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健康診断ではわからない糖尿病予備群「食後高血糖」こそが恐い訳

通常の健康診断で糖尿病に関わる項目は、空腹時血糖値とHbA1cの2つで、これが正常値の範囲であれば安心するのが普通です。しかし、これらの数値ではわからない「食後高血糖(IGT)」こそが糖尿病予備群の中でも恐ろしいと伝えるのは、メルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』著者で、糖質制限食の提唱者としても知られる医師の江部康二先生。山形県舟形町で実施された大規模研究の結果を示しながら、「食後高血糖(IGT)」では心血管死や合併症のリスクが高まると注意を促しています。

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食後高血糖(IGT)は、総死亡と心血管死のリスク

糖質を食べると食後血糖値は必ず上昇します。しかし、インスリン作用が正常なら、血糖値の上昇はコントロールされるので食後高血糖にはなりません。

この食後高血糖という言葉は、結構よく使用します。では、正式な「食後高血糖」の定義はご存知でしょうか?シンプルに、食後2時間血糖値が140mg/dl以上あれば、食後高血糖です。

国際糖尿病連合によれば、食後1~2時間の血糖値が160mg/dl未満が目標です。食後2時間血糖値が、200mg/dlを超えたら、「糖尿病型」ですので、具体的には「食後高血糖」とは、食後2時間血糖値が、140~199mg/dlの間の数値をさすこととなります。

正常人では、若い人は、食後血糖値が140mg/dLを超えることはほとんどありません。しかし、正常人でも、40~50歳になってくると、食後1時間血糖値が160~180mg/dlを超えてくることがあります。そして、食後2~3時間以内に食事の前の値に戻ります。

食後1時間血糖値が180mg/dlを超えていると、食後2時間血糖値が140mg/dl未満で正常でも、将来糖尿病になりやすいことがわかっています。

糖尿病前段階の食後高血糖が何故問題になるかというと、心筋梗塞などの合併症リスクが結構あるからです。日本人を対象に実施された大規模研究「舟形町コホート」でも、食後血糖値が高めの耐糖能異常(IGT)は心血管死および総死亡の危険因子であることが示されました。

すなわち「食後高血糖(糖尿病予備群・IGT)」は糖尿病前段階ですが、死亡リスクが上昇することが日本人の研究で確認されたということです。一方、空腹時血糖値が110~125mg/dlで食後高血糖がないタイプ(IFG)は総死亡と心血管死について、正常型群と優位差がありませんでした。
*IFG:空腹時血糖値やや高値、110~125mg/dl
*IGT:食後高血糖、食後2時間血糖値が140~199mg/dl

このように同じ、境界型の糖尿病予備群でも、「食後高血糖(IGT)」と「空腹時血糖障害(IFG)」では、死亡リスクが全く異なることが、舟形町研究で明らかとなりました。げに「食後高血糖(IGT)」、恐るべしです。

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なお、通常の健康診断では、糖尿病に関しては、空腹時血糖値とHbA1cしか検査しません。
(1)空腹時血糖値正常、HbA1c正常、食後高血糖なし → 質のいいHbA1c
(2)空腹時血糖値正常、HbA1c正常、食後高血糖あり → 質の悪いHbA1c

現実には、(1)と(2)のパターンがあります。(2)の質の悪いHbA1cパターンの場合は、「食後高血糖」と「空腹時低血糖」の平均値が示されており、「平均血糖変動幅増大」もあるので合併症リスクが大きいです。従来の糖尿病食を食べて、インスリンやSU剤で血糖を下げようとした場合、(2)のパターンが多いです。

現実に日本では、糖尿病合併症(透析・切断・失明)は減少していません。毎年新たに16000人以上の透析、3000人以上の足切断、3000人以上の失明が発生しています。

一方、(1)のパターンは、スーパー糖質制限食で、薬なしで、血糖コントロール良好を目指した場合です。こちらは合併症リスクがありません。(2)のパターンの場合は、食後高血糖はほぼ確実に見逃すこととなりますので、合併症を防ぐことは困難です。

舟形町研究

舟形町は山形県の東北部に位置し(参考図1)、農業を主な産業としています。人口移動が少なくコホート研究を実施するのに適していました。1990年から1992年にかけて、脳血管疾患などで障害のある人たち344人を除く40歳以上の舟形町の全住民を75g経口ブドウ糖負荷試験(75g-OGTT)の対象としました。

2,534名(対象者の74.5%)がOGTT検査を受け、これらの人々をコホートの対象者としました。既に糖尿病と判明していた117名はOGTTの対象とはしませんでしたが、コホートには組み入れました。

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image by: Shutterstock.com

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(財)高雄病院および(社)日本糖質制限医療推進協会 理事長。内科医。漢方医。京都大学医学部卒、同大胸部疾患研究所等を経て、1978年より医局長として高雄病院勤務。2000年理事長就任。高雄病院での豊富な症例をもとに、糖尿病治療、メタボ対策としての糖質制限食療法の体系を確立。自らも二型糖尿病であるために実践し、薬に頼らない進行防止、合併症予防に成功している。

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【著者】 江部康二 【月額】 ¥660/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火・金曜日

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