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プーチンに正義など無し。それでも「ロシア擁護」のバカにつける薬

ウクライナの東部と南部の4つの州を一方的に併合し、あまつさえ西側諸国を核で威嚇するプーチン大統領。国際社会からの孤立を深めるばかりのロシアですが、それでもまだ彼らを擁護する声があるのも事実です。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、これまでプーチン大統領が手を染めてきた、そしてこれから行おうとしている「考えつく限りの卑怯なやり口」を取り上げ厳しく批判。さらに彼らに正義などないとして、「ロシア擁護派」を強く非難しています。

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本当にボロボロになりつつあるロシア。「デモくらジオ」(9月30日)から

冒頭にお話申し上げたいと思っていますのは、ウクライナの話です。毎度申し上げておりますように、私は別に専門家でもありませんから、色々な情報を総合して、こうじゃないか、ああじゃないかと素人なりの意見を申し上げているに過ぎないということはあらかじめ申し上げておきたいと思うけれど、ちょっとこの間伝えられているニュースで、今回というか、ここ1日2日の議論ですね。

これはきついなと思うのは、NATOとロシアの関係がある種の戦争状態に近いのではないかという印象を、素人ですけれども、持ちました。どういうことかというと、ヨーロッパに天然ガスを供給しているノルドストリームというパイプラインがありますけれど、そこが故障というか、3カ所で壊れて、ガスが供給できない状況になったようですね。まさに空気が入れ替わって、先ほどの話は日本の南関東の話ですけれど、これから寒い時期を迎えるヨーロッパ、特に北の方なんかからすると、ドイツとかね、かなりきつい話になっていくのだろうと思います。

既に政治的に天然ガスの量とか、供給の仕方に関してはロシアが色々な「調整」をして、修理だとか故障だとかいって送らないようにしてきているということもあったようですが、かなりあからさまな、もちろん、そうじゃないとロシアは言っているようですけれども、インフラを遮断するという行動に出たようですので。NATOあるいはEUの外相あたりがかなり強烈なコメントをしていると思いますけれども、そういう段階に入っているような気がします。

その前段階として21日でしたか、プーチンロシア大統領が演説をして、国民向けのテレビを通じた演説で、例の3つのことを発表していますね。

1つは予備役をどうこうすると。30万という数字がどこに出ているのかちょっと定かではないですけれども、ショイグさんという軍務経験のない国防大臣がいますけれど、あの方が30万という数字を確か言ったと思うのですが。これ、凄いですよ。大統領令のなかに秘密の項目があって、内容が明らかになっていない。

国民に知らせなくていい大統領令の決定の中身というものがあり、それが法的にも何も問われないという国なんですね。大変驚きました。おそらくそこにはもしかしたら120万という数字が書いてあるかもしれない、という話です。予備役は250万人くらいいるという話もあり、あるいは総動員を掛ければ…総動員というのは一定の年齢にある国民はすべて招集されうるということになれば、とんでもなく大きな数字が出てくるわけですが、しかし、兵士としての訓練を受けていない人を招集して戦場に送るということについては色々な問題があるわけで、そう簡単ではない。

予備役というのは軍務経験がある人ですので、全く経験のない人よりは現役兵士に近い存在ですけれど、しかし、年齢のことがあったり、経験の質と量の多寡があったりと、そういうことを考えると、「即戦力」になるかどうかは分からない。そういうことが現にあります。

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で、なぜこれ、この動員が必要になったかといえば、これは例のウクライナ東部でハルキウ州のほぼ全域をウクライナ軍が解放するに至った電撃的な進攻。それによってロシア軍が壊滅的な打撃を受けて敗走することになった。およそ東部におけるロシア軍の存在というのはほとんど壊滅に等しい状況に、今現在なりつつあると。その原因はウクライナ軍の進攻によって重要な拠点が次々に落とされ、今まさに落ちようとしているリマンという場所がありますけれど、そこが鉄道と道路の補給中枢で、そこを押さえられたとき、東部にいるロシア軍の命脈は完全に絶たれてしまう。だから今そこを巡って極めて激しい戦闘が行われているようですけれども。これがおそらく東部の戦争に関しては大きな分水嶺になるのではないかなという気がしております。

その原因を作ったのは、一つはロシア軍の作戦なるものの稚拙さがあり、結果として補給を絶たれたりしたために、兵士の損耗が非常に激しくて、兵士不足の状況に陥っている。武器に関してもそうで、ロシア軍の補給拠点をウクライナ軍がずっと叩き続けてきたことが、ここにきてようやく大きな戦果につながったという話ですよね。

(動員は)その状態を改善しようと、ロシア軍から見て「改善」しようということなのだと思うのですが、予備役の人も既に最前線に立たされているそうですよ。なんと戦車兵までやらされていて、全くの訓練なしでそのようなところに放り込まれていることが現に明らかになっています。これって、仮に30万人動員されたとして、まさにウクライナ軍側からすれば、ロシア軍の軍服を着て銃を持って立ち向かってくる人たちの中に、その人たちがいるわけで、これ、区別できるわけではないですよね。(予備役の兵隊が)生き残るのは大変なことだと思います。それが分かっていてやっているのかもしれません、ロシア側はですね。

で、この兵士の動員計画、予備役動員計画に連なる極めて恐ろしい計画が、2つめのプーチンの提案の中に入っていて、それがウクライナの東部から南部に至る4つの州を強制的にロシアに併合すると。プーチン大統領がそのように自分で言っているわけではなくて、住民投票が行われてロシアに入りたいということがあるのなら「認めよう」みたいな話なんですが。自分で仕組んでおいてそれもないだろうとは思いますが。確か日本時間の夜8時くらいですから、あと30分か40分後くらいにプーチンさんは赤の広場の大集会、記念集会で発表するのではないかと言われています。もうそこはロシアですよ、という話。で、ロシアだということになると、そこでウクライナ軍が軍事行動を行えば、それはロシア領の侵害になるから、それに対しては持てる軍事力のすべてを使って排除するぞと。これはハッタリではないぞ、という脅しまでありましたね。

そのことのために、わざわざ編入ということをするのかなという気がしますが、「4州がロシアになりました」というふうに、これ国連も認めないと言っていますし、日本の岸田総理も認めないと言っていますが、この4州にいる人はロシア国民、ロシア人になるわけですよね。ということは、予備役の動員もそうですし、場合によってはこの4州に関してはまさに係争地ですから、総動員をかけると大統領令を補充ないし書き換える…大統領なんかはいくらでも書き換えることが出来そうですから、そうするのではないかという恐ろしい想像が出来ますね。

ということになると、ルガンスクからヘルソンに至る4州の成人男性には総動員をかけて全員にロシア軍の軍服を着せ、銃を持たせたり持たせなかったりして最前線に放り込むと。そしてウクライナ軍を攻撃するよう命じると。これに従わないものは逮捕するなりその場で射殺すると。こういう軍の論理の中でこの人たちを使うという恐ろしい計画なのではないかなという気がしております。

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こういう、およそ考えつく限りの卑怯な方法というものを実際にやられるのをみると、この人たちに一分の理でもあるのだろうかという気がしてきます。ロシアならやりかねないよねと言って半笑いで済ませるわけにいかない話ですよね。

そしてこういうことのすべての前提の上に、我々は核を持っているのだということを色々な形で脅迫することも忘れていないと。こういう形にすることについてはかなり前から計画がなされていたのでしょう。ただ、戦況が全く思わしくなかったので、2月24日開戦以降、キーウという、ロシア語ではキエフという、そのキーウの攻防戦でも予想に反してロシア軍が大敗北を喫すると。それから東部に関しても今回のような形になると。とにかく当初は1日か数日で戦争が終わると考えていたのが、とんでもなく長期化していて、ウクライナ軍に散々ロシア軍は苦しめられていると。もっと早くやりたかった東部2州の住民投票。これをクリミアの方までつなげ、南部の2州もつなげて住民投票でロシアに編入すると。基本的にはもとから(計画が)あったのでしょう。でもずっと住民投票をやると言っては延期されることが続いていた。その原因の一つは各州内で反対する人たちの行動もあったのだと思いますが。そういうことになったわけですね。

そのようなところに至る決定的な要素として実際東部でロシア軍が完全に敗北して、壊滅的な打撃を受けてしまったということがあると思います。

軍事的にいわば安定した状態をロシア軍が保てていればもっと早くに住民投票が行われたのでしょう。その間にものすごい数の犠牲が出ているのですが、少なくとも表面上はお構いなしに戦争を続けるとプーチンさんは言い続けている。そういうことになっている。ただ今回のこの事態については、今までだったら、国内の反対論は無理矢理押さえつければ、それ以上の反対運動は起こらない、メディアは全部「外国の代理人」ということにして押さえつける。これで反対は全部抑え込んだと思っていたのとは、大分様子が違ってきていて…確かにそれは積極的にプーチンさんを攻撃する、否定すると言うよりは、どちらかというと「逃げる」方向ではあるのですが、それでもロシア市民は対応しているようですね。

いわゆる予備役動員に関しては、各国に逃げると。パスポートさえあればいける範囲の国。とりわけトルコは短期滞在が出来るので、そこに向かう人が殺到したようですが。そのほかジョージアとかアルメニア、そういうところに国境を越えて大勢の人たちが雪崩を打って逃げていったと。そんな形ではありますけれど、プーチンさんの意図にそのまま従うわけではないという意志を多くのロシア市民が示している…これが現状だと思います。

先ほども言いましたとおり、30万、あるいは120万の予備役の人たち。あるいはもっと多くの、総動員にかり出される市民、彼らに軍服を着せて最前線に立たせても、ロシアの軍事力が強化されることはないのではないかと思います。先週言いましたように、国境警備みたいなところにいる職業軍人とか契約兵とか、そういう、場合によったら実際の戦闘経験のあるような人たちをかき集めてウクライナに投入する、その空いた場所に予備役の兵士をあてがうというようなことはあり得るかもしれませんけど、それとても非常に大きな計画というか、緻密な計画がなれば様々ほころびが見えてくるだろうと思いますね。

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ウクライナ政府は予備役で招集されたロシアの兵隊に対して「ウクライナに投降しなさい」と、死なないように、是非こちらに投降してくださいと呼びかけているようです。それが分かってしまったら、監視しているロシアの将校は予備役の兵を後ろからでも撃つのだろうと思いますが、場合によっては軍の中に反乱が起こる可能性もありますよね。つまり、軍事的にハッキリした成果を示してその政治目標を達成しようということからしても、ロシア軍、プーチン政権のやっていることは理に合わないと言いますか…。不思議なんですよね、場合によっては世界最高の軍隊とか2番目だとか、そんな言われ方をしたロシア軍だと思うのですが、もはやその面影はなく。さらにロシア製兵器の国際的な信用、まあ、以前は安くて値段の割に良い兵器、みたいな感じがあったようなんですが、そうした評判もガラガラと落ちていった。

ロシアは本当にボロボロになりつつあるなという感じです。きょうどこかのテレビ局でやっていましたが、カザフスタンも予備役については批判をしているようですね。カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、キルギスタン。みな「スタン」かつくので「スタン系」なんて言ったりしますが、中央アジアの国々、それぞれにロシアに依存していた、もともとは同じくソ連邦の構成国だったわけですが、今は独立してそれぞれの国になっていますが、カザフスタンも北部にロシア人の多い地域があって、そこに分離主義者がいて。

つまりウクライナとほとんど同じ構造なんですよ。カザフも。表向き軍事同盟を組んでいますから、ロシアがNATOと戦争になったら、カザフスタンはロシア側で参戦しなければならないはずなのですが、はたしてそうなるのか、分からないくらい、実は対立の要素を抱えている。今度のことがきっかけでカザフも頼る相手をロシアから中国に乗り換えるという判断で動くのではないかという観測がなされているようですね。

どちらにしても、世界中から孤立して、まあ、どこにも友達がいなくなってしまっている感じですね。当然ですよ。「そうは言ってもロシアにも言い分があるのだ」とか、「歴史的な原因があるんだよ」とか、「ウクライナにも悪い点があるんだ」、「ウクライナだって虐殺している」みたいな話というのは、申し訳ないのですが、そういう冗談はやめてほしいと思います。

どんな理由があっても、国境を越えて19万人の軍隊を送り込んで占領した町で一般住民を撃ち殺し、いくらでも証言はあるのではないかと思いますよ。あるいは拷問。ということを数限りなく繰り広げてきた軍隊と、それをやらせている政権に何かくみ取るべきもの(正義?)があるのか。という気がしております。

ということで、戦争はもちろんこれ以上ない方が良いのですが、ウクライナ側にとって戦争をやめる理由なんかないですよね。だって、家の中に銃を持った奴が入り込んできているのに。私は平和主義ですからやめてくださいとか、私はあなたを攻撃しませんなんて言えます?これ、おかしいでしょ。ですから、停戦の提案もウクライナがしたって良いのだというような話は、何を寝ぼけたことを仰っているのかと私には思えます。

(『uttiiジャーナル』2022年10月2日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: Swach / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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