私たちが普段何の疑いもなく口にしている、飲食チェーン店で供される料理やスーパー等で売られている惣菜・冷凍食品。しかしそれらに使われている食材の出自を把握している方は、ごく少数なのではないでしょうか。今回のメルマガ『神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図──政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる!』では投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹兵輔さんが、大量の中国産食材のほとんどがきちんとした検査も受けずに日本で流通している事実と、その「行き先」を紹介。さらに「食の安心・安全は自己責任で確保する他ない」と、我々消費者に注意を促しています。
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毒まみれ外食・中食・加工食業界の食品素材。トレーサビリティを徹底しない農水省と厚労省の深い闇
みなさま、こんにちは!「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。今回のテーマは、「毒まみれ外食・中食・加工食業界の食品素材とトレーサビリティを徹底しない農水省と厚労省の闇!」というテーマでお届けしたいと思います。現在、日本でもロシアによるウクライナ侵攻や円安による物価高騰が、庶民を苦しめています。そうした中、ますます需要が高まっているのが中国産食品です。それは、何といっても価格が「安い」からに他なりません。そして中国は、距離的に日本に近いこともあって、輸入が必然的に増える理由でもあるのです。
中国産食品の輸入額は、2010年に約7,000億円だったものが、2021年には約9,000億円と3割も増えています。日本は25年もの長きにわたって、賃金が下がり、物価も上がらないデフレにさらされ続けてきました。しかし、日本にもインフレの足音が聞こえ始め、あらゆる物価が高騰し始めています。様相が変わってきたのです。ゆえに安い中国産食品が、ますます存在感を強めています。今回は輸入食品の危険な実態について、私たちもひと通り知っておく必要があるでしょう。
外食・中食・加工食品にはびこる「毒まみれ中国産食材」!
スーパーの店頭では、ほとんど見かけない中国産の食材ですが、実はあらゆるところに、中国産の食材が、ほとんどNOチェックで並んでいます。外食のレストランやファストフード、中食にあたるスーパーやコンビニのPB食品や弁当類、総菜類、加工食品や冷凍食品、缶詰類には、中国産の野菜や肉類(豚・牛・鶏)、甲殻類、豆類などとその食材加工品がてんこ盛りだからです。
何といっても、中国産食材は、国内産と比べて安いからに他ならず、たとえば野菜は、国産と比べても平均して4~6割も安いのです。日本の野菜の国内生産額は約2兆4,000億円にのぼりますが、これとは別に輸入野菜約6,000億円が加わり、国内流通野菜全体の20%近くがすでに輸入野菜になっています。この輸入野菜のうち、5割を占めているのが中国産(流通野菜全体の10%程度)なのです。
実は、輸入野菜が危ない──というのは、中国産に限った話ではありません。ただでさえ、畑で農薬まみれの上、輸入野菜は船で運ぶため、ポストハーベストという問題がつきまとっているからです。これは、収穫後の輸送中に使う防カビ剤や殺菌剤、防虫剤のことです。
畑で使われる農薬とは区別され、食品添加物に分類されますが、催奇性や発がん性が問題視されるため、諸外国でも日本国内でも、流通する国内産の野菜や果物類への使用は禁止されています。畑で散布される農薬の数十倍の濃度になるため、残留度が非常に危険視されるからです。
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輸入時の検疫チェックはたったの1割、残り9割は書類審査だけでスルーしている!
残留農薬や違法薬剤のチェックは、行われているのか──といえば、10%程度しかチェックされていません。しかも、チェックはしても、モニタリングなので流通をストップさせるわけではありません。結果が出るのは数日後で、クロと判明した場合でも、すでに外食・中食・加工食として提供され、消費者の胃袋に収まってしまっている──というのが実態なのです。
そして残りの90%は、書類チェックで素通りしています。検疫職員の絶対数不足(全国32か所に三百数十名しかいない)でどうにもならないからです。
相手国任せの「食の安全」!
建前だらけのモニタリング検査ですが、検疫所を管轄する厚労省は次のような項目だけは、もっともらしく検査項目に挙げています。
- 抗生物質、合成抗菌剤、ホルモン剤等の残留動物用医薬品(抗菌性物質等)
- 有機リン系、有機塩素系、カーバメイト系、ピレスロイド系等の残留農薬
- 保存料、着色料、甘味料、酸化防止剤、防ばい剤(カビ防止)等の添加物
- 腸管出血性大腸菌、リステリア・モノサイトゲネス、腸炎ビブリオ等の病原微生物
- 成分規格で定められている大腸菌群等の成分規格
- アフラトキシン、デオキシニバレノール、バツリン等のカビ毒
- 安全性未審査の 遺伝子組み換え食品 の使用の有無
- 認められていない放射線照射の有無
これだけチェックしているといっても、全体量のたった10%程度のモニタリングチェックにすぎません。水際で食品をストップさせて行う検査でない限り、食の安全性が保たれているとは、とても言えない状況なのです。輸出相手国や輸出業者の「良心」に頼っているだけです。検疫チェックに当たっている食品衛生監視員いわく、「輸入食品は日常生活では食べないようにしている」という雑誌の座談会での発言が信憑性をもつゆえんです。
厚労省のHPでは、輸出国での対策も実施しており、日本の規制に合った生産、加工、製造の管理が行われ、輸出国の証明書が付き、輸入前チェックも行われているから問題ない──と強弁しています。しかし、中国は、これまでの悪しき経緯からも、信用できる体制が整備されているとはとても言い難い国でしょう。
モラルの低い中国では「毒食流通」が当たり前の日常!
偽装、すり替え、毒物混入、不衛生、賄賂、拝金志向…などなど、中国国内での食の安心・安全さえ守られていないのですから、お寒い話なのです。すでに中国の富裕層は、自国産食品を出来るだけ食べず、日本などからの輸入野菜や食材を求めるのが当たり前になっているそうです。ポストハーベスト問題があっても、自国産よりマシだと考えているようなのです。自国産でなければ気にしないのです。中国人自身が、自国産の食材には、とことん信用を置いていないわけです。
中国産の食材を「安い」からといって、ありがたがって食べているのは、貧乏な日本人や貧乏な現地中国人だけという構図になってしまっています。厚労省によれば、2020年度の輸入食品の食品衛生法違反は、中国が最も多く、違反件数全体での割合は24.2%です。違反件数の4分の1を中国が占めています。次いでアメリカが17.8%、ベトナムが7.6%、インドが5.9%、タイと台湾が4.8%となっています。輸入食品は、はっきりいって「毒まみれ」といってよいのです。検査を増やせば増やすだけ、食品衛生法違反の件数は増える傾向にあるのに、検査数が異常に少ない現状は、非常に恐ろしい状況というべきでしょう。かつて、中国産野菜は、残留農薬の基準値を大幅に上回って大問題になりました。スーパーの店頭に並べても売れなくなったのはそのせいです。
今でも中国国内では、毒食事件には事欠かず、国民の多くが自国産の食品に疑いをもっている状況ですから、むべなるかな──なのです。
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「原産国表示」を徹底しなければ「食の安心・安全」は無理!
かつて、農水省はどこの国も使っていない「カロリーベース」といった指標を独自に作り、日本の食料自給率は4割しかなく、食料安保上、極めて懸念が大きい──などとしてきました。しかし、世界標準の「生産額ベース」では、水産品を除く農業生産額(野菜の他に米や畜産品など)だけでも8.8兆円もあり、日本は、中国、アメリカ、インド、ブラジルに次ぐ世界5位の農業大国でした(今では生産額ベースでも表示)。省益を守るべく平気でウソをつく官僚たちですから、輸入食品の検疫についても、どれだけ精緻に行われているのかも信用できないのです。
中国にはトレーサビリティなどなく、どこで誰がどう作ったか──などは、まったくわかりません。私たち日本人が、食の安全を守るためには、外食、中食、加工食品すべてにおいて、原産国表示を徹底するよう法律の改正を求めるよりないでしょう。
食材の産地を明らかにしていない外食や中食、加工食品は、今後一切利用しない──といった断固たる消費者の行動で、日本の食の安心・安全を図っていく他ありません。
奇怪な加工・替え玉・代替食品も横行!
日本は1997年頃から、恒常的なデフレに陥りました。物価が下がるだけでなく、賃金も下がるスパイラル(らせん・渦巻)構造でした。飲食店も、個人経営では仕入れに限界があり、立ち行かなくなります。価格を抑え、格安を売りにしたチェーン店でないと生き残れないわけです。
そうした飲食店の食材費の原価は、30~35%が適正とされています。人件費を削り、食材原価を削って低価格に徹してきた飲食店チェーンも、昨今はブラック呼ばわりでスタッフも集まらず、人件費高騰に抗えず、食材原価の圧縮も限界、そのうえ不景気ですから、ますます苦しい戦いになってきています。
デフレで磨かれてきた高度な食品加工技術!
そんな外食産業の裏側では、デフレ生き残りのためのさまざまな工夫がありました。そのへんの知られたくない、涙ぐましいウラ事情もここで見ておきましょう。外食チェーン店のビジネスモデルは、徹底したコスト削減策にあります。前述したように、肉も野菜もとにかく安ければよいと輸入モノを使います。毒まみれだろうが、無検疫だろうが、そんなことは外食チェーン店にとっては、知ったことではないのです。お客が食べて、その場でいきなり死ぬわけではないのですから、安い食材を使うしかないからです。さらに食材費を落とすため、本物を巧妙に加工して別物を作る技術も磨かれています。たとえば、安い赤身の牛肉を高級な霜降り肉に変身させたり、細かい端切れ肉をつないで、ステーキ肉や焼き肉用の塊り肉を作っています。
赤身の牛肉は、ベルトコンベアーに載せられて、液状化させた牛脂が数十本の針で次々と注入されます。これで偽装肉(インジェクション肉)が作られます。また、細かい端切れ肉は、結着剤(リン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、増粘剤)で混ぜ合わせて、圧をかけると肉塊が出来上がります。これで、ステーキや焼き肉用として提供できるわけです。素人がみても、もちろん、まったく成型肉と本物の区別は出来ません。
安い焼き肉店チェーンは、このおかげで営業ができるわけです。ハンバーグや肉まん、餃子の具、ミートボールなども、クズ肉のミンチを、大豆たんぱくなどの練り物と混ぜ合わせ、固めて作ります。これを仕入れて外食の提供料理や中食の総菜や弁当に使うのです。そもそもアメリカや豪州などの牛、豚が安いのは、成長ホルモンの微細カプセルを耳に打ち込まれた家畜のために、飼料代も軽減されるからです。EUは、成長ホルモン使用の家畜の輸入は禁止していますが、日本はアメリカに逆らえないので、安全性に疑問符が付いていても、輸入禁止には出来ません。
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安い古米や古古米も「おいしいごはん」に早変わり!
スーパーなどの格安弁当や回転寿司に使う米でさえ、食材の原価率を下げ、添加物で色合いを新鮮に見せる工夫があります。安いのは、古米や古々米ですが、これを削って粒を小さくし、この米を長時間、ショ糖エステルなどの乳化剤、グリシンや果糖ブドウ糖液を加えた水に漬けこむと、粒が膨らんで大きくなるのです。
これを、増粘多糖類や大豆油などを加えて炊くと、モチモチ感たっぷりで、冷めてもおいしく、時間が経っても黄色くならない真っ白なお米になります。あるいは、古米や古々米を、次亜塩素酸水溶液で漂泊して、色や臭みを一気に抜いてしまうという昔からの伝統加工技術もあります。安い価格で、外食や中食、加工食品が提供されるのは、このように世界最高水準とまで言われる日本の食品加工技術のおかげなのです。
つまり、偽装食品のオンパレードだからこそ、日本の食は安くてオイシイというわけです。もちろん、人体への悪影響はなく、安全とされているのは当然のことですが、30年~50年経たないと本当の影響はわからないでしょう。
回転寿司ネタは「代用魚」だらけ!
回転寿司で、お皿に載って回っている寿司ネタも、本物でないものが沢山あります。有名なのはエンガワでしょう。
エンガワ の本物は、ヒラメのエンガワなのですが、わずかしか取れない部位なので本来は高価です。そこで、カラスガレイやオヒョウと呼ばれる魚を代用魚とし、安価でおいしいエンガワがいただけます。表記はもちろん、「えんがわ」なのです。「縁側(えんがわ)」どころか、「ベランダ」といってよいほど別物なのにです(親父ギャクで失礼しました)。面白いものではアナゴもあります。これも本物のアナゴは使いません。クロアナゴという別種か、ウミヘビを代用魚として用いています。マグロと思って食べているのはガストロというスズキ目・サバ科の大形魚か、アカマンボウ、アロツナスという代用魚です。
ブリはシルバーワレフ、もしくはオキメダイです。赤貝はアメリカイタヤガイ、ヤリイカはヒメジンドウイカ、アジアジンドウイカです。サーモンはニジマスです。カンパチやハマチと称しているのはシイラやスギです。タイはナイルテラピア、アメリカナマズです。甘エビはアルゼンチンアカエビです。いずれにしろ、本物でない代用魚が沢山活用されています。
JAS法には、原材料や原産地の一定表示の義務付けがありますが、外食やインストア加工品については、そうした表示義務がないからです。とまれ、原産地や原材料のトレーサビリティは明確になされていないのが、日本の現状です。
自分で考え、自己責任で「食の安心・安全」に務める他はないでしょう。安いからといって、喜んでいてはいけないのです。では、今回はこのへんで。
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image by: TY Lim / Shutterstock.com