MAG2 NEWS MENU

労働者を迎える国から「出稼ぎに行く国」へ。円安で剥がれた日本の“化けの皮”

30年ぶりの円安により、諸外国との賃金格差が拡大し、ワーキングホリデーなどで“出稼ぎ”に行く人たちの話題がメディアで取り上げられるようになっています。国内に目を向けると、技能実習生の制度などで国連にも指摘されるほど劣悪な環境下にある外国人労働者の状況は相変わらず。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で、健康社会学者の河合薫さんは、出身国以外で働く労働者への調査で33カ国中総合32位、最下位の項目も多数あることを指摘。円安によって人手不足の頼みの綱だったはずの外国人労働者にも見捨てられる状況にあると警告しています。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

円安が開けた「パンドラの箱」

ついに、本当についに、日本は安くて、貧しい国になってしまいました。

世界経済フォーラムによると、日本の全国平均時給はわずか961円なのに対しルクセンブルク約2353円、オーストラリア約2009円、ドイツ約1759円、イギリス約1610円、アメリカは約2220円と、一桁違うのです。日本から海外に出稼ぎに行く人が増え、日本で働きたい「外国人労働者」は減ってきました。

とはいえ、これらは「今」、あるいは「円安」が原因で起きているわけではありません。外国人労働者が技能実習生という名の下、低賃金、重労働の仕事を強いられ、非人間的扱いを受けてきたことは周知の事実です。

技能実習生の待遇が社会問題化した2014年だけでも、実習実施機関に3918件の監督指導を実施。そのうちの76%で労働基準法関係法令違反があり最低賃金のおよそ半分である時給約310円での業務従事や、月120時間の残業、さらには安全措置が講じられていない就労があったこともわかっています。

数年前から国連の人種差別撤廃委員会から「劣悪かつ虐待的、搾取的な慣行」と指摘され続けてきましたし、米国国務省の報告書では「強制労働」の文言が使われることもあった。なのに日本は何もしてこなかった。やっと…本当にやっと政府は今年8月、外国人技能実習制度を見直す方針を表明し、そこにきての円安です。原因は円安が問題ではないのです。

しかも、「外国人」に対するひどい扱いは技能実習生だけではありませんでした。おそらくそんなリアルを反映しているのでしょう。コロナ前の2019年に公表された「英金融大手HSBCホールディングス」の調査では「日本のオワコン」ぶりが明らかになっています。

この調査は、出身国以外で働く労働者1万8千人に、「生活」「仕事」「子育て」の3分野15項目について評価してもらっているのですが、日本は総合ランキングで33カ国中32位と、またもやほぼビリ。ギリ“ブービー”でした。

【生活】

【仕事】

【子育て】

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

つまり、「日本という国はね、結構、いいところだよ。ただね~、そこで生活するってなると話は別なんだよなぁ。結構、みんな冷たいんだよね~。しかも、給料安いし、仕事ばっかだし。子育てするのも不安なことが多いからなぁ~」と、極めて厳しく評価されていたのです。

日本人は、外国人が「お客様」のときには、日本人独特の気づかいでもてなし親切にします。ところが、その外国人が「労働者」となった途端、とんでもなく冷たくなる。日本は「生活者」としての外国人労働者を受け入れてきませんでした。

しかも、人材が足りない現場は、大抵の場合、日本人が嫌がるほど過酷な現場です。「だったら外国人を!」と、いや「だったらアジアの外国人を!」と外国人労働者政策を進めてきた。ずーっとずーっと「低賃金で働く外国人」を求め、経済を回してきたのです。

要するに、円安はただ単に“パンドラの箱“をあけただけ。これまで箱におしこまれていたさまざまな問題が、円安でいっきに噴き出しただけにすぎません。低賃金で暮らしにくい国ニッポンは、円安で生活すらできなくなってしまったのです。

事故や病気で亡くなる技能実習生・研修生のうち全体の3割が「過労死」する国を、誰がわざわざ選んでくれるでしょうか。

2021年になっても、全国の実習実施者に対する監督指導の結果、約70%で労働基準法令違反が認められている。この現実を日本は、日本人はもっと深刻にとらえた方がいいと思います。円安のせいにするな!と。

日本を愛してやまなかったドナルド・キーンさんは、「私が懸念しているのは、日本人は私がいかに日本を愛しているかを語ったときしか、耳を傾けてくれないことだ」と嘆いていました。

みなさまは、この問題についてどのようにお考えでしょうか?是非ともご意見、お聞かせください。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Shutterstock.com

河合 薫この著者の記事一覧

米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』 』

【著者】 河合 薫 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け