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「いじめの現場に警察を」文科省が教委に出した通知の画期的な項目

2月7日に全国の教育委員会に対して、犯罪と判断されるいじめについて「警察との連携」の徹底を求める通知を発出した文科省。現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんによると、この通知の中に「画期的な項目」があったといいます。今回阿部さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で、その内容を紹介。さらに「教育業界にとって大きな一歩となる」と高く評価しています。

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文科省からの通知(いじめと警察連携)に新たな明記事項を発見

文科省から各教育委員会へ「警察との連携」を求める通知は、平成24年から少なくとも3回は出ている。

令和5年2月、文科省は新たに警察との連携について各教育委員会に通知をしたことが、初めての事のように報じられたが、こうした問題に携っているものからすれば、また通知をしたのか…、連携が上手くいっていないのか?と思えてしまうことなのだ。

そもそも法には連携の条文がある

いじめ防止対策推進法23条の6

 

学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならない。

上のように「いじめ防止対策推進法」には、犯罪行為があったときは警察と連携しなければならないということだ。

つまり、法施行からこれまで、わざわざ何度も通知を出さなければならないほどに、連携が出来ていないという問題が生じているということなのだ。

令和5年2月の通知の軸は「緊密な連携」を「徹底」しなさいということだ。これは過去の通知でも「連絡員」を設けて日常の情報共有や緊急時の連携対応ができるように予めしっかりと関係を持つようにしてくださいという内容がある。

そもそも学校は少年事件などで警察との連絡や懇談会などがあるものだ。それをより強化して、徹底しようという通知は再三行われてきた。

いじめの現場に警察

過去、『伝説の探偵』でも取り上げた大阪八尾市でおきたいじめ暴行事件では、長時間、男子児童が女子児童の手を執拗に踏みつけ骨折させるという事件があった。

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この事件では警察の記録が開示されたが、私は被害女児が担当の警察官から、罵詈雑言を浴びせられ、恐怖で家から出ることができなくなってしまったと聞いている。また、川口市のいじめ訴訟では、警察の文書偽造が問題になった。

高知県小学生水難事故での警察対応は、司法解剖がされていなかったり、無い傷があったことになるなど、杜撰な対応が指摘されている。

【関連】あまりに多い嘘。探偵が調査で見抜いた高知小2水難事故の深い闇

一方で、私の記録に新しいいじめ事件では、いわゆるリベンジポルノ的にアイコラ写真(被害生徒と裸の女性の写真を合成したもの)を使って脅しと強要未遂があったが、警察の素早い対応で、加害生徒は家庭裁判所に送られ、その写真などは全て回収されていた。

暴力と恐喝によって金品を取られていた被害者のいじめ事件でも、警察の対応が早く、学校と教育委員会が話し合っている間に、各加害者の処分が決まっていたという事例もある。

この件で驚いたのは、防犯カメラの映像を追って、被害者本人が混乱して報告していなかった件が、警察の捜査によってわかったということだ。

つまり、適切かつ的確に動く警察があれば、被害救済や加害指導といった面を含め、学校では対応しきれない問題も、極めて速く、さらに効果的な対応が可能というわけだ。

ところが、何度も通知を出しているということは、現場レベルでの差が大きく、中には逆作用するケースもあるから、より具体的に、また頻繁に通知を出す必要が生じたということなのだろう。

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令和5年2月通知の画期的な項目

今回の通知には添付資料がある。その中に、文科省としては、はじめて具体的に、いじめの中で起きる犯罪行為を明記している。

文科省、令和5年2月7日通知の添付資料より

「学校で起こり得る事案の例」とあり、例えば、恐喝罪だとすると

という事例が記載され、「該当し得る犯罪」として、このケースだと、

恐喝(刑法第249条)

 

第249条人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

 

2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

と明記されている。上に挙げたもの以外でも、「暴行」「傷害」「強制わいせつ」「恐喝」「窃盗」「器物損壊等」「強要」「脅迫」「名誉棄損、侮辱」「自殺関与」「児童ポルノ提供等」「リベンジポルノ」などが具体的事例として通知の添付資料に添えられている。

この具体事例の明記は、これまで犯罪行為についてまで踏み込もうとしなかった教育業界にとっては、大きな一歩となると評価していいだろう。

通知はあまり現場に浸透しないという意見も

しっかりとアンテナが張れている教員や学校の管理側は、こうした動きに敏感でもあるが、県教委から市教委へ、市教委から学校へというような伝達の中で、思い込みや機能停止した組織などがあれば、その内容が上手く伝わらないこともあろう。一方で、現場の数が足りない危機的な状況下で、新たに緊密な連携を徹底と言われても、それをする時間も人もいないという不満も出てくるであろう。

教員の中からは、「もうそんなこと言われても、もう無理だよ」という声が散見される。

現場からすれば、「あれもやれ」「これもやれ」と御上は言うが、定額働かせ放題プランでは限界があるということだろう。

教師という仕事の魅力を伝えようと始まった「教師のバトン」が、結果として、やりがい搾取の考えが露呈し、不満と次世代への警鐘が大半になったように、いわゆる労働環境の改善など根本的な改善にその要因が出てきてしまうのは、すでにその環境の構造自体の問題があると考えても良いはずだ。

しかし、根本的な構造改革には時間が掛かりその間の混乱もある、一方で、学校を取り巻く「いじめ」や「ブラック校則」など様々な問題は、すでに待ったなしであり、悪化すれば、子どもの生命や将来の危機に直結しかねない。

現状を見る限り、今年4月以降、文科省がやるのかこども家庭庁がやるのか、よくわからない点が多いが、いずれにしても音頭を取る立場にある責任ある省庁は、根本的な構造改革を進めつつ、今できる直近の解決プランを絶え間なく実行していく必要があるだろう。


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編集後記

私たちは何のトラブルもなく、もしもあったとしてもそれを見なかったことにして捨ててしまえば、何の疑問もなく平和に過ごせるのかもしれません。

いつまでも変わらない事実があるのに、恰もすでにできた事のように報じられたら、それで安心するのかもしれない。

偽りの安心が何も起きていない平和な社会を演出しているだけかもしれない。

様子見のその先は落胆の連続だろう。それはいつか、真っ直ぐな志を折り、冷めた目に変えてしまい、それが大人になることだというのかもしれない。

それはどうだろう?変えるならば今しかない。

親の世代は、我が子に「理不尽」を受け入れろと、何の疑問もなく、それが正しい事なのだと胸を張って教えることができるだろうか。

ブラック校則という悪しき規則が、有志の活動から見直しが進み始めたように、小さな一歩でも踏み出すことができれば、その社会と環境は少しづつでも変えることができると私は思います。

まずは身近な理不尽から変えていきましょう。

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
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