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アベノマスクは含まず。コロナ対策事業で102億円も税金をムダにした自民党

会計検査院の調査により明らかになった、新型コロナ対策事業の不適切支出。「病床確保事業」では55億円もの払い過ぎがあった一方、中小企業の命綱「事業復活支援金」は執行率が2割を切るなど惨憺たる有様が露呈しましたが、何がこのような状況を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、その理由として「思いつき対策のオンパレード」と言っても過言ではない政府の対応を挙げるとともに、今後の国のコロナ対策への不安を記しています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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日本のコロナ対策とは何だったのだろう

「コロナ対策・無駄」―――。

昨日(8日)の朝刊やニュースで、繰り返し報じられた“見出し”です。

2019年~21年度の新型コロナウィルス対策の18事業のうち、税の無駄使いや不適切利用が、102億円もあったことが、会計検査院の2021年度決算報告で明らかになったと報じられたのです。

21年度までの支出は総額76兆億5,000億円で、執行率は80.9%。法令違反にあたる「不当事項」は10事業で、コロナ患者の受け入れを増やすための「病床確保事業」では、55億円もの払い過ぎがあったことがわかりました。

かねてからさまざまな問題点が指摘されていましたが、払い過ぎの原因に「制度の理解不足」があるとか。お粗末としかいいようがありません。

また、使う見込みがなくなった「不用額」は13兆3,254億円、「未執行予算」は18兆円。不用額が最も多かったのは、「GoToトラベル」、執行率が低かったのが、中小企業などに支払う「事業復活支援金」とのこと。事業支援金は、わずか18.9%しか使われておらず、「委託先が審査業務を担う人員を想定の6割強しか確保できず、審査が遅れたため」という耳を疑うような理由です。

事業復活支援金は、体力のない中小企業にとって「命綱」となる事業でした。なのに…、委託先の人員不足って。まったくもって理解できません。その前に配られた一時支援金・月次支援金では、不正などが多く見つかったため、税理士などの専門家(登録確認機関)による事前確認が必要となりましたし、支援額も決して大きいものではなかった。それでも多くの中小企業を救うためのとてもいい事業だったのに、審査側の問題でたったの18.9%しか使われてないって。国はいったい何をやっているのか。

いわずもがな、すべて私たちの「血税」です。事業ではないのでカウントされていませんが、「不安もパッと消えます!」の一言で決まったとされる「アベノマスク」は倉庫での保管費だけで6億円、希望者に配るだけで「送料10億円」と問題になりましたし、あまりにずさんです。

まるで自分のお財布から札束を出すように、「血税」をホイホイ使う政治家たちには憤りしか感じませんし、メディアももっともっと「使い方」に言及すべきなのに、なぜか温度が低い。日本人って、本当にお人好しだなぁとつくづく思います。

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そもそも日本のコロナ関連支出は諸外国より多いのです。

経済学者の原田泰氏によると、21年6月時点の諸外国のコロナ関連支出で比較した場合、日本の感染者数はドイツやフランスに比べ桁違いに低いにも関わらず、支出はいずれの国よりも高かった。なのに、GDPの落ち込みはさほど変わらない結果になっていたとのこと。また、支出が大きいオーストラリアやニュージーランドの成長率は比較的高く、日本がいかに費用対効果の低いお金を無駄に使い、あれだけ「経済!経済!」と言ってきたわりには、経済をうまく回せていないことがわかると言います。

たとえば、今回の検査院の調査で不当事項とされた「病床確保」の場合、政府は医療体制の拡充費用の7兆8,000億円の大半をコロナ向け病床の確保に投じました。ところが、確保できたのは約3万9,000床にとどまり、1床確保するのにざっと2億円もかかった計算になると、原田氏は指摘しています。さらに、重症者病床1床当たり1,950万円の補助金を出すなどして確保に努めましたが、補助金を受け取りながら入院を断る病院も目立ったそうです。

昨年1月には、京都大学の西浦博教授らのグループが、GoToトラベルがコロナ感染拡大を招いたとする論文を寄稿し、話題になりました。2020年5月から8月にかけて、24の県から報告された新型コロナウイルスの感染者およそ4,000人を分析し、およそ20%が、発症前に旅行していたり旅行者と接触したりするなど、旅行関連とみられる感染者でした。

また、期間ごとの発生率を比較する手法で詳しく分析した結果、「GoToトラベル」が始まった2020年7月22日からの5日間で、旅行に関連した感染者は127人で、発生率は前の週の5日間と比べて1.44倍に。さらに、旅行の目的を観光に限定すると、発生率は、前の週の5日間の2.62倍になっていたのです。

100年に一度のパンデミックですから、費用対効果だの経済への影響だのを考慮するのは難しかったのかもしれません。それでもやはり、日本の対応はすべてが後手だったし、思いつき対策のオンパレードでした。

なんでもワクチン!も今後は国の負担はなくなるとの報道もあります。そして、今、再び感染が広まっていますが、「これからはインフルエンザと同じで!ひとつよろしく!」で、コロナ対策はジ・エンドになるのでしょうか?

日本はエビデンスに基づく政策が進まないことに加え、検証も不十分です。借金ばかりが増え、人々の暮らしは楽にならず、しかも、無駄遣いが多いとは…。日本は稼ぐ力はおろか、使う力もない国に成り下がってしまったのでしょうか。

みなさまは、この問題についてどのようにお考えでしょうか?

ご意見、お聞かせください。

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image by: 首相官邸

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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