日本では連日サッカーワールドカップの話題でメディアが盛り上がっていますが、他の国はどうなのでしょうか?メルマガ『Taku Yamaneのイェーデン・ターク』の著者で長くドイツに暮らすTaku Yamaneさんが、最近W杯で日本に負けてしまった「サッカー強豪国」ドイツの現状を紹介しています。
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静かなるW杯。あまり盛り上がっていないドイツ国内の現状
いつもご愛読ありがとうございます。
今回は先日始まりました、サッカーワールドカップの話題です。
ドイツは言わずと知れたサッカー強豪国で、W杯での優勝は4回とブラジルに次いで多いです。そんなドイツですが、今回のW杯は結構静かな雰囲気です。街もあまり盛り上がっていません。
これは冬開催ということで、バカンスシーズンでないのがかなり大きいです。屋外で皆で見るようなこともできませんし、あと仕事も結構忙しい時期です。ですから自分の周りでも昼2時キックオフの日本戦なんかも余り見た人は多くありませんでした。それに最近は若者のサッカー離れが進んでいるらしく、4年前と比べても確かに熱は冷めていると感じます。
ただし、ドイツの国際大会での強さはかなりのものです。イングランド、フランス、イタリア、オランダ、スペインと周りにも強豪国はたくさんありますが、イタリアが4回でフランスが2回、スペインとイングランドは毎回優勝候補ですが実際に優勝したのは1回だけです。実は最近、ヨーロッパの代表国のサッカーの強さについて、国内の政治的及び文化的な問題が絡んでいるのではないかと考えるようになりました。まず、ドイツとイタリアに関しては昔からあまり代表内に軋轢が生まれることは少ないです。特にドイツなんかは2006年以降統一ドイツ代表として出場し、それぞれが誇りをもってプレーしているように見えます。だからいつも団結力があります。
フランスは移民問題が代表内でも結構深刻な問題として出てきます。英雄ジダンがそうであるように、フランスは移民が非常に多いです。中にはかなりの貧困層出身もいて、選手個々人にメンタリティーの違いを生んでいきます。そもそもルーツが外国であるために、フランス代表に誇りをあまり持っていない人もいるようで、大会によってはチームが空中分解することもありました。
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スペイン代表も大きな文化的問題を抱えています。まず、スペインというのはかなりややこしい国で、カタルーニャやバスク、アルザス地方等々独立問題が解決していません。スペインの超ビッグクラブであるバルセロナFCというチームはカタルーニャ地方にあり、スペインという国というよりもカタルーニャのクラブであるという意識が強いです。またバスク地方出身者だけが加入できるクラブもありますから、代表でそれぞれが一つに固まると結構コミュニケーションに問題が出ます。近年はチームの中心選手をほぼバルセロナFCの選手のみで組むという戦略が上手くはまっているようですが…。
イングランドは政治的な問題というよりはサッカーの母国ならではの文化的軋轢があります。イングランドのプロリーグは歴史が古く、各地方に密着した一流クラブがあり、それぞれを非常にライバル視しています。例えばマンチェスターの強豪、マンチェスターユナイテッドとマンチェスターシティという2クラブは、お互いをライバルとしてほぼ憎みあっています。有名なロックバンド、OASISのノエル・ギャラガーは熱狂的なマンチェスターシティサポーターですが、嫌いなクラブは1位から10位まで全部マンチェスターユナイテッドだと回答した程です。他にもライバル関係のチームは数多くあり、ノースロンドンに構えるアーセナルFCとトッテナム・ホットスパーズFC等々、様々なダービーが存在します。やはり選手同士もあまり仲良くはなれないらしく、代表でも一切話さないというような難しい関係があると、元代表選手が話しています。
スポーツと政治は切り離す必要があるとはいいますが、決して切り離せないからこそ注意が必要ということなのです。
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