2022年11月15日、ついに80億人を突破したとされる世界人口。増えすぎた感もある人類にはこの先、どのような未来が待ち受けているのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』ではジャーナリストの伊東森さんが、人類が80億人に達するまでの歩みを振り返りつつ、8億人を超える人々が飢餓状態に置かれている現状を紹介。さらに何らかの手を講じない限り我々が確実に襲われる「災厄」についても言及しています。
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世界の人口 80億人突破 中国とインドで35%を占める 気候変動、食糧問題深刻化も
国連によると世界の人口が11月15日、80億人に達した模様。しかし報告書によると、人口爆発により温室効果ガスの排出量も急増、気温の上昇による異常気象の増加や食糧の不足にも見舞われると警鐘を鳴らす。
報告書によると、1950年には約25億人であった世界の人口は、70年代に40億人、2011年には70億人と推移し、現在までに3倍以上に達した。
今後、世界の人口は、2037年ごろに90億人、2058年ごろに100億人を突破。しかし、その後は合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値)の低下などにより、ほぼ横ばいとなる見込みだ。
世界の人口が明らかに増加したのは1803年以降のこと(*1)。世界人口は、17世紀、新技術と新しい農法の登場により、急激に増加し始める。1700年代に始まった、第二次産業革命の影響だ。
その後、出生率の上昇や医療と農業の継続的な発展により、人口は爆発的に増加。しかし人口動態の変化や出生率の低下により、ここしばらくは世界の人口増加率は明らかに鈍化している(*2)。
2100年の世界人口については、さまざまな予測がある。国連の予測では109億人に達するという見込みであるが、ワシントン大学の研究者は63億人から88億人台とも予想(*3)。
目次
- 中国とインドで35%を占める
- 気候変動、深刻化
- 飢餓懸念 食糧問題、すでに顕在化
中国とインドで35%を占める
2015年の時点では、世界の人口の半分は6つの国に集中。しかし、最近になりその他の国でも人口は増加。結果、現在は世界人口の半分弱が7つの国に住んでいるという状況に。
世界人口は、アジア圏で44億人と55%に上り、中国とインドの2か国(約28億人)だけで全体の35%を占める。インドは来年、中国を抜き、世界最多の人口となる見通し。
中国は1979年から2014年まで一人っ子政策を取ってきた。その影響により、4億人の人口増が抑制されたとも。今後は中国においても少子高齢化が進むとみられる。
中国とインドに人口が集中している理由は、“もともと”この2カ国に人口が集中していたからだ。
1950年の世界人口は26億人であったが、当時の両国の人口も世界第1位と2であった。当時の中国の人口は5億5,441万9,500人。インド3億7,632万5,300人。
このとき、中国の人口が世界に占める割合は約21%、インドは14%と、合わせて35%を占め、この数字は現在とほとんど変わっていない。一方、両国の人口の伸び率を個別にみると、中国は約2.6倍に対し、インドは約3.6倍。
この2カ国に人口が多い理由として、「土地の豊かさ」が挙げられる。たとえば、2019年時点で米、小麦、茶、綿花の生産量は中国とインドでそれぞれ1位と2位を独占。食料の安定性に加え、国土の広さと気候も極めてよい。
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気候変動、深刻化
国連は、報告書で世界人口の急速な増加が、
「地球温暖化や気候変動などさまざまな環境劣化を引き起こしている」
と指摘。
「化石燃料への過度の依存から脱却する必要がある」
と警鐘を鳴らす。
地球温暖化が二酸化炭素の排出量が増加するほどに進行するため、世界のエネルギー消費量が増大するほど、さらにいえば世界人口が増加するほど、悪化する。
地球温暖化の問題が実際に顕在化したのは1970年代以降のことであるが、それは世界のエネルギー消費量が激増した50年以降に、人間の活動による二酸化炭素排出量が森林や海洋などによる吸収量を超過し、大気中に蓄積し続けた結果であると考えられている。
また、世界中で観測されている極端な高温は、高い確信度で人為的活動による地球温暖化が原因と結論づけられている。
報告書は、温暖化の影響により「小さな島国が海面上昇の危機に直面している」と指摘。南太平洋の島国に位置するツバルのナタノ首相は11月に行われた国連気候変動枠組み条約第27回締結国会議(COP27)で、
「温暖化する海が我々の土地をのみ込み始めている」(*4)
と訴えた。海面は今世紀末で最大55センチ上昇するとも(*5)。そのため、平均海抜約2メートルのツバルは、国土消失の危機に直面している。
飢餓懸念 食糧問題、すでに顕在化
報告書では、「人口の増加が見込まれる多くの国が低所得国だ」と指摘。飢餓が増える可能性を訴えた。
とくにアフリカは現在の約13億人から約25億人に倍増すると予想。しかしアフリカでは、すでに気候変動による干ばつとともにロシアのウクライナ侵攻にともなう穀物価格の急騰に直面している。
国連世界食糧計画(WFP)によると、昨年、アフリカ諸国を中心に約8億2,800万人が飢餓状態であったという。
とくに南スーダンは来年、国民の3分の2にあたる780万人に命の危険が迫る「深刻な飢餓状態」に直面するおそれがあるという。
国際社会は、2030年までにあらゆる形態の飢餓、食料不安、栄養不良をなくそうとする目標を立てている。
しかし目標は、ここ数年のコロナ禍により遠のく。国連の報告書によると、世界全体で飢餓の影響を受けている人の数は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生して以降、1億5,000万人増加した。
食料不安は、「ジェンダー」の問題にも関わってくる。2021年に、食料不安の男女格差が拡大。世界全体で、女性の31.9%が中度または重度の食料不安であるのに対し、男性は27.6%。4ポイント以上の差が。
さらに、推定4,500万人の5歳未満児が消耗症(最も命を落とす危険性が高い栄養不良の形態)に陥っており、子どもの死亡リスクを最大12倍まで高めている。
■引用・参考文献
(*1)「世界人口が80億人を突破した今、知っておくべき5つの事実」世界経済フォーラム 2022年11月28日
(*2)世界経済フォーラム 2022年11月28日
(*3)「Fertility, mortality, migration, and population scenarios for 195 countries and territories from 2017 to 2100: a forecasting analysis for the Global Burden of Disease Study」The Lancet Journal OCTOBER 17, 2020
(*4)金子靖志「世界人口80億人に」読売新聞 2022年11月15日付朝刊
(*5)金子靖志 2022年11月15日
(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年12月10日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
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