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「蒋介石のひ孫」を選ぶのか。台湾の未来を決める台北市長選の行方

11月26日に投開票が行われる台湾統一地方選。2024年の総統選の試金石と位置づけられている重要な選挙ですが、中でも台北市の市長選に大きな注目が集まっています。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、候補者3名のプロフィールを紹介。さらに人気を集めている蒋万安氏の曽祖父・蒋介石が台湾国民に対して働いた所業を明らかにするとともに、蒋氏があくまでも中国寄りの国民党の候補者であることを強調しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年10月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。 

中国に飲み込まれるか、民主主義を維持するか。台湾総統選の前哨戦・台北市長選挙の行方

蒋介石のひ孫やコロナ対策英雄…台北市長は誰に

10月5日時点で、台湾は選挙まであと52日です。選挙戦は日に日に加熱しており、蔡総統を筆頭に応援者や候補者たちはあちこちで該当演説に走り回っています。

桃園市長候補者の一人である国民党の張善政氏は、応援者になんと元高雄市長の韓國瑜氏を起用したようです。これを受けて、立法委員も務めたことのある林濁水をはじめ、様々なメディアが、韓國瑜を味方につけた張善政は無敵だなどと皮肉っています。

今回の選挙は、「直轄市を含む22県・市の首長や地方議員など計1万1,023人を選出」します。この結果が総統選挙に大きく影響するため、今や台湾は選挙一色です。

台湾統一地方選の大枠発表 総統選の前哨戦、既に熱気

そして、今回の目玉のひとつが台北市長選です。候補者は、「新型コロナウイルス対策で陣頭指揮を執ってきた前衛生福利部長(厚生労働相に相当)の陳時中氏(民主進歩党)、台湾の初代総統、蒋介石のひ孫で立法委員(国会議員)の蒋万安氏(中国国民党)、副市長だった黄珊珊(こう・さんさん)氏(無所属)の3氏が立候補し、激戦が予想される」。

蒋介石のひ孫やコロナ対策英雄…台北市長は誰に

前回の統一選で大敗を喫した民進党は、今回も苦戦が予想されています。中でも台北市長は、「現総統の蔡英文氏以外の李登輝氏、陳水扁氏、馬英九氏はいずれも台北市長を経験している」ことから、「今年の統一地方選は、2024年の総統選の前哨戦と位置付けられて」います。

蒋介石のひ孫やコロナ対策英雄…台北市長は誰に

民進党の候補は陳時中氏。ご存知、衛生福利部長としてコロナ対策の中心人物として、毎日記者会見をしてきた人です。コロナを抑え込んでいた当初は、陳氏は英雄扱いされましたが、今となってはその存在感は薄れています。

黄珊珊氏は、台北市の現役の副市長であり、柯文哲市長の片腕として辣腕をふるっています。もう一人は、蒋介石のひ孫ということと、若さとさわやかな笑顔がウリの蒋万安氏。

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今や、台湾ではかつての白色テロを知っている世代はかなり少なくなっています。同時に、蒋介石が台湾人を虐殺したという史実も人々の意識からは薄れてきており、このひ孫君の人気はかなりのものです。

特に、民進党の勢いが落ち、中国との関係がカギとなる政局にあって、現状維持を望む大半の台湾人は、中国を刺激しないような人物を選ぶ可能性は大きいでしょう。

民進党政権になって、アメリカとの距離が近づいた半面、中国との距離は広がりました。そのバランスをうまく取ってくれる人物として、蒋万安に期待する人は少なくありません。

しかし、台湾が蒋介石一族から被った悲劇を忘れてはいけません。蒋介石一族は、台湾を私物化し、台湾人を虐殺しました。世代が変わっても、歴史は変わりません。蒋万安は、アメリカのペンシルバニア大学出身であり、国際派としての一面もアピールしていますが、あくまでも中国国民党の候補者です。

ここで、蒋介石が行った白色テロについて振り返ってみましょう。

1895(明治28)年、日清戦争の結果、下関条約によって台湾は清朝から日本に割譲されました。その後、第2次世界大戦で日本がポツダム宣言を受諾して台湾から去ったことで、中華民国によって占領され、現在に至っています。

しかし、日本による統治時代に近代化、文明化を果たした台湾人にとって、中国人の無知蒙昧ぶりは信じられないものがありました。たとえば、台湾は日本時代に上下水道が完備しましたが、大陸から渡ってきた中国人たちは、蛇口をひねれば水が出るのを見て、こぞって蛇口を買い、壁に取り付けました。そうすれば水が出ると本気で思っていたのです。

こうした本省人(元からいた台湾人)と外省人(大陸からやってきた中国人)の文化摩擦によって起きたのが、1947年2月28日の「2・28事件」です。発端は中国人の役人がタバコ売りの女性に暴行を加えてことにより、無知な中国人に支配されることに耐えられなくなった台湾人の怒りが爆発、各地で抗議デモが発生しました。国民党政府はこれを武力で鎮圧し、約3万人もの台湾人が殺害、処刑されたのです。

その時に発せられた戒厳令は1987年まで数え39年も継続され、知識人らに対する弾圧と恐怖政治が続きました。この恐怖政治は「白色テロ」と呼ばれ、1988年に李登輝総統が誕生して1990年代に民主化が実現されるまで、2・28事件については語ることすらタブーとされていたのです。

こうした歴史の記憶が薄れ、中国との距離の取り方が難しい今、有権者も難しい判断が迫られる選挙となりそうです。

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image by: 蒋万安 - Home | Facebook

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