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この“不寛容”が地方を潰す。移住者が逃げていく土地に共通する特徴

東京への一極集中が進む中、政府が積極的な後押しを始めた地方移住。一方で、移住先の生活に限界を感じるといった失敗例も多々報じられています。移住者と地方の双方にとって理想的な移住を実現するキーは、一体どこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者ののもときょうこさんが、最近読んだというレポートの内容を紹介。そこに記されていた「地方創生政策が見落としていた重要なパーツ」の存在を明かしています。

※本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』2023年1月26日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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地方への「移住失敗」が話題。地方創生のキーは「寛容さ」にある

年末のびっくりニュースです。

12月28日、政府は、東京圏から地方に移住する世帯について、18歳未満の子供1人あたり「移住支援金」を最大100万円に引き上げる方針を決定した。2023年度から適用する。

岸田首相、太っ腹!東京捨てれば100万円、子供1人につき追加で100万円…「デジタル田園構想」は年間1万人を地方移住させる作戦

随分思い切った政策をするなーと驚きました。しかし、お金を配って住んでもらうより、有効なのが「地方に寛容な人を増やす」かもしれません。

なぜかというと、せっかく地方移住しても、仲間はずれになったりして帰ってくる人が少なくないです。なんだかんだ言って、一番寛容なのが東京なので、人が集まっているのではないのかな……。

最近、面白いレポートを読みました。LIFULL HOME’S 総研の「地方創生のファクターX 寛容と地方の幸福論」です。

地方創生のファクターX 寛容と幸福の地方論

このレポートは「外国人への寛容がキーワードでは?」と仮説を立てて、調査を始めたようです。ユニークなのは「外国人への寛容さ」が一つの目安になると仮定してるところ。

「不寛容な空気が地方を滅ぼす」

 

寛容性に関しては、LIFULL HOME’S 総研は2017年に『寛容社会 多文化共生のために〈住〉ができること』を発表している。大規模なアンケート調査の分析の結果、外国人に対して寛容な態度で接する人は、外国人にかかわらず社会全般で自分とは異な る意見や考えにも寛容であるということが分かった。(「地方創生のファクターX 寛容と地方の幸福論」)>

外国人が許せる人は、他人(特に若者)を許せる――そうかも。それが日本人のコミュニティにも影響するらしい。

地域社会における外国人との共生をテーマにした研究から見えてきた課題は、日本人のコミュニティの閉鎖性や不寛容であった。だから外国人との多文化共生を可能にする開放性や寛容性が、ひいては日本社会全体の寛容性を高め、日本人の幸福度を高めるのではないかと結論づけた。
(同上)

このアイデアの基本的なところは、若者の人口定着の問題にも適用できるだろうと考えた。平たく言うと、若者の価値観(若者が体現する新しい価値観)に対して不寛容な気質の地域からは若者は流出して戻ってこない。若者に対して寛容な地域は、多文化共生のごとく多様性を生み出し、そこに暮らす人々を幸福にする。そういう仮説である。
(同上)

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で、寛容は、地方創生政策が見落としていた重要なパーツである、と結論づけています。

1)寛容は地方創生のファクターXである

 

地域の寛容性は、地元に住む人の離脱意向を抑え、東京圏へ出た若者のUターン意向を高める統計的に有意な効果を持つ。特に他県からの移住者の定着には地域の寛容性が大きく影響する。(中略)寛容は、地方創生政策が見落としていた重要なパーツである。

 

2)地域社会の凝集性は地域の寛容性を低下させ、文化芸術は寛容性を向上させる

 

強くて狭い人間関係や、規律や道徳、名誉や面子を過大に重んじる気質は地域社会の寛容性を下げ、人口の社会減を加速させる。逆に文化水準の満足度は寛容性の高さと非常に密接に関係しており、文化芸術の経験が地域社会の寛容性を高める効果を持つ。

(同上)

つまり、不寛容な場所からは人が逃げる。「逃げるのか」とか言ったら余計逃げる。

これを読んで思ったのが世界の「駐在員に住みやすい街」のランキングに似てるな、ということです。

クアラルンプールは住みやすい街の1位なのですが、なぜかというと、やはり寛容で、人間関係が作りやすいから、らしい。おそらく、これも「寛容だから」なのです。

以前、とある地方に取材で行ったとき、役場の移住担当の方が「東京の人がきて、5年とか住んでもらうのでは困るんです。永住してもらわないと」と言ってて、最近、街を出ようとしている東京からの「新参者」への悪口になりました。

お金をかけてるんだから、永住して!という気持ちはよくわかります。しかし……入ったはいいけどルールを押し付けられ、さらに出られないとなると、しんどい。

【移住失敗】色々ありすぎて引っ越すことになりました#31(YouTube)

一方で、私が住んでたのは東京・下町ですが、比較的寛容な場所です。

地方から人が流れてくる場所だし、江戸っ子特有と言われる「細かいことを気にしない(こまけぇことはいいんだよ)」「他人を詮索しない(野暮なこと言うな)」が残ってるからじゃないかなーと。

人の気持ちを変えるのは難しいけど、定住を増やしたいのなら、大事なことじゃないかなと思います。

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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