1月26日に開催された「楽天新春カンファレンス2023」で、講演時間のほとんどを楽天モバイルについて費やしたという三木谷浩史氏。なぜ彼は、楽天市場の出店者向けのイベントにもかかわらずモバイル事業の話題に終始したのでしょうか。今回のメルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』では、Webメディア『ECのミカタ』元編集長で株式会社「team145」代表取締役石郷学さんが、自身も参加した当イベントの写真を交えつつ、その理由について考察しています。
※ 本記事は有料メルマガ『週刊145マガジン「腹割って話そうぜ!」まぐまぐ!出張版』2023年1月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をご登録の上、1月分のバックナンバーをお求め下さい。
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三木谷社長が楽天市場の店舗の前で楽天モバイルの話に終始した理由
自らの挑戦の経緯を語る
楽天新春カンファレンス2023に参加してきました。登壇したのは、代表取締役 会長 兼社長の三木谷浩史さん。
恒例の講演でその大半の時間をかけてモバイルについて言及しました。元々、このイベントは未来を描くという側面があります。
だから、その中身は時に未来を語り、時に未来を思い描いて行動した行動の経緯について語る。楽天は長らく挑戦し続けてきたから、彼の描く未来と事業はセットです。
今回は、それでいうと後者、自らの行動について語ったのです。今回のイベントに集まっているのは楽天市場の出店店舗のみ。その場で、楽天モバイルについてそれだけの時間を割くのは、まわりまわって店舗の利益に繋がると信じているからのようです。
上記の通り、国内EC流通総額は5.6兆円となり、その数字は前年比で11.2%増です。ここから10兆円にしていくべく、モバイルを中枢に据えると言います。
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出店店舗になぜモバイルの話?
その戦略の中には、自ら築いたエコシステムの中に、新しいプラットフォームを作る為にモバイルを活用することを念頭に置いています。
楽天のエコシステムはもはや楽天市場の原動力で、加えて、モバイルを真ん中に据えることで、その勢いは更に加速すると断言します。
モバイルに集まる情報をAIで分析し、自動化して処理することで顧客のニーズを特定します。一方で、楽天市場でのAIの精度を高めていけばどうでしょう。
その顧客がどんな人なのかを浮かび上がらせることになるだろうと。極論、Netflixでどんな作品を見ているのか、といった具合に。
データというのは、その一人一人の中身を明らかにする。その中身が、楽天市場内の顧客体験を向上させるというわけです。それがまず、自分たちにできる「楽天市場」への付加価値だと。
大容量で使って欲しいから低価格
だから、楽天は経済圏の付加価値を高める要素として、モバイルを見ているわけです。
だから、モバイル単体では極力、わかりやすく低価格で提供することに繋がります。
それらを強調することで、彼が考える未来はなんでしょう。大容量化するモバイル通信をむしろ積極的に使ってもらいたいという考え。例えば、PS5のゲームを一本ダウンロードするだけでも実は、50ギガ使ってしまう。
100ギガ、200ギガを当たり前に誰でも使えるために、安く、そしてプランもわかりやすくしなければならないのだと言います。
そして、物事の流通がデジタル上で行われるほど、それらの利用が増えて、楽天モバイルは、それだけのデジタル化の需要に応えるインフラになるというわけです。
これを彼は「携帯市場の民主化」と呼んでいます。もっと自分たちの趣味嗜好に合わせて、モバイルを通して、自分たちの楽しみを見つけてほしいというわけですね。
それが今話したように、楽天市場の顧客体験に繋がるから、制限なくそれを勧めていくのです。
だから、モバイルが「楽天市場」の利用を促しますと。
既に、2022年1月から2022年12月の契約者に関して、モバイル契約前と契約後で楽天市場の年間流通総額は49%も伸びています。その一方で、楽天経済圏でモバイルユーザーの占める割合は11.6%に過ぎない。だから、伸びるほどに、流通総額は伸びるという彼の説明に繋がります。
加えて、楽天を支えた「カード」事業などに比べて、モバイルは生活に密着しているから、インフラとしての親和性の高さがある。だから結果、クロスユース率の向上も見込めるというわけです。
実際に、モバイル契約後のクロスユースサービス数は+2.58サービスに及んでいます。そうやって、ポイントがさらに流通しやすくなれば、既に6,200億もの発行がなされているポイント経済圏はより大きな価値をもたらすといいます。
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自ら行動を切り拓いたその胸の内を語る
三木谷さんという人間の面白さは、その未来に対して自ら行動することで、切り開く強さにあります。
だから、その行動は予測できず、理解されないこともなくはない。一見すると、楽天市場とモバイルを切り離して、なぜ、楽天市場をそっちのけでモバイルに投資をするのか。そんな店舗の声すら聞こえてきそうです。
だけど、「それは違うんだよ」。そんな三木谷さんの叫びが聞こえてくるようです。
彼も実は、変貌していていて、かつての送料無料ラインの時然り、今一度、店舗とは向き合い、丁寧に説明する必要性を彼はもうわかっているから、この場で、モバイルに時間を割いたのでしょう。楽天モバイルの経緯とともに、未来の展望を自らの事業に準えて説明したのです。
さあ、店舗はそれを受けとめ、どう動くか。
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image by: OFFICIAL LeWEB PHOTOS, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons