【中島聡×けんすう】IT黎明期以来のワクワク感。世界は「Web3.0」でどこまで変わるのか?

 

「Web3.0」で起こる「ゲームチェンジ」

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中島:使う人たちが使いたいかどうかを設計する部分が難しいんです。この話を今日はしようと思ってたんですけど「スマートコントラクト」でプログラムを書いて世に出すということは、プログラミングをしているわけで、プログラマーは当然だけど、その後ろにいろんな人がいるじゃないですか。「NFT」を買う人とか。その人たちにインセンティブを上手に与えて、その「スマートコントラクト」上のアプリケーションを利用してもらう。別にゲームでもいいし、ビジネスソフトでもいいけど、上手くいくように設計しなきゃいけないんです。ということは「スマートコントラクト」を通して、人々をプログラミングしてるんです。ここがものすごく面白くて、ここを上手にやれば、本当に頭脳ひとつですごいことができます。というのが、僕にとっての「Web3.0」。

内田:なんだかまだよくわからないですが、中島さんの目がキラキラしてることだけはわかりました(笑)。

けんすう:例えば、食べログって、ユーザーのレビューがないと食べログとして成り立たないじゃないですか。でも「Web2.0」時代は、食べログというサービスを作ってサーバーに置いて、お金をかけながら、運営するっていうのがあります。レビューをする人も、別にレビューをしたらお金が貰えるわけじゃないので、一生懸命、自己顕示欲とか色んなものを刺激させながら、なんとか投稿してもらおうっていうのを考える。食べログが頑張って、成長していくと、儲かるのは基本的に食べログだけなんです。投稿した人は儲からない。

内田:そうですね。投稿するだけですもんね。

けんすう:それが「Web2.0」の基本で、FacebookもTwitterもInstagramも、書いているのはユーザーさんだけど、収益を上げているのは会社という仕組みだったのが「web3.0」では、どちらかというと、何か投稿したら、1ドル分ぐらいの何かが貰えるとか、それがたくさん読まれたら10ドルになるかも、みたいな感じで、インセンティブをプログラムで設計できるので、先ほど中島さんが仰られたような、人間の動きも考えてプログラミングしないと、ちょっとでもずれてたら、めちゃくちゃお客さんに、お金が渡っちゃって、変な事になるとか、逆にお金がもらえないからユーザーが動かない、みたいなことにもなるので、最初からそれを設定しないとダメみたいな違いがあるかな。そういう風に把握してます。

Web3.0のビジネスデザインを語る

内田:そうすると、自分が作りたいものを作るだけじゃなくて、その先のその先ぐらいまでの人たちのことも考えて、プログラミングをしていく必要があるっていうことなんですね。

中島:何かしたいことがあるじゃないですか。そのしたいことをするには、みんなに手伝ってもらわなきゃいけない、ということは、その人たちにインセンティブを与えないといけない。

内田:例えるなら、食べログに書き込んでもらう形ってことですね。

中島:今、僕が計画しているのは「NFT」ってほとんど画像が「オフチェーン」と言って「ブロックチェーン」上に無いんです。というのも「ブロックチェーン」上に画像を置くと結構お金がかかるので、みんなやりたがらない。有名な「Boat Wake」とかも、実は全部「ブロックチェーン」の外にあるんです。

内田:「ブロックチェーン」にはないんですね。

中島:それをベクトルデータのようなIllustratorで書くものは、結構「ブロックチェーン」に上げられることは分かってきたので、じゃあ大量のベクトルデータを上げようと計画を立ててるんです。でも、僕は今あげたい200個ぐらいのベクトルデータを全部上げるのに、多分300万~400万円ぐらいかかるけど、僕のお金を出したくないなら、じゃあそれをどうやってインセンティブを与えて、みんなにやってもらうかっていうのを、今デザインしているんです。面白いでしょ。

けんすう:面白い!

内田:けんすうさん面白さの解説を。

けんすう:難しいですね…株式会社の発明って、投資をする人と、実行する人の分離が大きくて、それ自体はすごい仕組みで、今、僕らの身の回りにあるものって、ほとんど株式会社が作ってるじゃないですか。ですけど、株式会社に登場するのは、基本的に株主と経営者と従業員ぐらいなので、ここで利益を配分するっていう発想しか、基本的には無いんです。でも、インターネットの世界では、食べログのレビューを投稿するとか、通報するとか、いいね押すとか、そこでお客さんも一緒に働いているにもかかわらず、株式会社の仕組みではお客さんをまかなえなかったんです。お客さんに株を配るわけにもいかないし。でも、ようやく「Web3.0」でできるようになったんです。先ほど中島さんが仰られたような、リスクを投資家とか、経営陣が負うことなく、ユーザーさんと一緒にそれを作って、利益も配分できる。今までできなかったことができるのがポイントかなと思います。

内田:今の話を聞くと、会社の仕組みは全然存在意義が無くなってしまいますね。

中島:だから今回は会社なしでやるんです。

内田:個人個人で色々作っていく。

中島:だから本当に面白い物さえ作れば、個人で大きなことができる。

けんすう:多分ここ10年ぐらいで出たプロダクトで一番大きいのって、ビットコインとかだと思うんですけど、ビットコインって会社でもないし、法人はないじゃないですか。そういう感じの事は一応できるっていう実証はされているっていうことですね。

中島:ビットコインに関しては、僕と同じファーストネームのサトシさんを、僕は本当に尊敬してるんです。あれはすごいんです。あの人が書いたプログラムに応じて、世界で本当にすごい額のお金が動いている。しかも、マイナーっていう人たちは、彼が作ったプログラムに支配されているんです。そこにインセンティブができているので、本当にプログラムが人の行動を変えていて、そこで経済が成立しちゃっているのがすごいなと思って、だから、そういうものをやっぱり作りたいです。

内田:ビットコインでも、現在のようになっていくことを考えていた、だってあれができたのもけっこう前ですよね?

中島:でも、僕が思っているのは、彼はゲーム理論の専門家だということです。多分ドクターをちゃんと持ってる。本気で暗号だけじゃなくて、ゲーム理論も研究して、人はどういうインセンティブをあげるとどう動くっていうのを、ちゃんと研究した人だからできたんだと思います。分散台帳というのをどうやって作ったらいいかって、今までエンジニアの人たちが考えてきたけど、全然うまくいかなかったんです。でも、彼がポンと答えたんですけど、そのポンって答えるところに使ったのは、インセンティブメカニズムで、要はゲーム理論の応用が入ってるんです。なので、これからは広がっていくのはそこかなと思います。

けんすう:そこがすごい。

内田:例えば具体的に、皆さんがイメージしやすい「こんなことができるよね」っていうのはありますか?そういうイメージ、身近なものを私達がそれを活用するとして。

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