ビジネスでもプライベートでも重要なのが「聞く力」。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では、著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、会社の「聞く力」が不足していたために負けてしまったという裁判内容について紹介しています。
軽い懲戒処分であれば、軽くやっても大丈夫か
「聞く力」
はたして某首相のこの力は発揮されているのか、いないのか。
ただ、首相に限らず誰でも仕事でも、プライベートでも、この力が大切なのは間違いないでしょう。
男女間の喧嘩の原因も「聞く力が不足していることが1番の原因」というデータはありませんが感覚的には全く関係無いこともなさそうです。
これは会社が行う懲戒処分についても同じことが言えます。
それについて裁判があります。
あるコンサルティング会社で会社が行った懲戒処分(けん責)に納得がいかないと、社員が裁判を起こしました。
会社はこの社員が社内の別の担当者に送ったメールの内容が「非協力的で協調性を欠く」として、けん責処分を行っていたのです。
そのメールの具体的な内容は、社員の企業年金制度の移行に対し、「もし私が不利益を被ることがあったら、訴訟しますことをお伝えします」というものでした。
ではこの裁判はどうなったか。
会社が負けました。
ポイントは会社の「聞く力」です。
実は会社はこの社員から事情などを聞くことをせずにこのメールの内容だけで懲戒処分を行っていたのです。
そこで裁判所は次のように判断をしました。
・経緯や背景を含め、本人の言い分を聴いた上で懲戒処分の判断をすべきである
・本人に弁明の機会(言い分や反論を伝える機会)を与えなかったことは懲戒処分を行う手続き的な相当性を欠くものである
この弁明の機会については会社によっては就業規則に「弁明の機会を与え、処分を決定する」などの規定があることがありますが、この場合は当然ながら事情を聞くこと無しに懲戒処分をすることはできません。
今回の会社にはその規定はありませんでした。
それにも関わらず裁判所は、「就業規則に規定が無くても弁明の機会は与えるべき」と判断しています。
いかがでしょうか?
実務上、気を付けるべきポイントは、「けん責処分でも今回のような判決がでた」ところです。
就業規則の内容にもよりますが通常、けん責処分は懲戒処分としては1番目か2番目くらいに軽い処分である場合がほとんどでしょう。
それにも関わらずこのような判決がでたのです。
「軽い懲戒処分であれば軽くやっても大丈夫」とまではみなさんも考えてはいないと思いますが、減給や懲戒解雇の場合などと比べるとそこまで深く考えずに
やっていることが多いのではないでしょうか。
懲戒処分の程度(けん責か、減給か、解雇か)は、判断が非常に難しいため
裁判でも判断が分かれることもあります。
ただ、弁明の機会は、「与えたか、与えていないか」だけなので判断が簡単です。
それだけにやっていない場合は何の言い訳もできません。
確かにひと手間かかることではありますがそのひと手間が会社のリスクを大きく減らすのです。
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