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夜に一人で歩けない。女性の安全が担保されない韓国社会の奥深い闇

先日、韓国で女性にとって痛ましい事件が起きました。韓国社会がいかに女性被害者にとって厳しいか知らしめる結果となってしまったこの事件について、韓国在住歴30年を超える日本人著者がメルマガ『キムチパワー』の中で詳しく語っています。

女性が安心できない社会

7月15日未明、仁川(インチョン)にある仁荷(イナ)大学キャンパスで同大学1年の男が、同大同学年の女性(友達)に性的暴行を加えた後、この女性をキャンパス内の5階建て単科大学の建物3階から墜落させ死亡させるという事件が起こった。

地面に墜落した女性は、1時間30分ほど放置され、同日午前3時49分に通行人によって発見され病院に運ばれたが、3時間後に死亡した。

警察は1年生の男が女性を建物から故意に墜落させた可能性を排除せずに捜査している(まだ結論は出ていない)。男も酒は飲んでいたが女性をべろんべんになるくらい酔わせて建物の屋上に登っていったことがわかっている。

あってはならないことだった。やっと20歳、大学1年生。夏休み中、季節学期の試験を終えた日の夜だった。

同級生に性的暴行を受けた後、建物の3階から墜落して死亡した。最も安全でなければならない学校で起きたことだった。彼女は墜落後1時間以上放置され通行人に発見された。

発見当時は、細くても息があった。墜落直後、同級生の男が現場を逃げずにすぐ119に通報していたら助けられる生命だった。受験勉強で疲れた高校3年生を終えてやっと大学生活の楽しさを感じていたはずだ

しかし、ロマンを満喫しなければならないキャンパスで、彼女はこのように去ってしまった。まともに咲くこともできずに捨てられた20歳の死の前で、大人として社会構成員の一人として、やるせない(惨憺たる)心境だ。

今回の事件は、韓国社会が一人に加えられる暴力の総集合という点で心が痛い。加害学生は性犯罪を犯し、被害者を死に至らしめた。性暴行前後に不法撮影を試み、被害者が墜落した後に救助するどころか証拠隠滅を試みた。

マスコミは彼女の死を扇情的な修飾語として報道し、彼女の死には哀悼に劣らず悪性コメントが少なくなかった。

被害者の容貌を知り、身元を暴く2次加害まで起きた。強姦、致死、不法撮影、悪質コメント、2次加害という総体的な暴力だ。非正常な加害者の突発行動なのに、なぜ女性全体に対する暴力と規定して男女を引き離すのかという話まで出ている。

果たしてそうだろうか。彼女が男子生徒だったとしても、このようなことが起きたのだろうか。私たちは依然として女性が安全でない社会に住んでいる。

2016年の「江南駅無差別殺人事件」を覚えている。ソウル江南繁華街の居酒屋の男女共用トイレで犯人は先に来た男数人を送り出し、女性が入ってくると凶器を振り回した。犠牲者はわずか23歳だった。

「女だから死んだ」「私がその時間にそこにいなくて偶然生き残った」江南駅に集まって追慕していた女性たちがこのように叫んだ理由だ。

あれから6年経ったが、女性の安全はあまり改善されていない。今も真っ暗な夜の路地を女性一人で歩くのが怖い。

女性一人で住む家だということが知られるか恐ろしい。夜中にタクシーを一人で乗ることさえ、時には不安だ。デート暴力、ストーキングなどによる殺人事件から自由ではない。実在的脅威である。

国連麻薬犯罪事務所が世界殺人犯罪を分析した2019年の資料によると、韓国は女性被害者の割合が男性より高い数少ない国の一つだ。

女性が安全な社会を作るためには、安全を脅かす犯罪に厳重な処罰をしなければならない。性犯罪を犯しては職業も名誉も失い、事実上人生が終わりかねないという認識が社会に根付かなければならない。

性犯罪に対する減刑事由が多すぎるのも問題だ。合意、反省文、寄付、奉仕、臓器寄贈誓約、婚姻、高齢など情状酌量の理由も多様だ。

特に被害者との合意は最大の減刑要素だが、合意に至らず、「試み」だけでも情状酌量の対象になる。そのために合意を促し被害者を苦しめる2次加害が起きたりもする。

「ワニの涙(=偽りの涙または偽善的な行為を指す)」のような反省文はオンラインでわずか数千ウォンで手に入れることができる。

今日も性犯罪者たちは被害者に許しを請う代わりに判事に反省文を書く。臓器提供誓約をして減刑を受けた後、撤回することもある。

最近、女性の身体を不法撮影した公務員が執行猶予を言い渡された。新型コロナウイルス感染症の拡散による激務でストレスを解消できなくて起きたことだという理由が情状酌量の事由となった。

女性を強制わいせつした軍人は、大学に合格し、気分の良い状態で酒を飲んでいたために起きたことが酌量され、減刑となった。

実に虚しく荒唐無稽なことだ。だから判事たちが性犯罪を量産するという話まで出ている。

オンライン上に性犯罪専門減刑チップを伝授する一打講師(一等級講師)まで登場するほどだ。性犯罪「小細工減刑」は被害女性にもう一度暴力を加えることだ。

最高裁の量刑委員会は最近、性犯罪修正量刑基準を議決し、10月から適用することにした。今後は合意と関係なく2次加害をしたとすれば加重処罰し、「高齢」は執行猶予の情状酌量事由から削除する。

親族関係による強姦、住居侵入を伴う強姦などに対する勧告刑量が最大懲役15年に高まる。

軽い判決に対する批判が多かったが、今からでも少し変わるか見守っていこう。女性の安全が担保されない社会で発生した20歳の大学生の死が無駄にならないことを願う。事件の早急な真相究明を待ちつつ。(国民日報ベース)

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年7月29日号)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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