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世界の人助けランキング、日本は「ほぼビリ」先進国とは言い難い我が国の現状

欧米諸国に比して、寄付文化がほとんど浸透していないとも言われる日本。その事実は数字にもはっきりと現れているようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、「世界寄付指数」をはじめとする各種調査において、日本が最下位グループ常連であるという現実を紹介するとともに、「とても先進国とはいえない」と批判。その上で、「日本らしい支援」の進化の必要性を訴えています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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これでも先進国?「日本らしさ」とは何か

トルコ南部を震源とする大地震の発生から、1週間が過ぎました。隣国のシリアを含めて、死者は計3万6,000人を超え、今もがれきの下に取り残された人たちの捜索活動は続いています。

一般的に、人命救助は「72時間がタイムリミット」とされていますが、今回の地震ではがれきの下に呼吸できる空間ができたことで、発生から182時間が経過しても生存者がいるとのこと。11日には赤ちゃんが、13日には10代の少年が建物のがれきの中から救出されました。一人でも多くの命が助かってほしいと心から願います。

一方、国内では、トルコ政府宗務庁が管理する「東京ジャーミイ・ディヤーナトトルコ文化センター」や日本ユニセフ協会をはじめ、多くの団体が募金などの協力を呼び掛けています。

今回の惨事は、規模が大きい上にシリアが内戦下にあることで、息の長い支援が必要です。シリアは極寒で食料や洋服などの物資も限られています。私も微力ながら募金をさせていただきました。どうかみなさんも、できる人が、できる時に、できることをお願いいたします。

日本はさまざな分野で、世界からおいてけぼりをくらっているのですが、寄付などの人助けもその一つです。

世界寄付指数、別名「人助けランキング」は英国に本拠を置くCAF(Charity Aid Foundation)が毎年行う世界調査で、日本はビリグループの常連なのです。

「世界寄付指数」は、過去1カ月間に「見知らぬ人、もしくは助けを必要としている人を手助けしたか(人助け)」「慈善団体に寄付をしたか(寄付)」「ボランティア活動に参加したか(ボランティア)」などの質問を設けていて、2022年は世界119カ国を対象に行われました。

その結果、1位は5年連続でインドネシア、アメリカは3位、中国は49位で、日本は119カ国中118位です。

同様の結果はGallup社が2015年に実施した調査でも確認されています。「過去1カ月の間に、助けを必要としている見知らぬ人を助けましたか?」という質問に「はい」と答えた比率は、日本は25%で、調査対象国140カ国中139位でした。

これでは…先進国とはいえません。

また、2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年になりますが、ミュンヘン安全保障会議が昨年11月に実施した意識調査で、日本ではウクライナ危機を「世界政治の転換点」と捉える回答が、主要7カ国G7や中国、インドを含む主要国で、最低だったことわかっています。

なぜ、こんなにも「世界」が遠いのでしょうか。

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昨年、3月にウクライナの人々を支援しようと、在日大使館やNPO法人などに寄付をする人が急増し、関係者からは「勢いがすごい」と驚きの声が上がり、「日本人の意識も変わった」とされていたのに、7月頃から支援する人も、支援金も激減しました。

三木谷浩史会長兼社長がウクライナ政府に10億円の寄付を表明したり、イオン、ファーストリテイリング、日清食品ホールディングス、味の素、資生堂など、数多くの企業が物資や人道支援を行い、話題になりました。

しかし、世界はその「上」の「上の上」をいっています。

昨年、4月の段階でウクライナ政府に世界中の個人・企業から届いた寄付の総額は約1,170億円で、もっとも多額の寄付をしたのは、英国で約510億円で全体の4割強を占め、オランダ、チェコ、米国と続きました。

もちろん金額が全てではありません。つい先日も、日本政府がウクライナへの追加の越冬支援策として、ウクライナ警察に使い捨てカイロと、交通安全対策のための反射材を無償提供しました。

しかし、先進国を名乗り、G7の一員と胸を張るのなら、もっともっと先進国たるべく努力が必要なんじゃないでしょうか。日本ならではのやり方で、日本人らしい支援を進化させてほしいです。

日本の海外青年海外協力隊は、今年で58周年です。日本の政府援助の端緒を作ったのが、協力隊事業です。協力隊は世界で最も優れた政府系のボランティア事業で、派遣される隊員の能力は他の先進国のボランティアの追随を許しません。語学も他国のボランティアよりも上手になります。英語やフランス語などが日本人は上手ではないので、逆に現地語への順応がとても早いのです。

長年、協力隊で活動している知人が、こんな話をしてくれたことがあります。

「日本の平和外交の象徴が協力隊事業。世界の方々に日本と日本人を知ってもらうことに、協力隊が果たした役割は計り知れない」と。

つまり、戦後の日本人は、日本人独自の、日本人らしいやり方で、世界から認められてきました。

その心意気が今の日本にあるのか?うち向きになってるのではないか?こじんまりしすぎじゃないか?さまざまな問題の日本の世界のポジションの低さは、その数字以上に深刻なように思います。

みなさんのご意見、お聞かせください。

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image by: YusufOzluk / Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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