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Seoul Central District Prosecutor's Office in South Korea

やっと一審判決。なぜ韓国「玉ねぎ男」の裁判はここまで長引いているのか?

韓国の文在寅前大統領の側近で、元法相のチョ・グク氏といえば、子供の不正入学に絡む多くの疑いで起訴され「玉ねぎ男」と呼ばれていたことで知られています。そんな彼の裁判の一審判決がようやく出たようです。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年で韓国の大学に勤務する日本人教育関係者が、この裁判について詳しく語っています。

たまねぎ男に懲役2年

たまねぎ男で一躍有名になったチョ・グク。2月3日、3年2か月ぶりに第一審の判決があった。

ソウル中央地裁刑事合意21-1部(馬成英部長判事)は3日、入試不正と監察もみ消しなど12の容疑で起訴されたチョ・グク元長官に対し、7つの容疑を有罪と認め、懲役2年と追徴金600万ウォンを言い渡した。

チョ・グクとともに自分の子どもの入試不正などの疑いで起訴された夫人の鄭京心(チョン・ギョンシム)元東洋大学教授(収監中)は、懲役1年の実刑を言い渡された。鄭元教授は昨年1月、最高裁で入試不正および私募ファンド不法投資などの疑いで懲役4年と罰金5,000万ウォン、追徴金1,061万ウォンが確定し、収監中だから1年がさらに追加された格好だ。

チョ・グク裁判は、起訴されてからなんと3年2か月ぶりのことだ。裁判所は「チョ・グクが入試制度の公正性に対する社会的信頼を深刻に毀損し、政界の請託により監察を中断させ罪が悪質で重い」と語った。

チョ・グクは息子の入試のために虚偽で作成したソウル大学インターンシップ活動証明書を活用し、息子が通っていた米の大学のオンライン試験の代わりにしてやった。また娘の医学専門大学院入試に虚偽インターン確認書と東洋大学表彰状を提出した。

文政府時代の青瓦台の民情首席(民情首席というのは大統領の次にふんぞり返っていたポストだった。今はない)時代、政界の請託を受けてユ・ジェス前釜山市副市長に対する青瓦台特別監査班の監察を揉み消した。この容疑すべてが有罪と判断された。

3日、共犯として一緒に起訴された妻のチョン・ギョンシム元東洋大学教授も懲役1年を追加で言い渡された。上でも書いたように彼女はすでに娘の入試不正などで懲役4年が確定し収監されているからさらに1年追加で5年収監されることになった(まだ最終判決ではないにしても)。

まねぎ男・チョ・グクの容疑は、法務長官に任命される前にすでに明らかになり始めていたが、文在寅大統領はついに己の我を通して彼チョ・グクを長官に任命してしまい、国家的葛藤構図を作ることになってしまった。

文在寅はチョ・グクのような男を採用して国家を二分するような大きな事態になったにもかかわらず一切謝罪もせず、むしろ「チョ・グクに心の借金がある」と話したものだ。自身の不法を一度も認めなかったチョ・グクは「検察が捜査ではなく狩りをした」として回顧録まで出した。今回の判決はそのような文政権とチョ・グクに対する断罪となった。

この裁判はもともとこれほど長くかかる事件ではなかった。チョ・グク関連の疑惑は多かったが、偽造文書など明白な証拠も多かった。だが、キム・ミョンス最高裁長官がウリ法研究会(ウリとか民族とか正義とかがついてくると韓国ではたいていガリガリの左派を意味する)出身のキム・ミリ判事にこの事件と文政権最大不法の一つである「青瓦台の蔚山市長選挙介入事件」を任せ、裁判が果てしなく遅延されることとなった。

キム・ミリ判事は蔚山事件では1年3か月間、有罪・無罪を決める裁判を一度も開かなかった。そうするうちに突然休職し、両事件とも裁判が遅れた。蔚山事件も起訴されて3年が過ぎたが、まだ1審判決が出ていない。その間、選挙工作で蔚山市長になった人は任期を全うして再出馬までした。金・ミョンス式の裁判遅延は、それ自体が不義だ。

裁判所の前では、「チョ・グク死守」と「チョ・グク即収監せよ」のデモ隊が道に両側に別れて大声をあげていた。実刑判決を受けても「死守しよう」という輩の多いのには驚かされてしまう。

民主党は「判決と関連して別になんの立場もなく、党レベルで論評する計画もない」とだけ明らかにした。今は李在明問題で頭の痛い民主党だ。チョ・グクまで手が回らないといった格好のようだ。

ただこれは第一審にすぎずチョ・グクが控訴すると明らかにしているだけに結局は大法院(最高裁)にまでいくだろう。最終判決が下されるまでまだまだ時間がかかりそうだ。それにしても一審で2年いう有罪(実刑判決)が出たことは、今後いつになるかわからないが必ず開かれる李在明裁判にも影響のないはずはなく、検察側に多少風向きが向いてきたとみていいだろうと思う。韓国検察よ、がんばれ。

(無料メルマガ『キムチパワー』2023年2月4日号)

image by: Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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