昨年11月、ツイッター上に投稿された、大阪府吹田市に完成した図書館を紹介するツイートが「炎上」しました。批判的な意見の中身は、「ガラス張りの図書館は本が焼ける」「そもそも図書館にガラス張りは似合わない」などといったものだったそうです。今回のメルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』では、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさんが、この投稿が炎上したこと自体を疑問視。さらに、他人を断罪して欲望を満たす人を「徳の騎士」と呼んだ哲学者の言葉を引きながら、建設的な議論が行われるために「哲学が必要では?」と問いかけています。
終わらない「正しさ競争」から抜け出すためには、 社会を良くする「哲学的思考」が重要かも
吹田市の図書館にて、こんな炎上事件があったようです。
紫外線対策に批判が集まったガラス張りの図書館(まちなかリビング北千里)について、行政に取材して記事にしました。
1.本の紫外線対策
2.飾り棚の本
3.館内での飲食
4.利用者のマナー
5.バリアフリー
6.建築の仕様上のリスク
・建築家からのご意見
・ネットでの批判と実情https://t.co/bFed9TrsZG— 塩谷 舞 mai shiotani ?? (@ciotan) January 24, 2023
批判の元になったツイートはこちらだそうです。
夢なの?というような理想の図書館が千里に出来てしまった……
圧倒的な蔵書数、電源Wi-Fi完備でPC作業OK、場所によって飲食OK、「図書館なのにそんなに…?!」という夜8時までの開館時間。
なにより、窓の向こうの箕面の山々が美しい……。北千里駅すぐ。22日オープンで、https://t.co/FSiAl3GgVX pic.twitter.com/jszLFCqnyW
— 塩谷 舞 mai shiotani ?? (@ciotan) November 12, 2022
うーむ。そもそも、なんでこれが炎上するのか??
塩谷さんの圧倒的なフォロワー数がそうさせるのか、
- 図書館にガラス張りはあわない
- バードストライクが起きたらどうするのだ
- 本が焼けて可哀想
- 飲食OKにすると本が痛むのでは
- 高いところの本が地震で落下して危険では
- Wi-Fiと電源があることで、「
PC作業をする人が長時間居座ってしまうのではないか」
みたいなことらしいです。
言われてみれば確かに、と納得できる意見もあるんですが……。
みんなが意見を言うのは、本来、いいことだと思うのですが、
言ってることはわかるけど、なんか建設的じゃないし、
この記事の著者・のもときょうこさんのメルマガ
他人を断罪して欲望を満たす「徳の騎士」たち
ヘーゲルという哲学者は、「……すべきである」という「
苫野一徳さんの『はじめての哲学的思考』に出てきます。
● 『はじめての哲学的思考 https://www.amazon.co.jp/dp/
<「命令の思想」を持つ人は、時に攻撃的にもなりやすい。
自分の信じる正義を掲げて、それに従わない人を断罪するのだ。 前にも紹介したヘーゲルという哲学者は、そうした人たちを「
徳の騎士」と呼んでいる(『精神現象学』)。> <「なぜお前は困っている人に手をさしのべないのか!」 「なぜお前はボランティアをやらないのか!」 「徳の騎士」は、そういって他者につめ寄り攻撃する。>
日本で流行してるのはこれじゃないだろうかと思います。
<でも、それはかえって非道徳的な行為にもなりかねない。「
徳の騎士」、それは“正義”を笠に着て他者を傷つける、 ひどく独善的な人間なのだ。>
しかし、「他人を厳しく批判するのはダメでしょう」
「では、どうしたらいいのだろう」と考える
哲学が面白いところは、「じゃあ、どうしたらいいだろう」
<だから改めていいたいと思う。
命令の思想を、条件解明の思考へと転換しよう。
たとえば、「人に思いやりを持て!」と命令するのではなく、「
どうすれば人は人を思いやれるんだろう?」と考える。「 苦しんでいる人たちへの無関心は悪である!」というのではなく、 「どうすれば無関心が関心に変わるんだろう?」と考える。「 震災ボランティアをやらないお前たちは人間としてまちがっている !」というのではなく、「 人はどのような条件が整った時にボランティアをしたくなるんだろ う?」と考える。 命令の思想ではなく、条件解明の思考。これこそ、
現実的な力強い哲学的思考なのだ。>
なるほどなるほど。
当てはめてみると、そもそも、
そこで、「
国際バカロレアではこういった哲学的思考を高校で教えます。
「~すべし」の道徳ではなく、
※本記事は有料メルマガ『東南アジアここだけのお話【
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