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中国人女性が買った「沖縄の無人島」は本当に中国領土となってしまうのか?

沖縄本島の北西に浮かぶ、同県最大の無人島と言われる屋那覇島。先日、この島を購入したという中国人女性のSNSへの投稿が大きな話題となり、松野官房長官がコメントを求められるまでの事態に発展しています。そんな騒動について考察を行っているのは、2000年に来日し、現在は日本に帰化されている中国出身の作家・黄文葦さん。黄さんはメルマガ『黄文葦の日中楽話』で今回、日中両国のネットユーザーの反応と、両国のあまりに異なる「不動産事情」を紹介するとともに、この騒動を通して日本人に対して抱いた率直な感情を綴っています。

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「中国人女性が沖縄の無人島を買った」騒動について

無人島を買ったTinaさんのお話

「3年前に購入した島、やっと見ることができた」。2月3日、山東省青島市に住む34歳の女性Tinaさん(張さんとも呼ぶ)が、沖縄に到着し、3年前に購入した「沖縄本島・那覇北部の無人島、屋那覇島」の所有権を取得し、自身が島主となった姿をその目で見る様子を記録した動画をSNSで公開した。その後、中国でも日本でもこの動画は検索エンジンの上位に上がり、ネット上の話題となった。

Tinaさんは動画の中で、この島は日本にあり、約70万平方メートル、島内をハイキングするのに4時間かかり、島の最初の価格は60万人民元であると述べた。ネットユーザーからの多くの質問に直面し、彼女はコメント欄で、「実際の取引は開始価格より少なくともゼロが2つ多く、米ドルで、正確な金額を公表するのは不便で、後に休暇用や他人と協力して観光プロジェクトを開発するために使用される予定です」と回答している。

さらに、Tinaさんは「この3年間、映像で見ていて、それほど実感がなかったのですが、実際に現地に行ってみて、特に澄んだ水、青い空、浜辺に立ち、流れてくる新鮮な空気を吸いながら、衝撃と喜びを感じています」

「若い頃は、目立ちたがり屋でせっかちで傲慢なところがありましたが、起業してからの10年間は、地に足の着いた感覚や、自分の努力で生み出せる価値の方が好きです。毎年、私は青島で無料の起業家シェアリングセッションを開催しており、各セッションには基本的に300~500人が参加しています」

Tinaさんは最後に、この動画をSNSで公開した意図は、自分の喜びを共有することだったが、こんなに多くの人が「いいね!」を押してくれるとは思っていなかったと語った。島の件が自分の人生に影響を与えた以上、もう島を買うという話題には反応したくないのだという。

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「中国人女性が沖縄の無人島を買った」騒動について

「中国人女性が沖縄の無人島を買った」騒動について、中国と日本での反応を分析してみる。

34歳のTinaさんは起業家として成功し、中国には彼女と同じ成功を収めている若くて優秀な起業家が相当数いる。この動画が注目されたことは、商業的な目的を否定できないわけである。これから彼女が主催する起業家シェアリングセッションを追いかけて参加する人が増えることが予想されるだろう。

中国人女性が沖縄の無人島を買ったことは、多くの中国人が金持ちで、海外に目を向けていることを示している。日本の土地や不動産を購入する中国人がすでに非常に多くなっているのは事実である。これからも中国のお金持ちたちがどんどん日本の土地に目を向けるだろう。

因みに、中国本土では土地の私有は認められていない。中国は社会主義制度として土地の公有制をとっており、土地の所有権は国家または集団に属し、市民は土地を使用する権利のみを持ち、所有権はない。

法的根拠としては、中華人民共和国憲法第10条:都市の土地は国家が所有する。農村と郊外の土地は、法律で国が所有すると規定されているものを除き、集団に属する。居住基地と自留地、丘陵も集団に属する。

中国と違って、日本では私有地を認められる。有名な土地でも私有地であったりする。例えば、富士山の山頂は国有地ではなく、私有地だ。「富士山本宮浅間大社」が所有。富士山の8合目以上は、神社の敷地なのだ。

中国のネットユーザーの反応はさまざまで、日本の土地を買うお金がある人への羨望に始まり、民族主義的な感情の高まりがあった。中国のネットユーザーの中には、興奮しすぎて、中国人が買った日本の無人島が中国の土地になったと勘違いしている人さえいた。

その動画が、一部の中国人の民族主義的感情をかきたてたことは否定できない。海外の中国人が所有している土地は、中国の土地ではない。その島購入の背後には、政府の動きはないだろうと判断したい。

ネット上の言論を見る限り、日本側の考えすぎもあるようだ。実は、中国企業が日本の土地を購入することで騒動になるのは、今回が初めてではない。外国人が日本の不動産を購入するのを制限しようという案も出ていた。例えば、「全ての不動産取引に反社会勢力を排除する特約が設けられているように宅建業法を改正して外国人に対する自主規制を早くなすべきである」とか。しかし、これはなかなか止められない時代の流れである。

多くの日本人は、その無人島が中国のものになり、周辺海域が軍事演習の場となり、中国が無人島を占拠することは日本の国益を損ねることになると懸念している。しかし、島は日本の統治権の範囲にあるかぎり、所有権が誰であっても、関係なさそうだ。

無人島で、リゾート開発といっても、電気水道その他インフラを何もない状態からつくる必要があるので、とても無理である。Tinaさんとその背後にいる企業は、近い将来、無人島を転売するつもりで購入したのかもしれない。今回の動画は、いい宣伝になっている。それ自体がコマーシャルなのだ。

「中国人女性が沖縄の無人島を買った」ことについて、日本人の中国に対する理解はまだ比較的浅いと言わざるを得ない。経済的に豊かになり、野心的になっていく中国とその国民とどう付き合っていくかは、今の日本にとって重要な問題である。平常心を保つことが大事である。

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image by: Shutterstock.com

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在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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【著者】 黄文葦 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第1月曜日・第3月曜日(年末年始を除く) 発行予定

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