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Japanese food tonkatsu taken in the studio

メニューが“出世する”大衆洋食店。「とんかつ380円」60年以上愛される秘密とは

60年以上地元の人に愛される広島の大衆洋食店。そこには、客の人生とともに成長できるメニューが用意されていました。今回、メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』の中で、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんがその洋食店が愛され続ける秘密を語っています。

メニューが出世する大衆洋食店。お客さまの人生とともに

サービストンカツ 380円。ゆでキャベツ・ポテトサラダ・ライスつき。1日150~200個出るという、このお店の看板商品です。

広島市中区にあるこの洋食店は、創業66年の老舗。地元では知らない人はいない、地域に根づいたお店です。なぜ、これほどまで安く提供しているのでしょうか。

まずは、精肉店が経営していることで、安く提供できるということ。だとしても、安過ぎるのですが、一番の理由は、“創業者の想い”です。

周辺に住む、お金の無い若い人や学生さんたちに、美味しいものを食べさせてあげたいと考えたことから、始まりました。

トンカツが破格の値段で食べられるとあって、大評判となり、以来、繁盛し続けています。1~3階まである客席は、356席。昼時にはいつも満杯になります。

380円のトンカツと聞くと、学生相手の安い食堂をイメージするかもしれませんが、洋食店らしいメニューも揃った、正統派のお店です。

トンカツ、ビフカツ、ステーキ、タンシチュー、ポークチャップ、カレーライス、ハヤシライス、オムライスなども楽しめます。

ここのメニューには、面白い特徴があります。うなぎの「松竹梅」のように、ランクがあるのです。

「サービスランチ」→「並ランチ」→「上ランチ」→「特ランチ」。

「サービスステーキ」→「上ステーキ」→「スペシャルステーキ」。

「ビーフカツレツ」→「上ビーフカツレツ」。

「タンシチュー」→「上タンシチュー」。

「並ロース寿き焼き」→「ロース寿き焼き」→「特ロース寿き焼き」→「特上ロース寿き焼き」。

ここまでバリエーションを作っているのは、お客さまの懐具合やその日の気分で選ぶことができるようにするためです。

また、サービストンカツとも関係しています。お金の無い時代にサービストンカツを食べていた人が、隣で食べているすき焼きを見て、憧れ、働くようになったら、稼げるようになったら食べようと、一所懸命に頑張るのです。

ランクの上位にあるメニューを目指すのです。こういう人は、長い間通うようになります。自身の出世とともに、より上のランクのものを食べて、頑張りを確認しているのです。

若い頃の想い出として、美味しいサービストンカツを懐かしむ人もたくさんいます。地元を離れた人も、帰省のたびに来店します。地域の人に愛され続けているのです。

安いだけで愛されているのではありません。66年続いているのは、美味しさがあってのこと。味を追求し続けてきたからこそ、多くのファンがやって来るのです。精肉店が経営しているので、肉は保証されています。

そして、他店ではまず真似のできないことをやっているからです。トンカツ・ビフカツなどを揚げる油は、精肉で出た牛の脂を精製したものを使っています。

さらに、ほとんどのメニューに掛けられている自家製ソースは、精肉で出た肉の切れ端や骨を煮込んで、作っています。

このソースが、多くのファンを引き寄せているのです。デミグラスだと言いますが、かなり黄色く、このお店ならではだと思います。

66年も愛され続けるのは、簡単ではありません。人に愛され、地域に愛され、美味しいものを提供し続けてきました。その時の流れとともに、地元の人の人生もが絡んでいたのです。

食べたいものを目標に頑張った人たちが、人生とともにそこにあるお店に集まってきたのです。これからも、たくさんの人の人生を見届けて欲しいと思います。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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