満面の笑みを浮かべ、岸田首相の肩を抱き日米首脳会談の会場へと向かうバイデン大統領。しかしその席上では米国側から日本に対して、決して簡単ではない「宿題」が出されていたことは確実なようです。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤さんが、バイデン政権の主要スタッフがアメリカの外交専門誌に寄稿した記事の内容が、ほぼ米国の意向を表しているとしてその内容を紹介しています。
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岸田首相とバイデン大統領、日米首脳会談では何が話されたのか?
岸田首相がバイデン大統領と会談しました。
一体どのような事が話合われたのでしょうか?
ご紹介するのは外交専門誌フォーリンアフェアーズの1月12日寄稿記事です。
寄稿者はバイデン政権で東アジア担当ディレクターであり、オバマ政権では日本・オセアニア担当ディレクターとして国家安全保障会議に参加したクリストファー・ジョンソン氏です。
彼の意見は米国政府の意向をほぼ正確に示していると考えます。
まず第一の意向は、日本に軍事面で新しい組織を作ってほしいという事です。
「同盟強化のためにバイデンと岸田がすべきこと」
1月13日に行われる岸田文雄首相とジョー・バイデン米大統領との会談は、日本と米国の安全保障関係に新たなページを開く重要な機会となる。
12月中旬、岸田氏は新たな国家安全保障・防衛戦略を発表した。
この計画では、防衛費を5年間で60%近く増やし、1970年代から続いているGDP比1%という非公式な上限を打ち砕くことを要求している。
日本はまた「カウンターストライク」ミサイル、すなわち車両、航空機、船舶、潜水艦に搭載される長距離精密兵器を獲得することになる。
日米はより強固な同盟を構築するために指揮統制を見直すべきである。
日本国外の目標に対する武力行使を調整できるようにするためである。
しかし、米国の韓国との同盟とは異なり、日米同盟は統合的な軍事作戦を可能にするようには設計されていない。
以前は日本が米国の重要な軍事的パートナーになることは想定されていなかった。そのため、日本の自衛隊と在日米軍は、並行かつ別々の指揮系統を構築した。
この仕組みは、日本が過去20年間に自衛隊の役割、任務、能力を徐々に拡大、強化してきたにもかかわらず、現在も維持されている。
日本が新たな防衛戦略を進めるにあたり、こうした既存の仕組みを変えなければならない。統合軍事作戦を計画・実行するための常設のメカニズムが必要であろう。
日本における統合指揮統制を強化するために、ワシントンと東京が適応できるモデルは数多くある。
韓国モデル(戦時中の米軍と韓国軍を米軍司令官が指揮する複合構造)は、自衛隊が米軍の指揮下に入る法的根拠がないため、今日の日本ではおそらく政治的に容認できないだろう。
しかし、日本の新しい能力を効果的に活用し、米国と緊密に連携するためには、より統合された構造が不可欠であろう。
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解説
日米が共同して軍事行動をとるためには今の指令組織ではできない、新しい組織を作る必要がある、という主張です。
おそらく今回の訪米で岸田首相はバイデン大統領から直接にその要望を受けたでしょう。
さらにこの論文では以下の点も強調されています。
- 日米で機密情報の共有を深めるには信頼が必要である。日本は歴史的に情報セキュリティが甘い。日本にはこの部分を改善してほしい。
- また米国は日本を「ファイブ・アイズ」パートナー(米国が主要な同盟国と情報を共有する最高レベル)に昇格させるための明確なロードマップを策定するべきである。
- 日本の防衛産業の強化は日米双方の利益につながる。日本の技術基盤は、航空宇宙、自律システム、人工知能などの分野での協力に大きな可能性を持っている。
- また日本の生産能力がより強固になれば、米国とその同盟国の主要防衛品目のサプライチェーンの多様化にも貢献する。
おそらく実際のバイデン大統領との会談で焦点となったのは上記のような事でしょう。決して「5月予定の広島サミットで核廃絶をどうアピールするか」といった事ではありません。
今回、ご紹介したのは、岸田首相が米国からもらったであろう宿題です。
これらの課題を、議論の遡上に乗せるのか、ひっそりと進めるのかも含めて注目が必要です。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』1月15日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)
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