「やってみなはれ精神」で、これまでも数々の新製品を世に送り出してきたサントリー。そんな業界を牽引する同社が発表した「日本初のビール」をご存知でしょうか。今回のメルマガ『理央 周の売れる仕組み創造ラボ【Marketing Report】』ではMBAホルダーの理央 周さんが、炭酸水で割って飲む「ビアボール」の開発秘話を紹介。さらにそこから学べる「イノベーションやブレイクスルーを生み出すために必要な力」について考察しています。
この記事の著者・理央 周さんのメルマガ
炭酸水で割って飲むサントリー度数16%ビール「ビアボール」から学ぶ市場の作り方
サントリーが11月15日に発売を予定している「ビアボール」が話題になっています。
ビアボールとは、アルコール度数16%のビールで、炭酸水で割って飲むことを前提としています。ホームページによると、炭酸水で割ることを、製品上で訴求するのは、日本で初めてのビール(Mintel GNPDを用いた当社調べ2022年5月)、ということだそうです。
値段は、334ml瓶で698円と少し高めですが、割って4回で飲めば200円を切るくらいですね。
そこには、作り方の動画もアップされています。グラスにたっぷりの氷を入れて、ビアボールを注いでそこに炭酸水を入れてゆっくりかきませるそうです。
アルコール度数が16%と高めですが、こういう風に割って飲めば自分の好きな濃さで、好きなペースで飲むことができます。
ウイスキーを炭酸水で割って飲むのがハイボールなので、ビールを割って飲むのがビアボールなのでしょうか。ネーミングもわかりやすくて面白いですよね。
7月29日の日経MJによると、ビールはいろいろなお酒の中で「飲み方が少ない」、ということに、社員の方が気づいたそうです。
確かに、日本酒は冷やしたり、熱燗にしますし、ウイスキーもそのままだったり水で割ったりします。
なので、「ビールにも割って飲むものがあってもいいのじゃないか」と考えたそうです。
これには社内でも賛否両論あったようです。先程の開発過程の動画には、社内の人たちが「それ大丈夫かな」、「何を言っているんだろう」と驚いたそうです。先日、ローソンが開発しヒットしている、おかずが1品だけの「だけ弁当」の開発時も、「そんなの売れるわけがない」という声が社内では一般的だったそうです。これも同じですよね。
確かに、業界で初めてのことをやる時には、社内をまずは説得しなければなりません。
歴史のある企業であればあるほど、「そんなのうちはやったことがない」と反対されることは多いはず。
でも、サントリーにはイノベーション部という部署があって、そこが開発をしたようで、動画でも熱意を持って開発の様子を語っています。
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市場のユーザーは、「ビールを割って飲むこと」を想像もしたことがないでしょうから、まず、そこから覆さなければなりません。
でも、もしビアボールが「割って飲むビール」、というカテゴリーを作ることができたら、後発のものが出てきても、「最初に思い出してもらえる」ブランドになります。先行者利益を得られるのです。
ブランドを作っていく時に、「電気自動車といえばテスラだよね」、とカテゴリーで最初に思い出してもらえることは、とても大事なのです。
どんな新商品も産みの苦しみは大きいものです。しかし、その分成功すれば大きいですよね。
このように、イノベーションやブレイクスルーを生み出すには、まず「社内を動かす力」が必要です。
それには、人間力や胆力に加えて、理にかなった説明で、異なる意見を納得させる、ロジカルな思考も重要です。
その意味で、新規事業の立ち上げや、新しい仕組みの導入など、ビジネスでの多くの事象で参考にできる事例でした。
このビアボールが発売されたら、真っ先に買いに行きたいと思います。
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image by: T. Schneider / Shutterstock.com