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プーチンがキーウ再侵攻の準備も。ベラルーシ巻き込み戦況打開を図るロシア

ウクライナ東部及び南部の完全制圧に向け一時は圧倒的優位が伝えられていたロシア軍ですが、ここに来てウクライナ軍の巻き返しが激しさを増しているようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、欧米供与の武器により大きく変わったウクライナ紛争の戦況を紹介。さらにプーチン大統領が存在する限り戦争が拡大する可能性は否定できないとし、限定的核戦争の危機も指摘しています。

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ウ軍優勢に逆転した

ウクライナ情勢が大きく動き始めた。ハイマースにより、ロ軍の弾薬庫、指揮所、兵器保管庫など100ケ所以上が破壊されて、ロ軍の砲撃が止まり、ウ軍が反撃に出ている。今後を検討しよう。

ウクライナ東部での戦闘では、ロ軍は優勢ではなくなり、一部でウ軍に攻撃される事態になっている。勿論、大きな前進もない。

しかし、スラビアンスクの南に位置するバクムットには、ロシアの傭兵会社ワグナー部隊の攻撃で、火力発電所や小さな街を取られている。

ウ軍は、スラビアンスクの北に位置するイジューム方面では、パンカやヤレミカなどに進撃して、その近くの森に陣地を作り、ロ軍部隊を待ち伏せ攻撃している。イジューム方面ではロ軍は、ハイマースで弾薬庫、司令部、防空システム、駅などを破壊されて、補給ができない状況になり、ここに展開していた大隊戦術群(BTG)を南部やバクムット、ベラルーシに転戦させたようであるが、ウ軍も守備が薄いところをロ軍に攻撃されて取られているので、油断はできないようだ。

しかし、鉄道の拠点クビャンスクやボルチャンスクなどへの砲撃で鉄道による補給ができなくなっているようだ。このため、こちらからのスラビアンスク攻撃をせずに、スラビアンスクの東や南に位置するバクムットやリヒチャンスクからの攻撃に変化している。

しかし、この方面でもほとんど前進できていない。ワグナーが展開しているバクムットの一部で前進できているが、ほとんどでは攻撃を撃退されている。しかし、ワグナーの司令官の一人で、シリア、リビア、ドンバスと転戦してきたセルゲイ・コノノフが東部戦線で戦死したという。ワグナーも勇敢な攻撃をするので、戦死者が増えている。

東部は、ウ軍の偵察隊がロ軍の守備が甘い地域を見つけて、そこを攻撃しているようである。全般的には、東部は膠着した状況だ。

ドネツクでは、ロ軍の捕虜施設をハイマースで砲撃して、ウ軍捕虜が50人が死亡したが、誤爆のようである。このようなこともある。しかし、ゼレンスキー大統領はロシアによる攻撃としたので、その可能性もあるのかもだ。

ドネツク方面をハイマースで多くの個所を攻撃しているが、ロ軍は対応策を取れないので、このような行為で止めたいのかもしれない。今は、どちらがか分からない。

キーウ方面ではM270MLRSを投入して、ロシア領内ブリャンスク州のクリモビ基地を砲撃した。ベラルーシとの国境付近にロ軍とベラルーシ軍がウクライナのチェルニーヒウ州に侵攻の準備をしているので、その対応策であろう。

ロ軍の不利な状況を打開するために、再度、キーウへ侵攻を準備しているようである。ベラルーシ軍も巻き込むようで、戦線が拡大することになる。ルカシェンコ大統領もプーチンに逆らえなかったようだ。

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南部ではウ軍は、反撃に出ている。ロ軍の防空システムを破壊したことで、ウ軍の戦闘機やドローンが自由に行動できるようになり、ウ軍優勢の状況になっている。これに対して、ロ軍は東部のイジューム方面から3BTGを南部に送り、南部の防衛を固めたいようである。ロ軍は現状10-13BTGをヘルソン州に展開しているが、包囲された1BTGがウ軍に既に降伏している。

また、南部ヘルソンのドニエプル川に架かるアントノフスキー橋を複数回砲撃して破壊、車両が通行できなくなった。もう1つ、ヘルソンに通じるインフレッツ川にかかるダリフスキー橋も破壊、その横にある鉄道橋も破壊して、ヘルソン市へのロ軍の補給ができにくくなっている。

このため、ロ軍は、インフレッツ川に船橋を複数設置したが、ドニエプル川の川幅が広く、船橋が構築できないので、フェリーで補給を行うようだが、ヘルソン市への十分な補給ができない。

そして、ヘルソン市近郊でウ軍は、ロ軍の防衛線を突破して市街地から10km地点まで到達したが、ここからヘルソンの市内の検問所や弾薬庫、兵舎などをパルチザンや砲撃、ドローンで破壊して、市内ロ軍を弾薬欠乏状態にするようである。市内ではパルチザンが市民にヘルソン市内から退避するようにと宣伝している。

ヘルソン市内への攻撃をいつ、ウ軍が始めてもおかしくない状況である。しかし、このこともあって、ウ軍も情報統制が厳しく、事態はよくわからない。

ヘルソン州の中部ロゾベでも、ウ軍はインフレッツ川に船橋を掛け、ロシア占領地に橋頭保を築き、その地に大量の部隊を展開しているが、この部隊でどうするのかも情報統制で分からない。どちらにしても、ヘルソン州全体で攻撃をウ軍は行うようである。

ザポリージャ方面でも、ウ軍が前進しているが、ロ軍の攻撃はまだない。このため、徐々に前進中である。この方面のロ軍はいないのであろうか、非常に手薄になっている。このままであると、メルトポリまで進軍できる可能性がある。そして、マリウポリである。

全体的にウ軍が押している状態であり、このため、ラブロフ外相は、ウクライナ全土に攻撃を拡大するというし、事実、ベラルーシ国境に多数のロ軍とベラルーシ軍がいる。

そして、ウクライナ全体を解放すると言うし、キーウ近郊や中部の都市を巡航ミサイルで攻撃して、市民を多数死亡させている。しかし、ウ軍の軍事施設などに攻撃できていない。

徐々にロ軍の巡航ミサイルの迎撃もできてきている。今後米国から新規の防空システムも届き、防空性能も上がるはずである。

一方、ロシアのグロナス位置衛星は、2006年以降更新できずに、位置精度がでないし、ロシアの精密な偵察衛星もないのであろう。ウクライナ国内の軍事施設などが見えないようだ。ロ軍は、模型飛行機レベルのオルラン10無人機しかないが、イランからドローンを供給されるようであり、このドローンがどのような物か、そのうちわかるのであろう。

また、ロシアは民間航空機の修理もイランで行うことで合意した。イランがロシア経済制裁の抜け道になってきた。イランの武器も多数、ロシアに提供されるのであろう。イランとロシアは本格的な同盟関係になったようである。

しかし、現状では、ロ軍戦死者数は4万人を超え、ロ軍の限界にきている。正規軍15万人、予備兵9万人、地方軍4万人、チェチェン軍1万人で、総兵力は30万人程度であり、負傷兵などを含めると12万から16万人程度が既に戦線離脱している。軍総兵力の約半分である。これでは兵員不足になる。民間軍事会社の手も借りるしかない。

このため、ロ軍は、東部か南部かの選択をするべき時期に来たようである。しかし、ここでキーウ方面に戦線拡大を行う可能性が出てきた。ロ軍の負けが見えてきたので、それを逆転させる手に出てきたようである。

キーウで新政権を樹立させて、停戦させたいのであろう。政権内の親ロ派がロ軍侵攻と同時にクーデターを行うのであろうか?疑問。

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そして、攻勢にあるウ軍には、フェニックスゴーストが580機も供与される。このドローンの使用方法が不明であるが、5,000キロ上空を24時間以上も偵察できるドローンをウクライナの副首相が西側諸国に供与を要請していたが、この要請に米国は応えたようである。

ということで、「見えない不死身」という名前が示すように、偵察ドローンであり、ロ軍のレーダーでも捕捉できないのであろう。このドローンの目的はハイマースの標的の発見であり、米衛星で見つけた候補を低い位置で長時間監視して、標的かどうかを見極めるためのドローンである。このドローンで発見しハイマースやM270MLRSで叩くことで、ウ軍有利になってきたのだ。

対抗処置としては、ロ軍は偽装工作をする必要があるが、その工作ができていないようであり、現時点では正確に目標を見極めることができている。

このようにロ軍が負け始めたことで、プーチンは、欧州への天然ガスの供給を80%も削減して、ドイツやイタリアなどでエネルギー不足を起こし、ロシアへの譲歩で停戦を引き出したいようだ。欧州はロシア産天然ガスに55%も依存していたので、この大部分がなくなる。

ドイツは今まで、ロシアからの天然ガス供給維持のために、ウ軍への武器供与を控えていたが、ロシアが天然ガス供給を大部分止めたことで、一気に武器供与を積極的に行い始めた。

ロシアは、現状での停戦を主張しているが、ウクライナは2月24日以前の状態での停戦と、停戦条件で折り合わない。ウクライナを停戦に持ち込ませるには、ウ軍へ最新鋭の武器を供与し、自国領土を取り返すことが重要になってきた。積極的な武器供与で、短期に戦争を終わらせる方向に欧米諸国は一致して行動を開始したようである。

7月29日の米ロ外相会談で、ブリンケン米国務長官は、ロシアで拘束されている米国人の解放や、ウクライナ産穀物の海上輸送再開に向けた合意の履行を要求した。また、ロ側がウクライナでの支配地域併合の「計画を進めれば、さらなる重大な代償を払うことになる」と警告した。この代償というのが、ATACMSでの攻撃なのであろうとみる。

ということで、米国も、ハイマースに搭載できる300キロ以上の射程があるATACMSの供与を行う方向で検討しているが、秘密裏に数本の提供をしたとも見える。これを使い、クリミア大橋(ケルチ大橋)の攻撃を計画するのであろう。ロ軍とベ軍がキーウ方面への侵攻を開始した時点で、攻撃に出る可能性がある。

そして、ドイツは天然ガスの代替で原発や石炭火力など稼働して、今年の冬を乗り切る計画である。

一方、ウクライナと同じようなロシア衛星国は、ロシアの侵略に身構えることになり、カザフスタンは、脱ロシアになり、ウクライナを支援する。ポーランドはポーランドの持つ232両の全P-91S戦車をウ軍に供与して、韓国から大量の戦車を輸入することにした。

ウクライナの食糧輸出では、オデーサ港にロ軍が執拗にミサイル攻撃を行うので、NATO軍とトルコなどが、黒海で合同演習を行い、ロ軍が航路妨害などをした場合の対応を行うようである。ロ海軍の動きを封鎖するようで、特にキロ級潜水艦を標的にしている。

しかし、一歩、核戦争に近づいたような気もする。ロシアのプーチンがいなくなるまで、戦争を拡大する可能性も否定できない。

第2次大戦後の秩序維持ルールが大きく試される事態になり、世界は核戦争への覚悟を必要とし始めた。限定的核戦争にはなる気がする。

ということで、日月神示とヨハネの黙示録の時代である。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年8月1日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Drop of Light / Shutterstock.com

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