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モスクワに空襲の危機。ウクライナ軍のロシア本土攻撃で迎えた新フェーズ

12月24日で勃発から10ヶ月となるウクライナ戦争ですが、このタイミングで新たな局面を迎えたようです。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんが、ウクライナ軍が直接関与したと思われるロシア本土の軍事施設への攻撃を取り上げ、それが意味するもの、明らかにしたことを検証。ロシアにとってのその事態の深刻さを解説しています。

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ウクライナ軍によるロシアへの無人機攻撃が意味するもの:「デモくらジオ」(12月9日)から

もう、あと数週間で終わりになります、2022年。まだ選挙がないということが大方の予想ではありますので、選挙を通じて我々が何か、民主主義の仕組みを通じて世の中を動かそうとしたり、自分の意見を表明しようとすることができないということですね。選挙以外にも色々な方法がありますので、声を上げるということを含めて、必要なことはやっていかなければならないなと思ったりします。

さて、ウクライナを巡ることで大きな変化というのは、おそらくはウクライナ軍が直接関与して起こった出来事だと思われますけれども、ロシア領内のかなり深く入ったところ、一カ所はモスクワの南わずか200キロくらいのところです。200キロというと、東京と名古屋の間くらいですね。まあ、遠いとも言えますけれど、ロシアのように世界最大の領土を持つ国からしたら、ほんのちょっと先くらいの感じ。そこにある空軍の基地。名前がややこしいのですが、ディアギレボ航空基地というところ。そこと、もう一カ所はロシアの南部サラトフというところにあるエンゲリスという名の空軍基地。

いずれも軍が使っている空港ということですね。そこでいずれに対しても無人機による攻撃があり、二カ所で爆発が起きた。これによってツポレフ95、ロシアの、相当古い機体なんですけれど、戦略爆撃機。これが2機損傷して、ロシア兵が3人死亡したと。一部映像、エンゲリスの方だったかな、映像が出ていましたので見ましたら、ものすごい大爆発でですね、ウクライナがロシアに対して攻撃するときに、まず兵站を頻繁に攻撃、ハイマースを使ってということがありますけれど、大体燃料の倉庫か弾薬庫、それから航空機、こういうものに対する攻撃が多いですね。

で、どういうことかと言えば、ロシアがウクライナを攻めてくるときの攻撃力のインフラということですよね。ツポレフ95は2機しかないわけではないので、これによってロシア軍がウクライナに対するインフラ攻撃を止める、手控えるなどということがあるかどうか分かりませんけれど、同じように続けることも出来るのではないかという気もしますけれど、しかしそういうものに対する攻撃だったということですね。

ツポレフ95ってね、ちょっと懐かしい飛行機で、多分、自衛隊の戦闘機乗りの皆さんは誰でも見たことがある、あるいは接近したことがある飛行機ではないかと思います。よく日本の日本海のところで自衛隊がどのように動くか試していたのだと思いますが、NATOのコードネームでベアという、熊という名前がついている。ロシアの飛行機で熊という名前を付けるということなのですが、爆撃機はボマーなので、頭にBがつく呼び名を付けているわけですが。他にもツポレフ16だったかな、中型の爆撃機がありますけれど、それはバジャーというコードネーム、アナグマのことですけどね、やっばり爆撃機なので頭にBがついている

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そんなコードネームで子供の頃からよく覚えていた名前なのですが、それが攻撃を受けてウクライナ側は戦果を得たと。ウクライナ側は自分たちがやったと認めているのは、ニューヨークタイムズのインタビューでウクライナ政府の高官が認めたというような伝えられ方をしているのですが、それ以外、公式にウクライナ側が自分たちの攻撃だということはまだ言っていないということです。

ロシア領内に対する攻撃ということですが、厳密にはこれが初めてということでもなくて、ハリキウの北側にロシアの補給基地が置かれている大きな町がありますが、そこに対する攻撃は既にかなり前に行われています。そのときも燃料とか弾薬庫が攻撃されたということです。ただ、今度の奴は国境のすぐ北側ではなくて、数百キロ中に入ったところに攻撃がされたということでは、ロシアにとってそうとう深刻だと専門家が仰っていまして、間違いなくそうだと思います。

プーチン大統領はその事態を受けて、「ロシアの防衛ということでは核兵器の使用も検討している」というふうなことを言っている。そして「報復もあり得る。殴られたら殴り返すのだ」って、これ変だよね。殴ったのはあんたの方でしょ。それでも、そんな理屈になっているようなのですが、もう一つ凄いことを言っていて、「私たちは気が狂ったわけではない。核兵器が何であるか、よく分かっている」。これ、手の込んだ脅し文句とも聞こえますし、あるいはそう簡単に核兵器を今度の攻撃に対して対置する、核による報復をするというわけではないのだという意味にもとれる。普通はそっち(後者)だと思いますけれど。まあ、なぜ核で攻撃しないのだと何かの会議で質問されて答えたということです。

ただ、これは今までとは全く違う事態が発生したということになりますね。ちょっとね、恐ろしい気がしています。で、2月に始まったウクライナ侵攻の過程で、本会議でどなたかも言っていましたが、ロシア軍、結構弱いね、軍隊として弱いね、強くないという感じで見てきたと思うのですよ。その印象からすればあり得べきことかなと思うのですが、ウクライナ領内から国境を越えて数百キロにわたっておそらく爆弾を抱えた無人機が飛んでいった。なんで撃墜されなかったのだろうという疑問がわきますね。これが数百機の無人機が飛んでいき、そのうちの何機かが着弾した、撃墜されずに、ということなら分かりますが、そういうことでもなさそうですよね。それぞれに全部爆弾をくくりつけるわけにはいかないでしょう。となると、そんなにたくさんの無人機を一度に飛ばしたわけでのないだろうし、今、言われているのは、旧ソ連のツポレフ141という番号がついたもの。ツポレフは大型の飛行機を作る生産集団の一つですけれど。ツポレフ144という、コンコルドのカーボンコピーと言われた飛行機(航空ショーで墜落した)を作ったのもツポレフでしたが。そのツポレフの偵察用の無人機を改造して攻撃に使ったのではないかと言われています。小さいですがジェット機なんですよ。

それはあり得るのでしょうけれど、だから撃墜できなかったのかと言われると、これは全く分からなくなってしまう。旧ソ連製の飛行機だから味方だと思ったなどということもあり得ないですし、あり得るとしたら電子戦というか、その飛行機をレーダーで捉えにくくするような何らかの技術が発揮されたのか。要するに数百キロもロシア領内を飛んで、そのときの目標で大爆発を起こしているわけで、まさにステルスですよね。ステルス自爆型無人機。そういうものをウクライナ軍がこの期間に作った、用意した、そして実際に使ったということだと思うので。

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ロシアの防空体制って、もしかしたら穴だらけになっているのかなという想像も出来ます。ロシア軍が世界最強の軍隊ではないかと言われたそのロシア軍は全然そのようなことはなく、ウクライナ軍にあちこちで手ひどい逆襲を食らってもの凄い犠牲者を出している。と同時に無人機が数百キロも飛んできたのを落とすこともできず、2カ所の基地、1カ所はモスクワのすく近くの基地を攻撃されてしまった。これは滅茶苦茶深刻な事態。

200キロの話で言えば、モスクワの空爆も出来るぞと言われたようなもの。モスクワ周辺はおそらく他地域とはレベルの違う防空体制が築かれているでしょうから攻撃はそう簡単でもないとは思いますが、ではそこにたどり着く、今回の無人機がたどり着く間の数百キロには防空施設は何もなくてよかったのかということにもなるので、これは大変なことですね。

で、ウクライナ侵攻ついてはあちこちで負け続けたロシアが今東部のある一カ所に大規模な兵力を投下して、例の部分動員の人たちを含めてのことですが、肉弾戦のようなことをやっていて、それなりにウクライナ側にも損害が生じている状況、それが1カ所あるのですが、それ以外についてはかなりどこもウクライナ軍が優勢で、とりわけ南部ヘルソン州のドニエプル川の西側と東側を巡る戦いがありました。西側にウクライナ軍と川に挟まれて孤立していた軍隊はかなりの損害を出しながらでも東側に逃げおおせた。そうなると、川を挟んでウクライナとロシアが睨み合ったはずなのですが、ウクライナの特殊部隊らしきグループが川を渡り、ロシア軍がうじゃうじゃいるところに橋頭堡を築きつつあるということだそうです。これ、どこまでロシア軍というのは弱いのだろうかという気がしますが。南部でも引き続き領土奪還の動きが強まっていく。東部でもそうだということ。

ロシア軍は何をしているかというと、戦車が入ってこられないような妨害物を設置したり、あるいは塹壕を3重に掘ったり、もしかしたらコンクリートで固めるというようなことを含め、「居座り戦術」みたいなことをやろうとしているようです。それも、どのくらい保つものなのか。とにかく居座ったところで、弾薬を含め兵站がずっとやられ続けていますので、そう長持ちはしないのではないかという気がします。

というところで唯一「戦果」を発揮していたインフラ攻撃、ウクライナの数千万人の人を真冬の寒さにさらすという攻撃。これ一つだけうまくいっていたその攻撃の道具であるツポレフ95、それが停まっている航空基地が狙われたということです。全体としてみればそのような状態。戦争はそう簡単には終わらないのだろうと思いますけれど、流れとしてはそういうことですね。

(『uttiiジャーナル』2022年12月11日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

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image by: Shag 7799 / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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