MAG2 NEWS MENU

Doctor calling on smartphone app and stethoscope with the South Korean flag. Telehealth technology in South Korea. 3D rendering

当時は「不法扱い」25歳の医学部生が作った遠隔医療アプリ開発秘話

新型コロナウイルスの影響で急速に広まった遠隔医療。日本でも多くのサービスが提供されていますが、IT大国の韓国では少し足並みが遅れていたようです。その理由と、現在韓国でも使われ始めた遠隔医療アプリを作り上げた25歳の医学部生のインタビューを、韓国在住歴30年を超える日本人著者が発行するメルマガ『 キムチパワー 』が紹介しています。

25歳の医学部生が始めた遠隔医療アプリの先見性

韓国最大の遠隔医療、代表は25歳の医学部生。朝鮮日報ベースでご紹介したい。

「OECD加盟国の中で遠隔診療が可能な国は何か所でしょうか?」

ドクターナウのチャン・ジホ創業家がむしろ記者に質問してきた。意外な質問に詰まっていると、「38か国のOECD加盟国のうち、何か国が非対面診療を許可しているのでしょうか?」と再度尋ねる。

「半分ぐらいではないでしょうか。20社?」という記者(朝鮮日報)の回答にチャン創業家は、「多くの人がそう思っているのですが。実はOECD38か国のうち37か国が許容しています。韓国以外、全部やっているんです。日本も以前は再診(2回目の診療)から遠隔診療を許可してましたが、今回の新型コロナウイルス感染症の時からその規制を取り外しました。G7諸国はすべて初診(最初の診療)から遠隔診療を許可しています。」

1997年生まれで漢陽大学医学科を休学したチャン代表は、いわゆる「若気の覇気」の創業だけではない。緻密な計算と計画、そしてかなり長い時間と試行錯誤に耐えた創業だったということを90分間のインタビューで悟ることになった。

ドクターナウは2022年6月、投資の氷河期に400億ウォンの投資を誘致した。今年25歳のチャン・ジホ創業家は2022フォーブス選定、30歳以下のアジアリーダー30人でもある。ドクターナウはスマートフォンのアプリで医師の診療を受け、自宅まで薬を届けてもらうサービスだ。病院や薬局に行かなくても、医療を受けられるようにサポートするスタートアップだ。韓国は遠隔診療が不法だが、現在はコロナパンデミックで例外的に許容している状況だ。

2022年第2四半期基準で、ドクターナウの累積利用者数は600万人、累積ダウンロード数は300万件。提携医療機関数は1,500か所。ドクターナウでは内科・耳鼻咽喉科・小児青少年科・皮膚科など20の診療科目をサービスしている。

チャン代表は「韓国が遠隔診療では遅れました」と言う。しかし、表情からは失望を感じなかった。遅いだけに、アメリカや日本の遠隔診療よりも良い遠隔診療アプリを作るということでもある。例えば、米国は診療から薬配達までそれぞれ異なるアプリが市場を掌握しているため、消費者は複数のアプリを転々としながら遠隔医療を受けることになる。ドクターナウでは一度に行われる。

「創業した理由ですか?少し長くてもいいですか?令和元年9月に法人を設立しました(当時、チャン代表は漢陽大学医学部を休学した22歳の青年だった)。おじいさんの影響でしょうか。祖父がマラソンの国家代表かつ特殊部隊在籍経験のある常備軍(常に軍に出ていける体制でいる)出身であったことなどもあり、家の雰囲気が社会感と言うかそういう部分がちょっと強かったです。小学生の時は元々、全国民が毎週土曜日にはボランティアをしていると思っていました」

「当時大田(テジョン)に住んでいましたが、高校1年生の時大田駅近くのホームレス医療ボランティアセンターでボランティアをしたんです。医師・薬剤師の先生たちがホームレスの健康を診てあげますが、高校生のボランティアは重宝がられました。

体の不自由な障害者の代わりに薬を届けてあげたり。奉仕するお医者さんも薬剤師さんも患者さんもみんな良かったです。遠隔診療を間接体験した格好ですね。その時決めました。遠隔医療、私は医者になってこれをしなければならない。もちろんその時は創業までしなければならないとは思ってもみませんでしたが。勉強頑張って医者になることにしようと」

高校1年生の正義感は大体一か月が関の山のはずだが、チャン代表は医大に合格した。入学も勿論簡単ではなかった。

「医大だけで6か所を志願しました。面接に行くとほぼ決まった質問があって、『君はなぜ医者になろうとしているのか』。『何科をしたいか』でした。当然、私は遠隔診療をしたいと答えます。そうすると雰囲気が変になるんです。知りませんでした。医師社会は様々な理由で、遠隔診療に反対するという事実を。全部落ちて漢陽(ハンヤン)大学医学部にだけ合格しました。漢陽大学医学部は珍しいことに面接がなかったんですね」

「私の家で私が最初の医大生なんですけど、本来家に医者が一人いればいいんじゃないですか。それが分かりました。勉強中に目が赤くなって何かが入ったようなら、目の写真を撮ってカカオトークで眼科の先輩に送るとすぐ連絡が来ます。サッカーをしていて捻挫したら、すぐに知人が駆けつけてきて措置をしてくれたり…。実際、医師同士は遠隔診療をしているわけです。医者がいなかった家で生まれたら、医者に会うのもこんなに大変でしたが、医学部に入ってみると医者たちに楽に会えます。すべての人がそうだったらいいなと思いました」

「大学1年生の時、アメリカのテラダックという遠隔診療会社に行ってみました。遠隔診療会社に直接行ってみたかったです。米国ハーバード医大、スタンフォード病院では遠隔診療をどのようにするのか気になりました。4年前には日本にも行きました。日本の遠隔診療スタートアップに行って、何が大変なのか尋ねました。その時が日本が再診から遠隔診療を許容した時点でした」

――創業した2019年、その時までは遠隔診療は不法という認識が韓国では強かった。COVID-19のせいで一部規制が緩和されましたが

「OECDをみても韓国も遠隔診療を解除するだろうと信じていました。国民総医療費が上がっていて、したがって健康保険料も上昇しているのに、政府としては病気が広がって手術して大金が出るより、何とか予防で防ぐことが目標になるのではないでしょうか。G7も初診から遠隔診療をしていて、今はOECDも全部やっているから。韓国も3~4年内にはそうなるしかないと考え、2019年9月に会社を設立しました。医学部に通いながら、チームを組みました。本当に始めたのは2019年12月です。創業チームはその時4人でした」

――本人はそれにしても、当時不法な遠隔診療で創業しようと、他の創業チーム3人をどのように説得しましたか

「普通の医大生じゃないですか。誰が一緒に創業しようと思いますか。医学部の授業はたくさんサボって、工学部やデザイン科の講義をたくさん聞いたんです。デザイン聴講中にデザイナーの教授が世界3大デザイナーアワードというのがあるんだが、その賞をもらったらLGやサムソンのようなところにすぐ入ることができると言ってました。夢を見ました。私が世界3大デザイナーアワードをもらって授賞式に行けば、私のそばにはLGとサムソンデザイナーたちがいるのではないかと。彼らを通じて創業チームのデザインメンバーを紹介してもらえるのではないか、と」

「一晩中、医療機器のようなデバイスのデザインをしました。大体コンセプトスケッチをして、デザイン科に通う友達に10万ウォン払って修正をお願いします。とても運が良くて世界3大デザインアワードの一つであるIDEA本賞を受賞しました。2019年創業前のことです。私の記憶では医者としては世界で初めてだと思います、が、あ、私はまだ医者ではないですね。ハハハ。ところで学校の試験が重なって授賞式には行けませんでした。受賞者の集まりなどで創業チームのデザイナーを紹介してもらいました」

「私は開発が苦手なんで、開発サークルに入りました。隣に座っている人が開発神童だそうです。ハハハ。大学のすべての建物に、『遠隔診療と薬配達するんだけど、一緒にやりたい人』の公告を貼りました。ネイバーでインターンをしていた友達が公告を見て訪ねてきました。説得しました。ネイバーにはお前一人がいても何をしているか誰も関心がないけど、これは本当に時代を変えることができる。そのようにして4人の休学生が創業しました。医大生とエンジニア2人、デザイナー1人」

――創業した翌年の2020年、コロナパンデミックが来ましたよね?

「2019年12月に創業チームをセッティングしましたが、3か月後に新型コロナウイルス感染症が発生し、福祉部が非対面診療を明示的に許可しました。薬の配達もです。利用者がたくさん増えました。

当時、小さすぎた時だったので、そのトラフィックに耐えるのも大変でした。サーバーも爆発して大騒ぎでした。そういう過程を経て、今はあの時とは比べ物にならないほど体力もたくさんつきました。ドクターナウで診療をひき受けてくれるお医者さんもすごく増えました。今年が2022年だからあれから3年ですね」

「ドクターナウは一言で説明すると遠隔診療と薬配達サービスを行います。これを基盤に医療消費者を集めて具合が悪くなった時に思い浮かぶ、医療スーパーアプリになることが目標です。法人は設立して3年になり、ドクターナウというサービスが出てから1年半ちょっと過ぎました。職員は75人ぐらいです」

「非対面で電話や画像で医師と会う遠隔診療を受けることができ、その次に薬も1時間以内に配達してもらえるサービスです。すべての病気を対象とします。麻薬類のような処方を除いて。最近は、医療消費者に本人の10年分の健診データをアプリで見るサービスも提供しています。10年分の病院訪問履歴や薬局でどんな薬を何日分処方されたのかもドクターナウアプリで示しています。リアルタイム健康相談サービスも行っています」

「こういう時があるじゃないですか?例えば、お酒を飲んで今頭が痛くて薬を飲まないといけないのに薬局で何を買えばいいのか知りたい時。私たちが直接パートナーのお医者さん、看護師の先生数人を雇用して、このような質問に5分以内にリアルタイムで答えてあげます。無料です。

簡単に言えば医療関連知識人と同じです。知識人は毎日病院の広告しかない上、今日質問すると4~5日後に返事が来ますが、ドクターナウは24時間サービスなので、いつでも5分以内に答えることができます。留学生たちもこのサービスをたくさん利用しています。言わば医療関連の、無料遠隔相談ですね」

IT大国の韓国であるが、これまでは遠隔診療というものがなかったのには驚いた。ドクターナウが牽引車となって急速に広まっていくものと思われる。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年10月5日号)

image by: Shutterstock.com

キムチパワーこの著者の記事一覧

韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 キムチパワー 』

【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け