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Cute Asian children holding hand together while going to the school outdoors,Back to school concept

「13歳未満の一人歩き」は昼でも違法?日本とは違う米ニューヨークの子育て事情

日本では、子供を自立させるために小さな頃から一人で学校へ行かせることは当然になっていますよね。しかし、ニューヨークでは13歳未満の児童をひとりにすること自体が違法であり、日米には大きな違いがあります。メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』著者でニューヨークの邦字紙『NEW YORK ビズ!』CEOの高橋克明さんは、両方の国を知ったうえで、その違いが生まれた理由と「自立」の定義について語っています。 

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ニューヨーク流「子供自立」教育

前回の日本出張で最も驚いたことは「子供が外を歩いてる!」ということでした。いや、もちろんニューヨークでも子供は歩いています。でも、横には必ず両親ないしは保護者がいます。ニューヨーク州では「13歳未満の児童をひとりにすること」自体が違法(※)になります。警察に保護され、親は逮捕される可能性すらある。本当の話です。

(※ 厳密にいえば、各州により州法も違い、それどころか郡や市によっても違うので、一概に“違法”とは言えなかったりもします。あと州により年齢も16歳未満から6歳未満とレンジもあり、留守番はいいけど駐車した車に残したままその場を離れるのがアウト、とか、登下校はいいけど留守番はダメとか、州によって様々です。法律で決められている州もあるし、法律では決められてないけれど、州のガイドラインで推奨年齢が決められている場合もあります。実はニューヨーク州は法律で決まっているわけではないので厳密には“違法”ではありません。ただ、アメリカ人のママ友たちもそれを違法と思っている人がほとんどで、社会ルール上、子供たちをひとりにさせないのが常識になっています。なにより子供を野外で放置して実際に逮捕されるケースもあるので、僕たちの中ではほとんど“違法”みたいな認識だったりします)

「ひとりにさせちゃダメ」ってことは、野外はもちろんのこと自宅での留守番もアウトです。日本では、子供に留守番をさせるのに、リモートで様子が伺えるような防犯カメラの種類も充実しているようですが、アメリカでは売られていません。ひょっとしたら探せば売られているのかもしれませんが(体裁上、違う目的用で)僕は見たことがありません。この街で暮らし22年になりますが、なので、公道で子供が単体移動するシーンを目撃したことがない。公園内や敷地内くらいなものです。学校の送り迎えも、僕か妻が交代で行っています。

それが当たり前になっているので、日本の故郷に里帰りした際、まだ5歳くらいの女の子がひとりで鼻歌を歌いながら横切った際にはドキっ!としました。誘拐し放題じゃないか、と。

横にいた妻が、こんな田舎だから、大丈夫よ、と言われ納得はしましたが、驚きは隠せませんでした。岡山県の瀬戸内海側ののどかな町ではあります。80年代、そういえば、僕たちも当たり前のように小学校までの結構な距離をひとりで下校していたなぁと思い返します。小学校1年生からです。

つまりはそれだけ安全で平和な国とも言えるかもしれない。いや、そうなのでしょう。それにしても、側から見るとドキドキでした。あと野良猫も。

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田舎に限らず、東京は恵比寿の住宅街を歩いた時でした。路地裏でまだ4~5歳の男の子と女の子がふたりだけで遊んでいました。住宅街の路地裏なので、そこにある住宅が住まいなのでしょう。前方に見える男の子の方が自宅に入っていきました。僕が横切る時には女の子ひとりでした。ちょうどその時、女の子が手に持っていた、緑色の象の形をしたおもちゃのジョウロの柄の部分が、パカっと外れてしまいます。象の鼻が取れた状態。びっくりした女の子は「ゲンちゃんのゾウがこわれたぁあ」と泣き出しました。ちょうど僕が真横に来たタイミングで、通りすがりの僕にバラバラになった顔と鼻を差し出してきます。「こわれてないよ、かして」と手に持って鼻をはめ込みます。「ほい、ゲンちゃんにこれで怒られないから、もう泣くなよ」としゃがんで、元通りになったジョウロを手渡そうとしました。その瞬間、真横から人影が目にも止まらぬ速さで、女の子をさらっていきます。

「ども!ありがとうございます!!!!」早口でそう言い残して、必死の形相のおかあさんが、娘さんを連れて勝手口から自宅に入って行きました。逃げるように。次の瞬間、ガチャと施錠する音。

……。完全に不審者扱いだがな、わし(笑)手に持ったままの、クリクリの目の象がこちらに「そりゃしかたないわな」とニヤニヤ話しかけてくる。いちおう不審者には注意を払ってるんだな、日本も。そりゃそうか。いや、わしゃ不審者ちゃうがな。親切心なのに。あの場合の正解はどうなの?どうすればよかったの?5歳くらいの女の子が泣きながら、横切ると同時のタイミングで手渡してきても「無視して歩き去る」が正解なのでしょうか。ねぇ、ねぇ、マジ、教えて。正解はどれ?

でも、だったら、平和大国日本でも、親の目から離れたところで児童だけにさせなきゃいいのに、と思った僕はやはりニューヨークに毒されているのでしょうか。どうするんだよ、このジョウロ。

すると、逆サイドの家から、さっきのゲンちゃんが勝手口からひとり出てきました。ほい、これ、とジョウロを渡します。さっきの子のだよ、というと、ちがうよサエはいもうとじゃないよ、ともだちだよ、サエはたかしくんのいもうとなの、と近隣関係図を話し込もうとしたので、不審者との2ショットは避けた方がいいと思い、じゃあな、サエをせめるなよ、とだけ言ってそそくさと立ち去りました。いや、わしゃ不審者ちゃうんだけれども。

日本のこの、児童だけで行動させることは、習慣や文化で説明がつくことなのでしょうか。一見、親が付きっきりのアメリカより「自立」させる為の教育、習慣にも見えます。

にもかかわらず、世間一般では、アメリカの教育の方が「自立」を考慮していると言われています。でも前述したように、アメリカでは基本、児童だけにするのは違法、もしくは注意勧告されます。ただ、だからこそ、逆説的ではあるけれど、アメリカの方が子供の“自立”を重視しているのではないかと思うのです。禅問答のようになってきたけど。

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これはあくまで僕の主観ですが、二十歳になるまでは日本の子供たちの方が「大人びて」いるように見える。実際の「大人」というより、行動やファッション、言葉遣い等で、子供らしさを拒否しがちになる。もちろん個人によります。例外は多くあれど、全体的な印象です。

僕自身が学生時代そうであったように、必要以上にイキがり、大人ぶる。高校時代、親と一緒に外出なんて罰ゲームでしかなかったし、その状況をクラスメイトなんかに目撃された日にゃあ、学級カースト制度で一気に下位層に脱落です。向こう一年間はイジられる。実際はどうであれ、親、家庭をなるべく遠ざけることがカッコよく、その小さな世界ではステータスでもあった。生活自体、1ミリも自立していないにも関わらず、せめて精神は「大人」でいたかった。実際はどうであれ少なくとも周囲に「大人」と思われたかった。そのマインドはそっくりそのまま言葉遣い、ファッションに影響されていきます。

アメリカは州にもよるけれど、前述したようにお買い物だろうが、野球観戦だろうが、映画館鑑賞だろうが、「With 親」です。特に田舎だとどこに行くのも車移動なので、なおさら親子はセットになります。よく映画やドラマで見るように、アメリカでは、パパの誕生日も、ママの結婚記念日も、グランパとのクリスマスも、グランマとのサンクスギビングも家族みんなでお祝いします。僕の高校時代、母の誕生日なんてお祝いしたことは絶対になかったし、なんならお袋に誕生日が存在するとも思っていなかった。「家族でクリスマスなんてダサ」かった。だってオレ、大人だしいぃい。なぁんか、めんどくせえしいいぃ。な雰囲気を自ら(必死に)醸し出していました。

つまり「自立」という概念、定義自体が両国間で決定的に違うのではないか、と今気づきます。もちろん、これはバカな僕の一個人の体験談であって、例外は多く存在します。ただ、僕の周囲のポンコツ仲間は多かれ少なかれ、こんな感じだったと思います。少なくとも、その段階で自立の真の意味を理解している10代は少ないのではないでしょうか。

“反抗期”というものは、もちろんアメリカのみならず世界中であるものだとは思いますが、日本ほど市民権を得ていない。「あの子は反抗期だからしょうがないか」という免罪符を日本ほど活用している国はないと思います。逆に“反抗期”がないとおかしいくらいな空気が充満しているので「そろそろ反抗期、始めよっか」と無意識に思う子供が出てきてもおかしくないだろうな、くらいに思ってしまいます。胃薬が発明されてから、胃もたれがこの世に誕生したように、反抗期、反抗期と世間で浸透してるから、反抗期に突入しようか、みたいな。

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それでは、アメリカ人の子供たちがみんな「自立」の概念を理解しているかというと、もちろんそんなことはない。こちらも例外は多く存在すると思います。

にも関わらず、二十歳を過ぎればグッと彼らは大人らしくなります。本質的な大人になると、少なくとも僕にはそう見えます。親子の絆を大切にし、経済的にもなるべく親の負担にならないように考えていく。大学生になっても仕送りをもらうのが当たり前、という風潮はこの国にはありません。

おそらくそれは教育から来ているのではと思います。学校教育に関して、やっぱり先入観抜きに見ても「自立」を促すようにできている気がします。公立の小学校、中学校のカリキュラムは各州、市町村で違うので、僕は子供たちの通う、ニューヨーク市の公立小学校の教育カリキュラムに限っての感想となりますが、「あなたは何がしたいの?」「どう考えているの?」と6歳児にも自分の意見、主張に耳を傾けていく。

子供時代は「子供」として社会全体が守っていく。大人になれば「大人」として自身の責任で、自分の力で生きていけ。その為に子供時代にシッカリとそれぞれの「個」としての意見、主張を考えさせるようにしていく。「手を合わせてくださーい。いただきまーす!(日直)」「いただきまーす!(全員合唱)」で同じものを食べることは、こっちのランチ時間に見ることはない。

子供時代に「大人」ぶり、大人になった後(血縁上の)子供だからと主張し、仕送りを送ってもらう日本とは明らかに違う気がします。

そこだけを考えると、アメリカかぶれではないと自覚した上で、教育に関してだけはこっち(NY)でよかったなと思うのでした。

息子が6歳の頃、学校から帰ってきて「今日はジャケットを自分で着られるように先生に教えてもらったよ」と言います。親に頼らず服を着るところから授業で教えてくれるのは素晴らしいなぁと思っていたら、

「まず、こうして、、」とジャケットを床に直に置きます。「え!待て」と驚くパパを無視したまま、「で、こうして、、、」とそのジャケットの上を前転(でんぐり返し)して、起き上がったら着衣すしている状態…。

「ほら!」と得意げな息子の背中を払いながら、「うーーーーん…、、やっぱり、日米、どっちもどっちだな」と思ったのでした。日本人はまず着る服を、地面には置かない。

(メルマガ『NEW YORK 摩天楼便り-マンハッタンの最前線から-by 高橋克明』2022年9月11日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)

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全米発刊邦字紙「NEWYORK BIZ」CEO 兼発行人。同時にプロインタビュアーとしてハリウッドスターをはじめ1000人のインタビュー記事を世に出す。メルマガでは毎週エキサイティングなNY生活やインタビューのウラ話などほかでは記事にできないイシューを届けてくれる。初の著書『武器は走りながら拾え!』が2019年11月11日に発売。

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【著者】 高橋克明 【月額】 初月無料!月額586円(税込) 【発行周期】 毎週水曜日

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