10月9日の『ハングルの日』に開催された「韓日交流作文コンテスト2022」と「ハングルカリグラフィー公募展」。韓国在住歴30年を超える日本人著者が発行するメルマガ『 キムチパワー 』では、受賞した中から注目の作品を紹介しています。
太極少女たちのチキン
10月9日は韓国の「ハングルの日」である。1446年10月9日に世宗大王(セジョンデワン)がハングルという文字を頒布(発表のこと)してから今年で576年となる。世界の文字の中で一番若い文字ハングル。
このハングルの日を迎えて駐日韓国文化院が開催した「韓日交流作文コンテスト2022」と「ハングルカリグラフィー公募展」に計3,663件が応募し歴代最多を記録したと駐日韓国文化院が9日明らかにした。ハングル作文部門には3,217点、カリグラフィー部門には446点が応募した。
作文部門最優秀賞は船橋弘信さん(53)が書いた「韓国語講師の憂鬱と夢想」が受賞した。板門店と休戦ラインが消え軍事境界線を散歩する日が来ることを夢見て韓国語を教えているという話だ。韓国を愛する心と韓日葛藤に対する心配を「ラブレター」で機知に富んだ表現をしたエッセイ「ラブレター」を書いたゴン・ミナさん(20)が優秀賞を受賞した。
日本女子サッカー代表チームの新田萌夏選手も佳作を受けて注目を集めた。「太極少女(テグクナンジャ=韓国女子のこと)となでしこジャパンをつなぐチキン一切れ」というエッセイで、新田選手は「ネットを揺らしながら韓国語の勉強に喜びを感じる人が日本の地に何人いるだろうか。あまりなさそうな数字に私が入っていてなんとなく嬉しい」と書いた。
彼女は3年前の韓日戦を控えた前日、「太極少女数人が私たちの部屋をノックして『チキンとコーラがあるけど、いかがですか?』と分けてくれた。ライバルの我々に」と書いた。チキンと太極少女たちの配慮のおかげで遠征試合の緊張感が解け、翌日最高のコンディションで試合をすることができた。当時の試合で勝利した新田選手は「ごめん、太極娘!」と書いた。
彼女は「3年間も試合ができなかった私たちだが、いつかまた会って一緒に汗を流したい」として「チキン一切れから始まった感動を、韓国と日本の皆さんと一緒に共有できたらどんなに良いだろうか」と書いた。
エッセイの中高生部門の最優秀賞はやや重いテーマである戦争と平和を扱った「デイジー花壇」だった。山口県立天口高等学校に通う久保直香さんが書いたこのエッセイは、「平和とは何だろうか?」という話題を投げかけた。久保さんは「この世は平和だと思う」とし「時にはゴロゴロすること、韓国語を勉強すること、味方がいること…。日常のささやかな幸せ」と書いた。彼女は「この世の花壇がデイジーで溢れるまで、私たちお互いにデイジーの花を渡しあおうよ」と書いた。ウクライナ戦争に言及しなくても、平和を書いた部分が高い評価を受けた。
「ハングルカリグラフィー公募展」には単語が持つ意味と性格を絵画的に表現した作品「受験」(ジョン・ギブソン、32)が最優秀賞、ハングルの母音をキュウリの絵で絶妙に表した90歳のおばあさん川口能恵(90)さんの作品「キュウリ」が優秀賞を受賞した。16歳の本花さんが空と紙飛行機を重ねる躍動性の中に書き入れた「行こう」というカリグラフィーも入賞した。
駐日韓国文化院は15日までに受賞作であるエッセイ49点とカリグラフィー26点を東京にある韓国文化院で展示する計画だ。駐日韓国文化院のコン・ヒョンシク院長は「韓国文化を大切にする日本人の暖かい心を感じた」として「韓日関係が良くなることを願う大切な気持ちが韓日の多くの政治家にも伝わってほしい」と話した。
(無料メルマガ『キムチパワー』2022年10月12日号)
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