サッカー強豪国として世界的に有名な国、ドイツ。国際大会で好成績をあげ続ける強さの秘密はどこにあるのでしょうか? 日本人選手たちの「出世の場」でもあるドイツサッカーについて、メルマガ『Taku Yamaneのイェーデン・ターク』の著者で長くドイツに暮らすTaku Yamaneさんが 詳しく解説しています。
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ドイツと日本「サッカーの違い」
いつもご愛読ありがとうございます。
今日は久々にドイツと日本の文化の違いをお話しましょう。
ドイツと言えばサッカー強豪国。この冬行われるワールドカップでも優勝候補です。
サッカー強豪国にはそれぞれの国のスタイルがあり、スペインはパスを繋ぐ美しいサッカー、ブラジル等の南米勢は華麗な個人技や勝ちに拘ったちょっとダーティーなプレー。イングランドはキック&ラッシュと言われる激しい攻防、イタリアはカテナチオ(閂をかける)と呼ばれる堅守などがあります。
で、ドイツは何かというと「ゲルマン魂」と呼ばれる勝負強さです。今でこそ世界トップクラスの選手をたくさん輩出するようになったドイツですが、それほど多くない時期もありました。それでも国際大会ではずっと好成績を上げ続けています。
そんなドイツではここ10年、日本人選手の出世の場として非常に注目されています。イングランドプレミアリーグ、スペインのリーガ・エスパニョーラ、イタリアのセリエA、フランスのリーグアンと並んで欧州5大リーグと呼ばれるドイツのブンデスリーガには、日本人がたくさんいます。日本人が多い理由はいろいろありますが、サッカー面で言えば、「日本人のようなプレースタイルの選手が少ない」というのが一番だと思います。
ドイツは勝負強い国です。言ってしまえば勝てばそれで良いということです。なので、パスが美しいとかドリブルが華麗だとかそういうのはあまり評価されず、単純に得点数やスピード、フィジカルが重視されます。酒場でサッカーを見ていても、ボールを奪ったらすぐに「走れ走れ!」と親父共が叫ぶのが聞こえます。要は「早くゴールに迫れ」ということです。
ところが、日本人選手はそうではありません。Jリーグなどを見ていても、丁寧にボールを繋ぐ意識が高いです。比較的ゆっくりとプレーし、危険なスライディングやタックルも少ないです。ファンの価値観としても、ガツガツした選手より、エレガントな選手を好む傾向があります。そうなると、自然とそういうパスや技術に秀でた選手が多くなり、試合中もゆったりとしたプレーをするようになります。
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サッカーにはいろんな要素があり、速攻をしかけた方が良い場面もあれば、ゆっくりボールを繋ぐ必要がある場面もあります。ドイツには後者の選手が少ないため、優秀な日本人が活躍しやすい環境にあるといえます。ドイツで活躍した(または今も活躍している)選手を挙げると、香川(MVPになった)、鎌田、長谷部、岡崎、原口、乾、内田、などなど頭が良くて時間を使える選手が多いです。
恐らく、そこそこJリーグで活躍できる日本人選手なら、かなりの確率でドイツでやれるはずです。
ただし、貴重なスタイルの日本人がドイツに挑戦するにはデメリットもあって、はっきりした結果を出さないと人気が出ないというのがあります。先ほども言ったように、日本人のようなプレーヤーはドイツには少ないと言いました。それは、そういうプレーがあまりファンから認められないという所もあるのです。ドイツで人気なのはスピードとパワーがあって、すぐにゴールに迫れる選手です。
日本人はそういうプレーをしない訳ですから、ゴールとか勝利とか分かりやすい結果がでないと、結構すぐに干されます。
自分の目で見れば、どう考えても必要な選手なのに、チームが勝てないと出場機会を奪われてしまう選手は割といます。
もうこれは市場原理と同じで、フロンティアであるからこそ、認めさせるのに苦労するということなのです。
それでも、最近の日本人選手のドイツでの活躍は目覚ましいです。どんどんドイツに来て、日本人のサッカーを伝えてほしいですね。
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