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Rear view of elderly man in wheelchair and care helper

デイサービスやショートステイを拒否する母を納得させた「張り紙」

6人の介護を経験し、現在も母親を介護しているという作家の前沢しんじさん。自身のメルマガ、『人生を変えるキッカケコトバ 『バラエティ人生論』』では、『デイサービス、ショートステイに行きたがらない人をどうすればいいか』というお悩みに対して、自身の経験を生かした回答を紹介しています。

デイ、ショート、行きたくない!

インスタフォロワーの方から「楽になるのはわかっていても、デイ、ショートに行きたくないという場合はどうしますか」というコメントがありましたので、私の体験をお話します。

6人の介護中、その点はひとつのハードルでしたし、現在母を同居介護中ですが、やはり「行きたくない」とたまに口から出ます。

伯父伯母の場合はタクシーで逃げて帰ってきたりしたこともあったし、義父だって「おれ共同生活いややなあ」という姿勢でした。

知ってますよ。デイでもショートでも共同生活だし、自由にふるまうこともしにくい。何回も見に行ったり参加したりして理解してます。実際にそこで過ごすのは楽なことではない。

でもこういう施設があるおかげで、どれほどたくさんの人が助かっていることか、また働く職員のかたのご腐心、ご苦労もハンパではないことも身に染みて知ってます。

ありがたいよ、ほんとに。

だから施設に入ったり、通ったりすることはベストの方法でなくても次善の最高の策なんです。

いま40代・50代あたりより若い方は昔の介護を知らないと思う。

めちゃくちゃ大変だったんです。僕の伯母なんか、父母の介護を自宅でして、排泄が大問題で、つまりうんこを布団で漏らす。そうすると、布団をもってね、川に洗いに行くんですよ。泣きながらね。おまけに布団は乾きにくいんだ、これが。

ほんの数十年前まで日本はそんな介護状態だった。父母だって漏らしたくて漏らすわけじゃない。本人も辛かったんです。

いまは天国なんだよ。

ここで一番先に確認しておきたいのが「いま何をいちばん優先すべきなのか」です。つまり「主訴」。

私の場合は「介護は先が見えないある種の奉仕活動だから、共倒れはいけない」。

ならばどうするか。「みんなが少しずつたいへんなことを負担しよう。だれかひとりだけが苦労をすることはない」。

つまり「介護される側も応分の負担をすることだ」。

つまり「あなた方も少しは頑張ってくれ」ということです。

それが私の基本的な態度です。

そのためにはどう理解させるか。

現在の母の場合に非常に効果的だった方法は文字情報です。とくに認知がある場合は聞いたことをすぐ忘れるので、文字でつたえるのです。

自室のふすまの上部、鴨居のところに張り紙をしています。

「昔、潤(夫)が仕事に行きたくないって言ったときどう思った?おつとめがんばろう!」

昔相方が怠けもので仕事を休みたがったので母はなかなか苦労したのです。

「あんたそのときどう思った?」と聞くと、「後ろから蹴り倒したかった!」と。

「あんたがデイへ行きたくないというとき、おれもおんなじこと思うで」。

一気に納得しました。

無理やり行かせるのでなく、納得させることです。それでも別に喜んでいくわけではない。

そこで肝心なのが「どうフォローするか【最重要】」です。

デイ、ショートへ行かせるのは、決して厄介払いではないこと。笑顔の介護を続けるためには、こういう施設を利用するのが最適なこと。大変なことはみんながすこしずつ負担すること。

そういうことを話しながら、施設への送り迎えは夫婦でちゃんと付き添って「行ってらっしゃい!」。

好きなぬり絵を持たし、帰りは笑顔でお迎え、お菓子ジュースも準備して、毎日自室は掃除、布団干し、帰る前にはエアコンをつけてさ。孫やひ孫が着たら必ず「ばーちゃーん」と部屋に遊びに行く。

などの周辺環境整備を完ぺきにして応援する。

…そうしてます、私は。

もちろん人間は個人差のかたまりなので、うちのやり方がどこでも通用するかはわかりません。

でもいろんなことをやってみることです。試行錯誤&失敗の先に、なんらかの有効な方法が見つかるものです。

いい方法なんて「ある」のでなく「創る」ものです。

介護は楽を目指すくらいでちょうどいい。

ま、それが今回の答え、かな。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 前沢しんじ 【発行周期】 週刊

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