アメリカだけでなく、韓国・中国でも高騰している人件費、そのため日本国内の人材流出は避けられない状況になってきています。そこで今回は、メルマガ『倒産危機は自力で乗り越えられる!』 by 吉田猫次郎』の著者で事業再生コンサルタント、作家、CTP認定事業再生士の顔を持つ吉田猫次郎さんが、中小企業が今後陥るであろう危機について予想しています。
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世界中で人件費が高騰。 日本の中小企業はどうなってしまうのか?
世界中で人件費が高騰しています。アメリカは言うに及ばず、韓国や中国でも上昇トレンドが続いています。
といったようなニュースも、よく見かけるようになりました。
大卒の初任給も、日本では長年にわたって大卒20万円以下が続いていますが(そのかわり終身雇用が前提なのも長年変わりませんが)、海外では、終身雇用を約束しないかわりに、初任給からいきなり40万円強や、GAFAクラスにいたっては初任給600万/年に加えて入社時ボーナスなどを合わせて新卒社員に年1,500万円以上を約束するなど、大変な格差が出てきています。
こうなると、人材流出も避けられないことでしょう。日本の優秀な学生さんが、国内企業や公務員を目指さずに、卒業後いきなり海外企業へ就職することも珍しくなくなると思います。
それだではありません。
これまで東南アジアなどの国から「出稼ぎ」で日本に来ていた人たちも、これからは日本を目指すことが減り、もっと給料のいい国を目指すことでしょう。英語圏や中国語圏のほうが言葉の壁も少ないでしょうし。
日本は治安がよくて清潔でいい国ですが、お金を稼ぐのにはあまり適さない国、とみなされていく気がしてなりません(観光客や買い物客は10月11日の規制緩和を境にさっそく増えているようですが)。
となると、私たち中小企業はどうなってしまうのでしょうか?
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パッと想像しただけで、もうお分かりですね。
そうです。人件費高騰です。
・物価が上昇している。
・諸外国の賃金がいちじるしく上昇している
・人材流出も避けられない
・外国人労働者の人数も減る
・となると、日本では慢性的な労働者不足が起こる
・全体的にも人件費高騰トレンドが避けられない
・業種や事業規模を問わず
…と、なりそうです。
私の顧問先には、労働集約的な業種を営んでいる方が沢山いますが(運送業、警備業など、原材料費は低いが、労務費の比率が著しく高い業種)皆さん戦々恐々としています。人材は確保できるのか?労務費はどれだけ上がるのか?と。
銀行向けの経営改善計画書を描く際にも、人件費を5年先まで「横ばい」で書くのは、もはや通用しないかもしれません。人件費は増加傾向で描いたほうがいいでしょう。もちろん、賃金だけでなく、通勤にかかる交通費や、福利厚生費、残業代、法定福利費なども、それに比例して上昇します。
悲観的なことばかり書きましたが、この現実を受け止め、中小企業が生き残るためには、そもそもの話、「人の雇い方」を考え直したほうがいいかもしれませんね。
例えば、美容室の業界では、経営者が美容師を雇用せず、「面貸し」といって、いわゆる雇用契約でなく業務委託契約で売上のウン十%を支払うという取り決めで採用している事がよくあります。弁理士や税理士のような士業の先生の事務所でも、それとよく似た採用方法をよく見かけます。
雇用契約をするにしても、賃金上昇が避けられないなら、外資系やプロスポーツ選手のように、契約期間を1年単位にして毎年見直すなど、従来の日本企業の習慣から離れて、大きく見直す必要があるかもしれませんね。
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