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日本人の若者、全死亡のうち半数以上が「自殺」という現実

誰にも助けを求めることができずに追い詰められ、孤独の中で自死を選択してしまう人たちが後を絶ちません。こうした不幸な状況を改善するために我々は今、何をなすべきなのでしょうか。今回のメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』では、要支援者への学びの場を提供する「みんなの大学校」学長の引地達也さんが、そのヒントとなるものとして、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターが公募している「革新的自殺研究推進プログラム」の研究課題を紹介しつつ、自殺問題の根本的な解決法を考察しています。

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「9月の悲劇」から私たちは何をすればよいのだろう

近年、夏休み明けの9月1日に学校が始まることで絶望的な気持ちになる人が自殺するケースが増えたことで、この時期は心の健康に細心の注意を払うようになった。

新聞もテレビもインターネットも表に出せない「SOS」を「周囲に発してほしい」「相談窓口に連絡してほしい」と呼びかけ、国を挙げての取組になって年を重ねてきた。

私自身も精神疾患の方や不登校等、生きづらいと考えている人々と日々接する中で、9月に気分が沈下する傾向は毎年実感があるから、この時期の当事者とのコミュニケーションには敏感に反応することが身についてきた。

メディアと同様に私も毎年のように当事者に「SOS」発信を直接呼びかけることで自殺を防ごうという思いがあったが、今回は取り巻く社会と私たちは同じような9月を繰り返すのではなく、何をしたら根本の解決につながるのかを考えたい。

自殺に根本の解決はないのだろうが、少なくとも「死ななくてよい自殺」はあるのだと思う。

死にたいという絶望は一瞬で、長い目で見れば、幸せになることは多いのだと信じて私は「生きろ」と心で叫んでみるのである。

それはやはり私の勝手な押し付けだから、表立って言葉にすることはできないから、社会全体で自殺に向かう心細い精神状態をケアできるのか、解決策を見出すのか、の知恵を出さなければならない。

そのヒントになるのが、今月、一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターが厚労省の委託を受けて受託者を公募している「革新的自殺研究推進プログラム」の研究課題である。

これは「自殺が多様かつ複合的な原因及び背景を有することに鑑み、保健医療のみならず他部門との連携の在り方を含めた科学的根拠に基づく自殺総合対策を強力に推進するため」を目的とした研究プログラムである。

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センターはこのプログラムの重点課題として以下5領域を挙げている。

「子ども・若者に対する自殺対策」「自殺ハイリスク群の実態分析とアプローチ」「自殺報道・インターネット情報の影響と対策のあり方」「自殺対策のデジタルトランスフォーメーション(DX)化の可能性」「ポストコロナに向けた自殺対策等」。

特に「子ども・若者」の自殺は深刻で、若者とされる15~29歳の全死亡のうち「自殺」は50%以上を占める。

さらに児童生徒は2017年、学生等は2020年から自殺者数が増加に転じている。

同センターでは「子ども・若者では原因・動機が不明とされる場合が多く、その実態解明を含めて子ども・若者に対する自殺対策は喫緊の課題」との認識だ。

さらに世の中の潮流としてDX化を自殺対策にどう組み込んでいくか、そしてポストコロナの中で自殺観の変化にも対応する必要があるだろう。

拙著『ケアメディア論』(ラグーナ出版)でも、社会で「ケア」を意識する際にその社会での自殺者の存在が大きなバロメーターになると説いた。

デュルケムは『自殺論』で「生に対するペシミズムを助長するような思想や教説が広まり、人々の心をとらえている」のが自殺増加の推論として示しているが、上記の「自殺報道・インターネット情報の影響と対策のあり方」がこの推論へ対応するものであり、私も「ケアメディア」との概念を示す中で自殺を防ぐ社会に必要なメディアの在り方を今も模索し続けている。

コロナやDX等の新しい様式をにらみながら、ネガティブな気持ちを助長する情報を私たちはどのように扱っていくのがよいのか、結局のところ、私たちの倫理観と「ケア」の感覚を養うことが重要であるとの認識から出発したい。

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image by: 一般社団法人いのち支える自殺対策推進センター

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

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