「いかに効率的に動くか」という内容のビジネス書はデキるビジネスマンの必携ともいわれるようになっていますが、メルマガ『サラリーマンで年収1000万円を目指せ。』の著者・佐藤しょ~おんさんはその傾向を疑問視。 効率だけにこだわる生き方によって大事なものを失ってしまう可能性があるとして、「ムダ」なものを排除しない生き方について語っています。
タイムパフォーマンス「タイパ」に拘る人たちへ。大事なモノを失ってしまう前に
タイムパフォーマンス、つまり時間あたりの価値を高めることに拘る人が最近は増えています。簡単にいえば、ムダな時間を過ごしたくない、時間を使ったことを後悔したくない、だから短時間でインスタントに何かを手に入れたいと考える人たちのことです。
そんな彼らが使うのが、
というサイトです。ここではビジネス書を中心に、1冊の本を10分程度で読めるように要約をしてくれるサービスです。
ま、これはビジネス書なら分からないでもないんですが、それって本を情報としか考えていないってことで、そもそも自分で要約しないで、誰かに要約させたら、それは読解力の訓練にはならないし…。
ってか、これじゃ本を味わうって感覚は育たないはずで、これで十分だと思っていたら、大事なモノを失ってしまうと思うんですよね。
短時間でインスタントに手に入れたモノは、長い目で見たらあなたの役には立たなんですよ。それがインスタントってことですから。
しかもあの程度の要約で、コンテンツを理解したと考えるのが間違いじゃないですかね。あのサービスの利用法として正しいのは、読む価値の無い本を要約によって排除するということだと思いますよ。つまり、要約を読んでなるほど、と思った本は改めて買って熟読するの。
誰しも1日に24時間しかないわけで、だからムダには過ごしたくないし、時間を使った挙げ句に後悔なんてしたくない、という気持ちは分かります。
でもそれは効率だけを追いかける生き方なんですよ。効率は大事だけど、効率だけを追いかけるのは間違いだと思いますよ。
これ、ムダに使った時間が3年とかいうのなら、それはマズいよねと思いますが、たかが2時間とか半日程度なら、それは人生の彩りのひとつだと考えるべきだと思いますよ。
私はこれまでの人生でたくさんのムダなことをやってきました。パチンコや競馬、競輪、お酒にタバコ、これらをやらなければ、軽く新車のベンツが買えるくらいのおカネと、トータルで数年分の時間を他のことに振り向けられたでしょう。
じゃ、そこでムダなく全てを効率的に生きたら、今よりももっと幸福度が高まったのか?と考えたら、それは違うんじゃないかと思うんですよ。
学生の本分は勉強だ!といって大学受験のためだけに時間を使って、部活動も恋愛も趣味も映画も音楽もひとつも体験しないで、東大に合格したらそれは良い人生なんですかね。
人間には愚行権というのがあって、バカなことだと分かっていて、あえてそれをやる権利ってのがあるんですよ。そんなバカなことがゼロな人生って、効率と利益だけを追い求めるギスギスした人生って、マシーンみたいな生き方だと思うんですよ。
一見してムダに見えるモノにも、違う角度から覗いて見たらちゃんと意味があるってこともあるんじゃないですかね。
人生の味わいって最後は、
● どんな思い出を作れるか?
なんだと思いますよ。偏差値の高い学校に行って、所得の高い職業に就いても、若い頃の思い出が、毎日10時間勉強したことだけで、それ以外に何も思い出せるモノが無かったら、それは寂しいんじゃないかと思いますよ。
そしてそういう思い出って、ムダなこと、後悔したことの方が強烈に覚えていて、それが味わいに変化するのが年を取るということでもあるんじゃないですか。
私は今になって、高校生の頃にバイクを乗り回したり、パチンコ屋に入り浸ったり、徹夜麻雀をやった記憶が愛おしいと思いますもん。あの思い出を全部削除して、その代わりにずっと勉強だけをやった記憶と差し替えて、その結果国立大学に入れたとしても、そっちの方が優れた思い出だとは言えませんもん。
バカなこと、下らないこと、そういう体験を良い思い出に変える力があれば良いわけで、それを身に着けることの方が尊いと思うんですよね。
image by: Shutterstock.com