いシステムに8,000億円も払おうとしていたのを、結局、なんとかやめられた。良かったねと息をつきそうになったのですが、今度はそれを乗せたイージス艦を作ろうという話になって。もしかしたらさらにお金が掛かるのではないかと思っています。とんでもない金額を使わされているわけですね。

さらに軍事予算の話で言えば、有償援助の形で日本が値段を決められない問題、それから後年度負担と言う形で、丸井のクレジットじゃないですが、5年のローンになっていたりする。5年先の予算まで縛られているということですよ。さらに言えばそうやって増やす5兆4,000億円は何でまかなうのかといえば、赤字国債でまかなっておきましょうという話。これ、安倍さんが言っているのですが、安倍さんだけでなくて、なんと今、立憲民主党?いや国民民主党か…。めでたく国民民主党に移られた前原元外務大臣、前原さんも言っていますよ、赤字国債だと。なんか軽い感じで言っていて、堪らないよね。それってさ、破綻の道でしょう。ちょっと恐ろしいことになっているなと。これ、防衛費という一つの費目の問題ではないですよね。全然違う、質の違う問題だと。それをガンガンやろうとしている勢力が圧倒的な多数を国会内で持っている状況で、しかもそのような危険なものを抱え込みながら、自民党政権全体の印象は、久しぶりのリベラルになんとなくホンワカしてしまっている。久しぶりのリベラルな雰囲気を漂わせながら、その中ではものすごく危険なことが進行しているという。

ああ、アブねえ、という状況ではないですかね。

しかも、うまく出来ているというと変ですが、ウクライナ危機への対応の仕方、基本的には距離が遠いところでありますし、ギリギリのところでこの問題を突きつけられているのとは違う、NATO諸国とは違いますよね、日本は。何を言っても言い方向に解釈される状況で、岸田内閣はウクライナの可哀想な人たちも助けているし、という状況で支持率が上がっていくと、これは大変なことになるかもしれないですよ。大変だと言っていられないくらい大変なことかもしれなせん。

(『uttiiジャーナル』2022年6月19日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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